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2-6 魔法少女 フー

 三人の魔法少女が優勢な中、突如現れた新たな魔法少女の存在に驚きながらも警戒を強める三人。

 飛び出してきたランと幸助は、一時停止して全体を見る。


「別の魔法少女?」

「でも他の三人と険悪ムードだけど」


 目を張る先の魔法少女達は緊張感を持ってお互いを睨んでいるように見える。四人の間で緊迫した空気が流れる中、それを崩したのはフーの後ろで倒れていたジャークだった。


「プ~レゼントォ!」


 ジャークはミラがフーに意識を向けたことで攻撃が緩んだ隙を突いて箱を開ける力を強め、アクアボールの拘束をはね除けてバネを出し、その場に立ち上がった。


「プレゼント!」


 復活したジャークはまず一番近くにいるフーに矛先を向けて攻撃しようと飛びかかり、事前に引いていた右腕を伸ばして殴りかかった。


「……」


 しかしフーは振り向きすらせず、ジャークの動きを読んでいたかのように右肘を曲げ、最低限の身振りで攻撃を受け流した。

 更にフーは身体を振り返らせると、引いていた左手でジャークの顔面に張り手を決めた。


「プレッ!」


 怯んだジャークを見た彼女は、一歩進む度に強力な張り手で突いてジャークを追い詰めていく。


「プレッ、プレゼッ!……」


 ジャークはこの場を切り抜けるために頭の蓋を開けて光弾を撃ち出した。


 しかしフーは至近距離からの光弾に一切動じることなく、さっきの連続張り手を拘束で行なって全てを弾き返し、ジャークは自分の攻撃を受けて完全にダウンした。


「プレゼントォ……」


 一方的な戦いをする彼女の動きに幸助は思わず口をこぼす。


「凄い」

「ああ、確かにな。それにアイツ……」


 ランが何かを思ったように顎を引いてフーを見ていると、彼女は息を吐くように右手を握って左に半周回しながら腕を引く構えを取る。

 フーの右手には黄色い光のオーラを纏わせ、真正面からジャークに方向に飛び込みながら重いストレートパンチを決めた。


「プレゼントオオォォ!」


 ジャークは断末魔を上げさせながら爆散。爆炎が収まると、巨大パンダの時と同じように人魂が飛び出し、元の女子生徒の身体の方へと向かって行った。


「三人で苦戦していたのを、たった一人で……」

「……」


 ジャークに勝利したフーは、静かに腕を降ろして彼女を見張る三人に振り返った。それを受けてモニー達は、感謝するどころか各々構えを取って戦闘準備をした。


 対するフーも一度姿勢を低くすると、今度は彼女達に向かって走り出し、あろうことか三人に攻撃を仕掛けたのだ。

 三人はフーの張り手を回避して散ると、それぞれ別の方向から彼女に飛び道具を使って攻撃しにかかる。


「モニー チアリング……」

「ファウ ザ プ……」

「ミラ レイン……」


 だが当然黙ってフーがこれを受けるはずもなく、ジャークに当てた強力な張り手を地面に放ち、自分の周囲に砂埃を発生させた。


 視界が遮られて身動きが取れなくなっていると突然モニーの目の前に姿を現す。


「いつの間に!」


 モニーは腕を組み、フーの張り手を受け止める。しかしモニーは張り手の威力を殺しきれず、後方に吹っ飛ばされて校舎にぶつかってしまう。


「ガッ!」


 すぐにフーは彼女に追撃をかけ、流れるままに回し蹴りを喰らわせた。モニーはその追撃に今度は左に飛ばされ、学校を飛び出してアスファルトに身体をぶつける。


「イッタタ……」


 怯むモニーにフーが更に追撃をかけようと迫る中、モニーの仲間達はそれぞれ自分の技で煙を払ってフーの後ろから彼女を挟み込んだ。


「フー!」

「覚悟!」


 しかしフーはファウの跳び蹴りとミラのパンチをノールックで受け止め、二人を地面にぶつけつつ自分は飛び上がる。自然と背中を見せた二人は、直後次々とフーに蹴り飛ばされてしまった。


「ガァ!」

「アァ!」


 モニーの復帰は間に合わず、起き上がったときには二人はそれぞれ左右の建物に突っ込み、気を失っていた。


「ミラ、ファウ!」


 心配になって振り返るモニー。この場ではこの行動が完全に仇となり、後ろを向けた所をフーが殴りつけにかかった。


「しまっ!……」


 フーの攻撃がモニーに当たるかに見えた直前、何かが二人の間に入り込んで攻撃を防いだ。フーは余所からの横槍に警戒を強め、後ろに下がる。


 フーが改めて見た障害物の正体は、魔法少女達に見覚えのない大盾だった。


 大盾は独りでに宙を舞い、走る足を止めたランの右手の中に回収された。彼は白いローブを着込み、後ろには追ってきた幸助がいる。


「よく分からんが危ないとこだったな、朝」

「将星君に、西野君!」


 二人のことをよく知らないモニーは、彼等が戦闘に介入することに反対し、すぐに叫んだ。


「だめ、ここは危険です!」

「そこは安心を。俺達こういうのには慣れてる」


 ランの頃場に続き、右隣にまで移動した幸助が話し出す。


「その通り。というわけでラン、俺の剣を返してくれ」

「ない」

「ない……ない? ないぃ!?」


 幸助はランからの予想外の返しに驚き、彼を三度見てしまう。


「なんでないんだよ! 甲冑を預けたときに渡しただろ!?」

「甲冑はあるが剣は無い。魔術が使えんだからそれで戦え。無理なら朝を逃がしとけ」

「えぇ……」


 投げやりなことを言うランに思うところがある幸助だったが、彼を放ってランは走りながらバットを剣に変形させ、フーに向かっていった。

 フーは振り下げられるバットを右の張り手で上手く受け流し、ランの懐に入って左の張り手を仕掛けた。


 ランは敢えて攻撃を流された方向に体重を乗せることで動きを速め、張り手を紙一重で回避、踏ん張った左足を軸にして回し蹴りを試みるも、フーは左手でランの足を掴み、右手でガラ空きの腹に反撃をかけた。


 だがランは左手で拳を掴み、右足を上げて蹴り上げようとするフーから手を離すと、背中を反ってまた回避。2人は一度距離を取り、睨み合った。


 短時間ながらもお互い一歩も引かない戦いっぷりにモニーと幸助は圧倒された。


(凄い! 初対面のフー相手にあそこまで立ち回るなんて……)

(俺のときと同じだ。ランの奴、事前に相手の動きを読んでいるかのように戦ってる)


 距離を取ったランは彼女にふと問いかけてみた。


「お前、なんで仲間の魔法少女を襲う?」

「……」


 当然ながらフーは答えようとはしない。そこでランは問いを変えてみることにした。彼は左目を閉じて顎を引き、わざと余裕そうにしながら挑発するように口を動かす。


「もしかしてだが、その懐の中に隠し持っている石と何か関係があるのか?」


 ランの質問に、フーは微かながら口元を動かして反応した。ランは目で確認しつつ、ようやく出来たフーの隙を突いて間合いに入り、後ろに回る形で頭から仮面を割りにかかった。


「興味が湧いた、その(つら)見せろ」


 しかしランがバットを振り当てると、フーは敢えて身を下げながら腕を組み、後ろに身を引きながら受けることで威力を弱め、地面に激突するときに受け身を取ることで距離を取った。


「何っ!」


 更に間が悪いことに、これでフーは元々戦っていたモニーに近付く構図になっていた。こうなればもちろん、フーはモニーのいる方向に動いて、ダメージを受けている彼女の元へ向かう。


「しまった!」

「任せろ!」


 ランが間に合わないと見た幸助はすぐさま魔術で遠距離攻撃を発動。同時に走ってフーに距離を詰める。


「<雷矢 五月雨>!」


 フーは幸助の攻撃に、避けるどころか敢えて両腕の装甲にかすらせ、矢の軌道を逸らしてしまった。幸助は驚きながらも、ならばとランのときと同じように雷輪でフーを拘束しにかかった。


「<雷輪>!」


 しかしフーはこれも利用し、敢えて身を下げることで幸助の攻撃の軌道上に自分を追ってきたランを重ね、雷輪を彼に命中させた。


「アッ、しまった!」

「またこれかよ!」

「ラン!……」


 拘束されたランは倒れ、ランに意識が向いた幸助は自分に近付いたフーに遅れを取り、フーからガラ空きの腹に三発連続で張り手を直撃された。

 強烈なショックに耐えかねた幸助は、その場に吐き気を及ぼして崩れ落ちる。


「ウゴアッ!」

「皆!」


 心配になったモニーは、自分の身体を押して前に出てしまい、フーは好奇を見逃さずに彼女の前に立ちはだかった。


「ッン!」


 障害のなくなったフーはモニーに詰め寄り、体力を消耗してまともに戦えない彼女を大きく蹴り飛ばし、モニーが腰に携えていたステッキを宙に飛ばさせた。


「アッ!」


 フーはステッキを奪い取ると、すぐに地面に足を付けて膝を曲げ、三人から飛び退け距離を取る。


「アイツ、彼女のステッキを!」


 ステッキを奪われたことでモニーの身体からは光が発し、力が抜けたように崩れて大きな光の粒が蒸発するように姿が変身前のものに戻ってしまった。


「しまっ……た……」


 変身が解けた朝は、地面に落ちると気を失う。フーはモニーのステッキを左腰の収納ポケットに差し込むと、倒れた三人を置いて気絶している比島姉妹からもステッキを回収しようとした。


 しかしその直前、何かに脚を絡まれて動きを封じられた。


「ッン!」


 フーが後ろを振り向くと、幸助がダウンしたことで拘束が解けたランがバットを変形させて彼女の足下まで延ばしている姿があった。


「おいおい、お帰りの時間にはまだ早いぞお嬢さん」


 『お前、まだやる気か』と言いたげな雰囲気を出してくるフーに、ランはお得意の減らず口を吐き続ける。


「そうカリカリすんなよ。少しは男の趣味に付き合ってくれねえとモテねえぞ。ま、そんなけったいな仮面で顔隠してんじゃ、どっちにしろか」


 言葉や態度では余裕綽々としているランだが、内心では幸助への苛立ちと、フーに対する不安があった。


(チッ、まだ少し痺れるな。あの馬鹿勇者、上手いこと利用されやがって。だがせっかくの手掛かりだ。ここから引くわけには行かない……)


 正直なところ、赤服が絡んでいるわけでもない、この世界の住民である魔法少女同士のいざこざにランが率先して関わろうとする事はない。

 なら何故関わったのか、理由は言葉にすると単純だ。


(どうあがいても回収しないとな。アイツの持っている結晶を……)


 フーの懐には、ランが捜していた世界のコアが入っていたからだった。


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