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7-2 チートお披露目

 儀式の最中に起こってしまった魔物の進行。聞きつけたファムは、儀式どころの騒ぎではなくなってしまい、すぐに周囲の兵士たちに指示を飛ばし、対抗する準備を始める。


「すぐに城の兵士たちに伝令を! 一部を残し、城壁の防衛に回してください!」


 指示を受けた兵士が頷き、出入口へと戻ろうとした間際、別の兵士がより焦った様子で広間に飛び込み、息も荒いままに情報を伝えて来た。


「殿下! 大変です! 城壁の守りを固めていた兵士が全滅しました!」

「何ですって!」

「魔物は王都内に侵入。避難誘導が間に合わず、周辺の街にに次々と被害が出ております!」

「そんな……」


 魔物出現から兵器全滅までのあまりの時間のはやさに顔色が青くなるファム。これではこの城にいる兵士達を駆り出したとしても、被害が増えるだけかもしれないと思ったからだ。


 ファムは圧倒的な魔物の勢力に対し次の指示に戸惑い、口が震えて声が出なくなってしまう。水晶の傍に立ったままのランは、こんな時にどうするかを察して幸助に目を向けた。

 その幸助は、ランの予想通りの発言をファムに飛ばした。


「俺が行きます! 行かせてください!」

「え?」


 突然幸助に声をかけられたために混乱から思考が追い付いていないファム。幸助はそんな彼女に自分の言葉を続けた。


「元々俺達を呼び出したのは、その魔物の親玉を倒すためなんですよね。だったら国が襲われている今、俺達がこんな所でくすぶっていいはずがない!」


 幸助の熱意ある声に、広間の転移者たちが同調した。


「さ、先に言われた。俺が言おうとしたのに」

「まあ、前の異世界でも突然戦いは始まってたな」

「俺達の役割なら、行くしかないな」


 幸助が周りの賛同に胸を撫で下ろすと、いつの間にか祭壇から降りていたランが彼の肩に手を置いた。


「うわビックリした! いつの間に」

「結局は後先考えないな、お前」


 幸助はランの言葉が刺さりはするも、その上で反論した。


「説教なら聞かないぞ。今襲われている人がいて、守る力がある。行かない手はないだろ!」

「別に説教なんてしねえよ。俺もいい加減、外の景色が見たいところだったからな」

「そんな空気を吸いに行くみたいな言い方……まあお前の場合、色々知りたいって事なんだろうけど」


 ランが手を放すと、幸助が真っ先に広間から飛び出し、彼に同調した面々も続けて走り出していった。

 一方でランはすぐには追わずに立ち止まっていると、彼と同じように様子見をしている男達が残っていた。


(全員が幸助に同意したわけじゃない。というより、この召喚そのものに疑いをかけてるって感じだな)


 とはいえ幸助が作ったこの流れ。下手に残っていれば後々立場が悪くなるのは自分達だ。頃合いを見てランが広間を出るとすぐに、残っていた男達も追って広間を後にした。


 幸助達は援軍様に用意されていた馬車に乗り込み、次々に発車していく。急いでいるとはいえ所詮は馬車だ。どうしても時間がかかる事に幸助は歯がゆい思いを感じていた。


 すると、外から何かが空を切るような音が聞こえて来た。気になって幸助が馬車から顔を出すと、さも当然の様に空を飛んでいる複数人の男達が、馬車を追い抜いて煙の立つげんばに向かっていたのだ。


「空飛べるのかよ! 俺が知ってるのじゃ空中散歩が限界なのに」


 正確に言えば入間は忍術を利用した飛行を可能としていたが、幸助はまだそこまでの技量を持ち合わせておらず、思わず愚痴が出てしまう。

 だがこの急ぐ状況ではどうであれ有難い事に変わりはない。彼等の活躍に期待を感じつつ、幸助は馬車が一刻も早く到着することを祈っていた。


 しばらくしてようやく現場に到着した幸助は、即座に馬車を飛び出し、状況を見た。

 破壊された街並み。無残にやられた兵士達。そして何より注目したのは、微かに残った魔物の死骸と、

いくつも残った大きな陥没だった。


「これ……もしかして」


 既に戦いが終わっている事態に幸助が唖然としていると、陥没の近くにいた西洋人風の青年達の存在に気が付き、走りながら声をかけた。


「コレ、君達が?」

「え? ああ……なんか凄い事になっちゃったね」


 当の本人がまるでやってしまったかのようなことに困惑している事に、幸助も思わず微妙な顔を浮かべてしまった。


「何かって、市民を襲おうとしていた魔物がいたから、討伐したんだ。でも威力を抑えたつもりだったんだけど……」

「これでか」


 幸助はお前が言うなともとれるような台詞を吐いてしまう。そこに中年の男性が苦笑いをしながら近づき、話に入って来た。


「本当に、凄い子が仲間になったようだね……君も、もしかして彼みたいな高威力な技を?」

「あ、いや……俺は」


 謙遜しかけた幸助だが、ここでランの変顔染みた呆れ顔が頭に浮かび、冷や汗を流し顔を歪ませて言葉を修正した。


「アァ……多分出来ます」


 中年の男は幸助の反応にふと笑ってしまった。


「ハハハッ……おっと失礼。笑うのはいけなかったな」


 中年の男は手を伸ばし、礼儀正しく自己紹介をして来た。


「俺は『五十井(いかい) ケトル(けとる)』。こんな右も左も分からない状況だが、とりあえず仲良くできると、嬉しい」


 ケトルの自己紹介を見て、青年の方も慌てて二人に自己紹介をした。


「俺は『カリア モンス』。君は確か……」

「え? ああ、『西野 幸助』です。よろしくお願いします」


 幸助も流れで会釈をしながら自己紹介を返した。ケトルとも握手を行い親睦を深めていると、別の青年が注意を呼び掛けて来た。


「楽しく話をしているところ悪いんだけど、遠くから迫って来る大量の魔物を、俺のスマホが感知した。すぐに第二波が来るよ」

「ああ、えっと君は」

「『原戸(はらど) (ただし)』。よろしく」


 しれっと『スマホで感知』などと言う台詞を吐いた正にツッコミを入れかけた幸助だが、優先順位を考えて気持ちを切り替えた。


「よし、今度は俺も役に立ってみせる! って、君は?」


 幸助は戦い姿勢を取ろうといつも通り剣を引き抜くアクションを取った。だがそこに武器はなく、彼は一瞬固まってから思い出した。


「そうだった! 剣は兵器獣に溶かされて使えないんだった!」

「馬鹿勇者~!」


 聞き覚えのある呼び方に幸助が振り返ると、遅れてやって来たランが合流して来た。


「その感じだと武器がない事を思い出したか。勢いよく出て行ってこの様なのを笑おうかと思ってたんだが」

「うん。今絶賛恥ずかしいからやめて」


 率先して出て行っておきながら武器すらなかったことに少々恥ずかしく思ってしまう幸助。ランはそんな彼に何処かから取り出したロングソードを手渡した。形状としては、ランがブレスレットを変形させたものと同じだ。


「これは!」

「ユリが保険として用意したもんだ。最も耐久性は前の剣より弱いらしいから、あくまで急場しのぎ用だがな」

「ユリちゃん……感謝!」


 幸助は早速剣に魔力を流し、刃に熱を帯びさせて赤い色に変色した。


「<赤刀(せきとう)>」


 ランもブレスレットを剣に変形させ、幸助の隣で戦闘の準備をする。

 少しすると、二人にとって見覚えのあるサイクロプスに、幸助だけが見た事のあるもの、そして二人共が面識のない種類の魔物とが多種多様に群れを成して迫って来ていた。


「来たか」

(さて、あのチート野郎共はどうするのか。まずはお手並み拝見だな)


 ランが目を凝らす中、迫りくる魔物達に転移者たちがそれぞれで構えた。そして先陣を切ったのは、一番派手な痕跡を残しているカリアだった。


「よ~し、それじゃもう一発軽くいくぞ! <ファイア ボール>!」


 技名と共にカリアが右掌を突き出すと、直後に生成された身の丈程の大きさの火球が地面をえぐりながら飛んで行った。

 文字通りの巨大な素早い攻撃に、攻撃範囲にいた魔物達は逃げる間もなく直撃し端にいた個体が半身を抉られ、残りは跡形もなく焼き尽くされた。


「凄い火力」

「お前も似たようなもんだろ」

「やれやれ、あんなのを連続で見せられると参っちゃうな」


 幸助達の近くで、同じくカリアに圧倒されていたケトルが苦笑いを浮かべる。二人が同意していると、その間に気配を隠していた人型の魔物が五体、ケトルの背後にまで迫っていた。


「ケトルさん、後ろ!」


 幸助の声が聞こえていないのか、ケトルは自分の言葉を続けた。


「ああいう血気盛んな事は出来ないなぁ。おじさんに出来るのは精々」


 瞬間、ケトルの背後にいた魔物達が全員真っ二つに切り裂かれ、地面に崩れ落ちていった。

 汗を流す幸助が改めて目を向けると、ケトルの両手にそれぞれ血の付いた剣が握られていた。


「こんな程度だね」


 ケトル本人は微妙な顔で口にするも、音も立てずに魔物を倒した技量に幸助は圧倒され、ランも感心していた。


「一瞬で五体も……」

「七番隊のあの人と同じ部類か」


 だがこの程度で魔物達は怯まない。左右に残っている大軍は、一目散に王都に進攻しかけていた。これに左側では正がスマホを掲げ、おもむろに魔物達の姿を撮影する。


「正さん! そのままじゃ魔物に」

「大丈夫だよ。俺のスマホは世界すら滅ぼせるらしいから」

「世界?」


 幸助の心配をよそに正はスマホの画面に映る魔物達を選択し、画面に表示したメニューから『切り取り』を選択した。


「<切り取り>」


 一言呟いてほぼ同時、正に迫っていた魔物の大軍は影も形も残さずに消滅した。まるでスマホの画面の情景が反映されたようだった。

 同じく右側。最初に水晶に触れた青年『桑原(くわはら) サラガ』が両手を前に出し、唱えた。


「あれだけ多いと消耗するけど仕方ない。スキル<砲撃>!」


 サラガが技名を叫んですぐ、両手から白い光線が広範囲に発射され、迫りくる魔物達を一網打尽にしてみせた。


 ランや幸助は唖然とした。先にやって来ていた四人の男達の奮闘によって、進行してきた魔物達は軽々と全滅。自分達はおろか、遅れて馬車で現場に到着して来た転移者達も、もうやる事がなくなってしまったからだ。


 ランは、異世界から転移して来た勇者達の圧倒的な実力を目にし、出会った時に一度激突した幸助の実力の事も踏まえて、率直な感想を浮かべていた。


(こんなチート連中を集めて魔王退治か。敵に回すと末恐ろしいな)


 ランの脳裏には、何処か不穏な部分を感じていた。

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