6-16 協力関係
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ジネスから語られたここまでの経緯に聞き耳を立てていたランと、その懐に隠れつつ同じく話を聞いていたユリ。
ランはジネスから聞いた情報を整理して簡潔にまとめた結論を口にした。
「つまりお前は、この眠っている妹を助けるためにRAIDERに入ったってことか?」
ジネスは一度頷いて肯定すると、ランに鋭い視線を向けて威圧するように口を開いた。
「さあ、これで俺の知っている情報は言ったぞ。次はお前の番だ」
「俺の? 何が言いたいんだ?」
「とぼけるな。お前、ここ最近討伐部隊に混ざっていた偽隊員だろ。明らかに一人だけ動きが違うかったし、組織内の通称であるヘレティックの名を知っている。」
ランが自分の細かな行動の違和感さえも勘繰られていたことに一瞬だけ表情を動かしかけるもすぐに戻しつつジネスの言い分をここは認めた。
「勘のいいことだな……ご名答。最も握られて困る秘密についてはお前も自分から吐いた。脅しは通じないぞ」
「分かってる。だが協力はしてくれるはずだ」
「協力?」
ランが言われた台詞をそのまま返して反応すると、ジネスは具体的な部分を説明した。
「俺は奴らの奥に潜って何故俺達が襲撃されたのか、ファンスの身体に何が起こったのかが知りたい。それを手伝うのならお前らの目的にも手を貸してやる。
お前はわざわざ征服まで用意してRAIDERに侵入して来た。そして俺に突っかかってまで引っ付いてきている。俺と同じようにあの組織に目的があるのだろう? 俺の目的を手伝うのなら、その解決に協力してやる」
ジネスの提案にランは驚いた。文面だけ見ればこの提案はラン側にとってかなり都合がいいからだ。
だが上手い話には裏がある。ランは疑り深くジネスに問いかけた。
「どういうつもりだ? こっちの協力をするとは」
「組織の構成員を巻き込むわけにはいかない。下手をすれば俺の立場が危なくなる。だが部外者であるお前なら」
「最悪関係ないって言い逃れが出来る。切り捨てることも容易って訳か。まあお前の妹の事を言ったって信用されるか微妙だな」
ジネスがわざわざ協力を持ち掛けた理由に納得すると、ジネスは苦い顔をされないようにラン側の利点も口にした。
「お前とあの女にも利がある事だろ? 話してみろ。お前はなんでこの組織に侵入している?」
ランは少し悩んで視線を下に向けると、懐に隠れているユリが彼の顔を上目遣いで見て首を縦に動かしている。どうやら話していいという肯定らしい。
ユリの了承を得たランは視線を前に戻すと、ジネスに対しあくまで幸助達の存在は隠しつつ自分達の事情を説明した。
「俺達は、この世界にあるものととある人物を捜索しに来た」
「あるもの? 人物?」
「俺達が所属している組織が探している異世界の力を持った結晶。そして俺達の組織の裏切り者だ」
ランの説明の中にしれっと混ぜた異様な単語。子供でもないのに堂々とそんな厨二臭いことを言い出したランの態度に流石のジネスもクールにしていた顔つきが歪んで一筋の汗を頬に流した。
「待て待て、異世界? 組織? 裏切り者!? 色々要素が多くて混乱する……」
ランからしてみればもはや当然の事の情報も、異世界の事を知らない人物からしたら突拍子もないヘンテコ話になる。
もちろんランも自分側の事情を話せばこうなる事は分かっていたため、一度話を切ってジネスを誘った。
「ま、百聞は一見に如かずって言葉のような感じだな。外に出ろ。ちょっとしたマジックを見せてやる」
ジネスが若干ランに協力を持ち掛けた事を後悔していた部分があったが、次の瞬間にはそんな自分の思考を改めた。
ランは人気のない所にて自身がはめていたブレスレットから様々なもの召喚したり、ブレスレット自体を変形させた。
更には服装をカジュアルな物やスーツ姿に変貌させ、カプセル内の異世界獣をぬいぐるみ状態で召喚したりと、ここまでの旅で手軽に何度も使って来た行為を目の前で見せた。
「ざっとこんなもんか。俺がすぐに見せられる異世界の技術だ」
「あ~……」
目の前で次々に起こる既存の常識を軽々と超えた事態にジネスは目を大きく丸くして固まってしまう。もはや考えるのを諦めたようにも見えた。
ランはこれを分かっていないのかわざとなのか、ジネスがまだ自分の事を信用しきれていないものとしてブレスレットを操作する。
「これでもダメか? それじゃあいっそ一瞬だけこことは別の世界に転移して……」
「いやいい、もういい! 十分わかった!」
ランの突拍子のない台詞に目つきを元に戻したジネスはどうにか頭の中での整理が追い付いて来たようで、ランにとりあえずの感想を述べた。
「そ、そうか……分かった。お前が言っている異世界だのどうのが真実だって事は、十分……」
少々テンパっているところが抜けきらないジネス。呼吸を整えつつ自身の落ち着きを取り戻していくと、ジト目になり髪型が乱れながらランに問いかける。
「というかお前、こんな技術があるのなら俺の力なんて借りなくても目的を果たすことが出来たんじゃないのか? 裏切り者の捕獲はまだしも結晶の回収なんて簡単だろう?」
「それがそうでもないんだよ」
ランは結晶の探知が出来ても言った事のない場所へは転移する事が出来ない事を説明した。そして現時点で判明しているその場所がRAIDER基地の機密区画の中にあったという事も。
「なるほどな。それで組織内である程度の役職についている奴を狙ってストーカー行為をしていたわけか」
「言い方」
「だが生憎俺をいくらつけていたところで、お前らの目的には近づくことは出来ないぞ」
「何?」
ジネスの言葉に表情を歪めて反応するラン。
「俺はあくまで実働部隊の隊長だ。一般構成員よりは地位はあるがまだまだ機密を知れる程ではない」
「マジかよ」
ここに来て自分の行動が無駄だったのではないかと不安に駆られるラン。だがジネスはせっかく出来かけた協力関係を切られかねない発言をしても態度が変わっていない事にはもちろん理由があった。
「だが、コネはある」
「あ? コネ?」
斜め上の発言をして来たジネスにランの表情がより大きく歪んでしまう。ジネスは事情を説明した。
「お前も会っているだろう、リコルに」
『リコル マリファ』。ランとユリが偶然にも出会い、ジネスと出会うきっかけにもなった女性だ。ここで何故彼女の名前が出たのか謎に思えても仕方ないが、ランはここまで聞いたジネスの経緯から何となく察した。
「アイツ、まさかRAIDER上層部とつながりがあるのか?」
「ああ、アイツはRAIDERの社長の一人娘だ。だからつながりを持って交際している」
この返答にはランよりも隠れているユリの方が衝撃を受けた。どことなく恋愛脳がある彼女にとって恋愛を利用する行為は響くものだあったのだろう。
ランも服の内で動いているユリの心情を理解しつつ、ジネスとリコルの仲について茶化すような発言をした。
「それは随分と冷え切った関係なもんだ。恋人だ何だといって利用しているだけとは」
「当たり前だ。俺の全てはファンスのため。俺達家族の復讐のためにある。そのためなら誰だって、何だって利用するさ」
ジネスの目つきがどことなく怒りの混ざったものに変貌する。また脳裏に過去の事を思い出しているのかもしれない。
そんな彼を横目で見るランもまた、頭の中で思うところがあった。
「復讐……か……」
ランが思い浮かべていたのもまさしく過去の思い出だった。子供時代の強く怒りに捕らわれていた自分。そしてそんな自分と関わりを持った子供時代のユリ、そしてもう一人……
「ジネス。お前のその考え」
「全く持って酷いものね!!」
「ンッ!!?」
自分が言いかけた台詞に被って聞こえてきた怒声。誰の声なのかがすぐに分かったランは冷静だった顔つきが途端に目を丸くした変顔になる。
一瞬の間にぬいぐるみの変化を解いたユリがジネス向かって説教をしていたのだ。いきなり腕を掴まれたからか一瞬ジネスが痛そうな顔を見せる。
「いい! アンタは利用する気しかないんだとしても、リコルさんはアンタのこと心の底から思ってくれているの!! それを踏みにじる行為だなんて、男として絶対にやっちゃいけない行為なのよ!!」
「オイ! こいつお前の女だよな!? 一体どこから出てきた!!?」
幸いな事に変身を解いた瞬間は見られていなかったようだが、そのためにユリが突然目の前に出現した事態にジネスの顔つきも変顔のような驚き顔になってしまう。
「あぁ、こいつずっと一緒にいたぞ。気配を消すのが上手くてな。ただ恋愛脳なところがあるんで、さっきのお前の言い分に納得できなくて自分から存在感を出しちまったんだ。そうだろ?」
咄嗟にランがそれらしい説明を並べて誤魔化そうとするも、ユリはジネスのリコルに対する姿勢がどうにも気に入らないようで一方的な説教を続ける。
「リコルさんは優しいの! 誰かの思惑に利用されてその思いを使われるなんて、絶対にあってはならない事よ!! アンタ、一度付き合ったんならそこら辺の責任ちゃんと取りなさいよ!!」
分かりやすくムカついた様子で次々モノを言って来るユリ。だがジネスには全く持って彼女の言い分は響いておらず、そっぽを向かれて軽く返して来た。
「そんなこと知らないな。アイツは俺にとってただの他人だ。例え利用価値がなくなって別れて悲しもうが、俺を恨もうが関係ない。
お前たちにとっては恋愛は大切なのかもしれないが、俺はそんなものに興味はない。いや、ファンスの為に、家族のために孫ん多些細な事を気にしてなんていられないんだ」
ジネスは話すことは話したとこの場から足を離していった。
「連作先は交換したんだ。長時間お前達といて誰かに見つかってもマズい。連絡はこっちで送るからその時にまた来い」
「ちょっと、まだ話は終わってないわよ!」
「おい……」
ムカついたまま突撃をかけようとするユリの頭がランの右手に掴まれる。
「何よラン、放して!」
「お前、また勝手に姿出したな」
「そ、それは……アイツの言う事が信じられなくて」
ランに指摘されて我に返りつつも自分の言い分を曲げないユリ。ランはもう十分かと彼女の頭から手を放して反論した。
「アイツの言い分も分からなくはないだろ? 俺だってお前の為なら他人を利用する。どっかの馬鹿勇者共もその例だろ」
「そういう言い方」
「だがそれはそれとして……危ないな、アイツ」
「え?」
ランは去っていくジネスの背中を見つめつつ発言した言葉にユリが反応した。
「危ないって、もしかして」
「お前がよく知っている奴に似ている。どうにしろ、ほっとけなくなってきたな」
ランとジネスの協力関係が構築されるも、ランの心には何処か不穏な思いが出来ていたのだった。
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