6-15 妹のために
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そこからジネスの生活は一変した。親戚もいない彼は警察の勧めもあって孤児院の預かりになり、環境は大きく変化した。苗字も変わることになり、そのおかげなのか以降襲撃されることはなかった。
あのとき彼等家族を襲って来た犯人は何者だったのか。当の本人達は全員撃退されて分からずじまいのまま。警察に聞いても捜査を続けるの一点張りで一向に進展はなかった。
だがこの時点でのジネスにとってはそのどちらもがあまり強く意識していなかった。彼は目先にある大問題への対処に躍起になっていたのである。
いくら孤児院が寛容だったとしても、さすがに昏睡状態になっている人物の入院費を常に全て出すほどの余裕はやはりなかった。つまりはファンスの入院を支えることが出来ないという事だ。ジネスにとってそれは唯一残った家族を見殺しにする行為だった。
病室にて眠り続けるファンスを見つめるジネス。こうなったら彼は自分しか頼ることは出来なかった。
「ファンス……大丈夫だ……俺が、俺が頑張るから!!」
ジネスは働き始めた。孤児院での手伝いや新聞配達のような子供でも出来ることに努めたが、やはりただの子供の身で大金を稼ぐなど真っ当な手段では限界があった。
手段を選んでいられる余裕がなかったジネスは孤児院の仲間の皆にも秘密で裏事にも手を染めていき、いくつも苦渋を舐めるような思いをしながらも金を稼いだ。
そうして手にした金の僅かな浮き分で何かを買ってきては病室のファンスの元に届けに行った。
「ただいまファンス。今日もプレゼントを持って来たよ。お前が大好きなものだ。少ないけど、受け取ってくれると嬉しい」
毎度にわたって口角を力づくで上げて優しく話しかけるたジネスだったが、そうして声をかける相手は静かに眠るばかりで目を覚まさないままに時だけが過ぎていった。
だがそこから何年が経過し、二人の身体が成長したある日の事。ジネスは仕事の疲労を抱えたままいつも通り病院に向かって歩いて行く。
疲労からか何処か足取りが重いジネス。今日も何かファンスに贈り物を用意しようかと思った彼が良き道の途中にある通りの店を眺めていく。
目ぼしいものが見つからないと思ったジネスだったが、大通りの端の方に指しかかったタイミングにてふと見かけたものにふと足を止めた。
「これは……」
ジネスが見かけたのは、自分達が子供の時に母に誕生日プレゼントとして贈るはずだったものにそっくりな白いワンピースだった。
過去の事からトラウマへフラッシュバックするきっかけにもなりかねないもの。だがジネスは何を思ったのか、店の中に入ってこの白いワンピースをに購入し、そのままの足で病院に向かっていった。
何故このワンピースを買おうと思ったのかはジネス自身にもよく分からなかった。その上後から考えてみればこの行動が事件のきっかけになったのかもしれない。
病室に入ったジネスは眠り続けるファンスに自分が持ってきたプレゼントについて自虐気味に語る形で声をかける。
「ただいまファンス。 ……今日はこんなものを買って来ちゃったよ。ああ、自分でもなんで買って来たのだろうって変だと思っちゃうけど……」
いつも通り妹だけに見せることのできる優しい顔付きと声で世間話や近況報告をしても眠り続けるファンスから返事が来ることはない。
どうにかファンスに向かって声をかけ続けるものの、何度も同じことを行っている内に当のジネスも内心では何処か諦めかけている部分があった。
もう妹が目を覚ますことはない。もはやそう認めざる負えないと思考回路が傾きかけ、ついにジネスの口からそのことが声となってこぼれかけようとしていた。
「ファンス……俺は……」
ジネスが語り掛ける台詞を吐く最中に突然他の全ての音をかき消すかのように響き渡った雷鳴。途端に一瞬ジネスの脳裏に過去の状況がフラッシュバックされた。
両親が殺され、唯一残った妹が人ならざる姿に変貌し、そして今なお続く眠りについてしまった日の光景。
ジネスは記憶を振り払って我に返ると、気づいた時には体中から汗が噴き出てしまっていた。だが眠っているとはいえ妹に心配をさせるわけにはいかない。
ジネスはそう自分に言い聞かせて強引に息を整えて上がる心拍を落ち着かせた。
「そ……それじゃあな。また来るよ、ファンス」
我に返ったとはいえ一度混乱しかけた状態になっては妹に迷惑がかかる。そう考えたジネスは一方的にファンスに挨拶を告げてが病室から去ろうとする。
だがジネスは部屋の出入り口に着く前に足を止めた。雷とは比較にならない小さなものながら、後ろから明らかに物音が聞こえてきたからだ。
ジネスはまるで何が起こったのか察していたかのように後ろを振り返る。そこで見たものに彼は声を失って目を丸くした。
ずっと眠り続けていたファンスが目を開き、それどころか即座に上半身を起き上がらせていたのだ。
「ファンス?……ファンス! 目を覚ましたのか!!?」
すぐに駆け寄るジネス。しかし目を覚ましたファンスはジネスの声掛けに返事をするどころか一言も話をしない。寝ぼけともまた違う呆然とした無表情の顔つきで首をゆっくり動かし、ハンガーにかけられている白いワンピースに視線が止まった。
起きた妹の状況が何一つ読めないジネスが彼女に対して次にどんな台詞をかけるべきなのか判断に迷っていると、ファンスはワンピース一点を見つめたまま起きたばかりの身体を動かし、床に裸足の足を付けて立ち上がった。
そして白いワンピースを手に取ると、無言のままに自らに着込んだのだ。
「ファンス!? お前立って……いや、それよりどうしたんだ!?」
動揺しながらも次々質問を飛ばすジネスの声もファンスは全く聞こえていないかのように反応しない。そして次に彼女は更に驚くべき行動に出た。自身の病室にあった窓を開き、そこから飛び出ていってしまったのだ。
「ファンス!!」
妹の謎の行動。何にしろ外に飛び出たファンスを止めなければならないと急いで後を追いかけるジネス。雷をきっかけとして降り出した大雨に身体を濡れることも気にせず走り続けるジネス。
とはいえ暗がりの中何処へ行ったのか分からなくなったファンスの行方を追えるのか不安になっていたジネスだったが、その心配はすぐに杞憂になった。
近くから響いて来た雷とは違う轟音。まるで何かの爆発のように思えるその音に、ジネスは引っ張られるように向かっていった。
そして到着する直前からジネスの目に入って来たのは、豪雨の中で火こそ起こさないものの煙を上げている異様な光景。大型のトラックが破壊され、乗っていたらしき人達が全員血を流して倒れていた。
そして騒動の中心に立っているのは見覚えのあるシルエット。背丈こそ変わっているものの、まさしく両親が亡くなった時に現れた怪人。つまりは彼の妹『ファンス オルド』その人という事だ。
「ファンス……」
よく見ると稲光で光ってハッキリした倒れている人の姿はあの時自分達を襲撃して来た奴らと全く同じ服装だった。
「こいつら……ファンス、お前まさかこいつらに復讐するために?」
ファンスはここでもジネスの問いかけには全く答えず、人間のものとは思えない脚力ですぐさま姿を消してしまった。
「ファンス! 待ってくれ!! どこへ行くんだ!!」
ジネスはファンスを追いかけた。しかし普通の人間を超えた動きの前には追いつくことなど到底できるはずもなかった。かといってその後にファンスの移動の痕跡も手掛かりもなくこれ以降町に異変も起きなかったがために捜索は難航し、時間だけが過ぎた。
いつの間にか雷は収まり、雨も止んだ空模様になるほど時間は経過。ジネスは疲れ切った足で何の気なしに病室へと足が戻っていった。
「……」
どこへ行ってしまったのか分からない妹の捜索と再び見せた怪人の姿。大きなショックで顔色も悪くなりつつ戻ったジネスは、ここで更に驚かされることになった。
「ファンス? ファンス!! おい!!」
ジネスが病室に入ると、行方をくらましていたファンスがいつの間にか病室に戻り、再びベッドの上で眠りについていたのだ。ワンピースも元々あった位置に戻されている。
ジネスは歓喜して話しかけるも、ファンスは眠るままで反応しない。この一連の流れ。ジネスは率直に訳が分からないと思っていたが、それでも理解しようとしてファンスの手を取る。
「ファンス……お前は憎いのか? アイツ等が……」
答えはない。だがジネスは確かに見たのだ。妹が怪人の姿に変貌してまで倒そうとした存在を。そしてその存在は未だに健在であることを。
「待っていてくれファンス……これは、俺達の復讐だ! 俺が、お前の分まで果たしてみせる!! だから、お前は心配しないでくれ」
一方的な誓いを立てたファンスは、それからあの集団について調べた。格好は機動隊のそれにとても近い。だが微妙に違うデザインは、何処かで見覚えがあった。
そして突き止めた。公になっている組織とはいえ、実際の現場作業については世間に映していなかったがために分からなかった存在、『RAIDER』だったのだ。
RAIDERはこの世界に突然現れたゾンビに対抗するために作られた組織。それがなぜ怪物が姿を現したわけでもない自分達家族を襲撃してのか。
これから先いつ奴らが再びファンスを襲おうとするのか分からない。ならばジネスが出来ることは、その組織の中で力を付けてファンスを攻撃しないようにするのに一番確実な方法は一つあった。
「俺があの組織に入れば……ファンスを助けられることに近付ける」
決心を決めたジネスは元々努力していたところに更に勉学を重ね、孤児院内や通っていた学園でも一番の成績を取っていき、数の少ない枠を勝ち取ることに成功した。
こうしてジネスは、誰の力も頼ることなくたった一人の力でRAIDERに入隊し、組織内でも頭角を現した。
全ては唯一の家族である妹のファンスを守るため。その一心でジネスは今日今日まで必死の奮闘をしてきたのである。
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