6-13 ヘレティック 捕獲
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ランの攻撃によって負傷させられたヘレティック。突起から手を抜き後ろへ数歩下がったヘレティックは、おもむろに自身の負傷箇所からの出血に目を向ける。
フラフラと何処か力のない様子を見せ、次の瞬間に体を震わせて頭を俯かせるヘレティック。妙な動きをする相手にランは警戒を強めた。
(とりあえずダメージは与えたみたいだが……何だ? 急にうろたえた?)
即効突撃をかけてくるよりも逆に不気味なものを感じるラン。数秒後、このランの予感は彼にとって相当悪い形で現実になった。
ヘレティックは自身の血の雫が地面に数滴落ちていくのを目にした途端に甲高い声で息切れのような声を出し始めた。
「アァ……アアァ!……アアアァァァ!!!!」
ランがヘレティックの高い声に咄嗟にマズいと感じて自身の耳を塞ぐと、ヘレティックは少し丸めていた背中を勢いよく逸らせて空に顔を向けながら周辺一帯に響き渡る大きさの音で咆哮を上げた。
「アアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!」
大音量の耳に響く甲高い音。聴力が優れているランにとっては常人以上に体に堪えるものがあり、耳を塞いでいるにもかかわらず骨や頭に響く衝撃を感じ、めまいを起こして地面に膝を付いてしまった。
「ウッグッ!!……何だこの音!?」
服の中に隠れているユリは同じく両手で耳を抑えつつも、今まさに騒音に苦しんでいるランの姿を見て気が気でない。かといって自分には何も出来ないことに悔しさも感じる。
もう少し長時間この騒音が続けば気絶する。そう覚悟させられかけたランだったが、不幸中の幸いにもそれより短い間にヘレティックは叫ぶのを止めた。
何とか防ぎきれたラン達が耳から手を放すも、ランの身体にはかなりの疲労が見て取れる。だがヘレティックにはそんなことは関係ない。自身の行動の邪魔をして来た上負傷させられた。特に後者が相当癪に障ったのか、下がった顔の視線は一直線にランに向けられていた。
ランもこれに気付いて膝を上げて立ち上がる。だが響いたダメージは体に残り呼吸は多少荒くなっていた。
(どういう訳か知らないが怒らせたらしいな。攻撃されて痛かったからか? いやそれなら直後に至近距離で叫んでたはずだ。
叫ぶまでのラグ……痛みはましになっていてもいい時間……出血……血? ッン!!)
危機に陥ったからなのか普段以上に高速回転するランの脳みそが、ヘレティックの怒りの原因に気が付いた。
「こいつ、血を見た事でキレたのか!?」
改めて考えてみると、前回の戦闘時の本格的に暴れ出したのはゾンビをつら向いた返り血を見た時だった。理由は分からないものの、血を見ることがヘレティックの暴走のスイッチらしい。
(てな事をいまさら気付いたところで怒らせた事実は変わらないがな。考えろ。今から打てる対策はないか?)
ランが数秒間もの間に頭を素早く回転させていくも、激情のままに動いているヘレティックを前にインターバルを用意してくれるわけもない。
わずか数秒もの合間、音をも遅れる程の速度で真っ直ぐ近づいて来たヘレティックがランの間合いにまで接近して来た。
(やばい! さすがに無理があったか!? だったら一瞬だけ輝身発動させて逃れるか!?)
ランが即座に身を削る行為への判断を済ませすぐに口から呟きかけた。しかしその寸前、別方向からヘレティックに向かって何かが飛んで来た。ヘレティックはそれを切り裂こうとするも、物体は広がってその爪を指ごとからめとる。
見覚えのある形状。昨日ヘレティックを捕えようとしたジネス隊とは別の部隊が所有しているネットのそれだ。
幸いな事にネットに被せられたヘレティックが動きに困っている内に後ろに下がり距離を取るラン。視線を何度も移動させてヘレティックへの警戒は残しつつネットが飛んできた方向にも目を向ける。
見かけたのはやはりジネス達と同じ格好の隊員達。構えているのも覚えのある両手銃だ。
(やはり現れやがったか。捕える気満々の武装、明らかにヘレティックだけに狙いを定めた生け捕り用の特別部隊。まさかこの遊撃車が? てことはヘレティックは自分からそれを潰しにかかったって事だが……クソッ! 引っかかることが多すぎる!)
ランが仮説を立てようが立てまいが事態は進行していく。放たれたネットはヘレティックの身体をからめとり拘束しにかかり、隊員達は確実に捕らえるべく更にネットを別方向から追加で浴びせようと発砲した。
もがくヘレティック。しかしその存在専用に設計されているネットを力づくで破る事は難しく、更に重ねられた網の中ではもがく事しか出来なかった。
このままの調子でいくとヘレティックは捕らえられる。ランからしてみればこれでゾンビを捕えられて運ばれる様子をついて行けば分かるものがあると踏んでいた。
ところがヘレティックが完全に捕らえられるかに見えた直前、またしても別の方向から飛んで来た何かによってネットが切り裂かれた。
ネットの一部が切り裂かれて即席で出来た穴から片腕を突っ込んで穴を広げると、勢いを付けられた途端にネットを切り裂いて脱出した。
「脱出された!」
「クソッ! 今の余計な追撃、やったバカは誰だ!?」
「そんなことより追加のネットだ! はやく別のネットを用意して奴に浴びせろ!!」
隊員達が捕えかけたすんでのところで解放されたヘレティックを再び捕えようと動き出すが、当然一度危うい目に遭いかけたヘレティックがこれを黙ってみているわけがない。
即座に人間のそれをはるかに超える速度で移動し一瞬でその姿を小さくさせる程に遠くへと逃げだしていた。
「クソッ! 逃げだぞ! 追え!!」
隊員達は逃走したヘレティックを追いかけるために破壊された遊撃車も置いて個人個人が慌てて駆け出していった。
ランは隊員達に注目され巻き込まれる前に退散するべきと判断してすぐに気配を消すように意識しつつ音を抑えてこの場から離れた。
(ほんの数分ながら随分ごたついたイベントだったな。まあそんなイベントごとの感想を考えるより今は……)
人目を気にしつつ移動するランだが足取りの向きは何も考えていないわけではなかった。ランの中での引っ掛かり。突然飛び込みヘレティックをネットから解放した謎の銃弾についてだ。
(あの銃弾、どさくさのミスにしてはいささか不自然だった。始めからヘレティックを開放するための行為。そんなこと誰が?)
ランが弾丸が飛んできた方向に足を進めて周りを見ていると、正面方向の物陰から人の気配を感じ取った。
「誰かいるな?」
鋭い聴覚が感じ取ったものにランが身体を向けて足を進める。相手の方は追いかけられていることに気付くのに遅れたようで動き始めるまでにロスがあり、ランが距離を詰めて肩を掴むには十分な時間だった。
「よお、こんな所に何用だ? ジネスさん」
わざとさん付けにして丁寧に呼びかけるラン。彼が発見し捕まえたのは、病院にいるはずのジネスその人だった。
「お前は……リコルを助けた!」
「風来坊……あぁ、もう名乗ったんだったな。将星ランだ」
調子を戻してフランクに話しかけるランに対して彼に捕まってしまった事に罰の悪そうな顔を浮かべるジネス。そんな彼にランは躊躇なく質問を飛ばした。
「さっきまであそこにヘレティックがいた。それが取っ捕まりかけたときに都合よく流れ弾が降ってきて解放されて逃げていったんだが、何か知らないか?」
話を聞いているのかいないのか分からない程動揺しているように見えるジネス。ランが彼の焦り様にどうにも気になっていると、彼の奥の道の端に一瞬だけ誰かが通り過ぎていったのを発見した。白いワンピースの女性。前回ヘレティックが会わられたときに出現した人物と特徴が一致する。
「また現れた。やっぱりあの女は……」
ランが女性の事について言及した途端、ジネスはランの胸ぐらを掴んで鬼の形相で睨みつけてきた。
「貴様! 今見た事について触れるな! 命が惜しいのならこれ以上関わるな!!」
「そう突拍子もない薄っぺらい台詞を言われて引き下がる程おりこうさんじゃねえんでな。それともあの白い服の女の事について触れられたくなって事か?」
ランの敢えての挑発的な問いかけにジネスはこれを自分を下手に扱えばあの女性の事について他の人に言及するという脅しと捉えた。
苦い顔をより酷くしつつもジネスはランの胸ぐらから手を放した。
ランは衣服を整えようとしたのか一瞬だけ下を見つつ衣服の歪みを修正すると、細めていた眼を少し広げて話を聞く姿勢を取る。だがジネスの様子からしてまずは白い服の女を見つけなければ話す気にもならなさそうだった。
「それで、まずはあの女と合流するべきって事か?」
ランの問いかけにジネスはそっぽを向いた顔から視線だけを彼に向けて答えてきた。
「少し時間が経過した。これだけ合間があればもう大丈夫だろう」
「あ? 何の事だ?」
「……ついてこい」
突然に彼自身にしか分からない台詞を吐くと、怒りを落ち着かせ表情を整えつつ足早に移動を始めた。ランもユリを隠しつつジネスの後を追いかけていく。
少々時間が経過し三人が辿り着いたのは、戦闘前にランが入りかけていた病院だった。
(ここか……さっきぶりだな……)
昨日の今日どころの騒ぎではない短時間での事。ヘレティックが飛び出して割った窓ガラスもこの短時間では当然修繕されず、とりあえずの応急処置としてなのか段ボールが張り付けられていた。
三人はそのままの足取りで病院の中に入ると、当の窓ガラスが割られた部屋の中に入って行った。ランは初めてながら、彼に抱えられているユリはここに来るのは二度目だ。
ジネスは病室に入ってすぐにそこに眠っている少女の元に近付いた。続いてランが彼の後ろから見つつ、この少女がユリから聞いていた人物なのかと観察する。
「この子……」
「俺の妹、ファンスだ」
思い出すよりも先に答えを口にしたジネスに分かっていた事だと表情が変化しないランだったが、眠るファンスの頭に優しく手を当てて口にしたジネスの次の台詞には大きく目を見開くことになった。
「こいつが……ヘレティックの正体だ」
「何っ!?」
ランはもちろん、彼の服の中に隠れていたユリにとっても初めて知った情報。二人が少し動揺してしまう中、ジネスは語り始めた。自身のファンスこと、ヘレティックの経緯について
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