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6-9 ファンス オルド

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 現場から抜け出し、服装を変えつつ元いたビルの中にまで戻って来たラン。駐車場や廊下の道を歩いて服装を清掃スタッフのものに戻すと、何食わぬ顔で清掃作業に戻った。


 緊急事態が収束したためかビル内のスタッフ達の緊張感が少し緩んだ状態で歩いているのを確認しつつ人目に付かないよう用心しながら着信をかけてみた。


「ランより幸助へ……ランより南へ……ランよりスフェーへ……」


 着信をかけてそこまで時間が経過せずに返答は来た。最初に立体映像が出現して現れたのは幸助だ。


「やっと連絡来たか。お前いきなり勝手に動くもんだから驚いたぞ!」

「お前だって人の言うこと聞かずに勝手に突っ走ってるだろ。今更ツッコめる立場じゃない」


 ランの返答がダイレクトヒットした幸助は豆鉄砲を食らったような感覚で表情が固まってしまう。

 幸助の説教が止まったのをいいことにランは早速連絡した本題に入る。


「とりあえずその勝手に動いたことのおかげでいくつか分かった事がある。報告したいから一度集まれ」


 ランの呼びかけによってビル内の人目に付かない場所に集合した三番隊とスフェー。ランは現場での戦闘やジネスの事、そしてヘレティックの事について説明した。


「つまり、ラン君とユリさんがたまたま出会った人がゾンビの討伐部隊の隊長さんで」

「他より特別扱いされているヘレ……ヘレテング」

「ヘレティック」

「そ、そうヘレティック!……っていう奴の事について何か知っている感じって事?」


 ランが話した情報を整理して少し間を置く。流れる沈黙を最初に破ったのは一番ランに攻撃的なスフェーであり、当然というべきかその口に出た台詞も棘があった。


「……何の役にも立たない情報だな」

「あ?」


 怒り顔でスフェーを睨みつけるランだが、周りにいる幸助と南は汗を一筋流して視線を下に下げて沈黙している。スフェーの言い分を否定できないという心境だ。

 二人が黙ったままでいる中、スフェーはランにこの結果も踏まえて問い詰める。


「貴様、わざわざ自分の隊の隊員達を置いてけぼりにまでして碌な情報も得られないとは……全く、これでは隊長として示しがつかない」

「いちいち揚げ足を取ろうとするな。ここで得た情報が思わぬ形で繋がることもあるだろう?」

「だがそれが重要な情報である確率は極めて低い。お前も名目上隊長であるのなら、確率の少ない危険を冒すことなど止めるべきだ。

 他の隊員と緻密に協力し確実に物事を進めていく。それが『隊』というものだろう」


 スフェーの説教にランは面倒臭そうな表情を一瞬見せて息を吐きながら苦い口をして返答する。


「生憎これが以前からの俺のスタンスなんでな。変えるつもりもサラサラない」


 ランの面倒事を受け流すような台詞周りにスフェーは苛立ちを覚え、更に詰め寄り怒声を出した。


「貴様はいつもそれだ! だから私は反対した! お前に部隊を率いることなど不可能だと!」

「またそれか……」


 話の内容の転換により強く顔をしかめるラン。スフェーは返答が来ないのをいいことに一方的な説教を続けた。


「私はお前が隊長になる事を反対している。それは今も変わらない!」

「それは今言う事じゃないだろ?」

「いいや言わせてもらおう! お前に隊長など務まらん!!」

「まあまあまあ! 二人共落ち着いて……」


 二人の、というよりスフェーによるほぼ一方的な口論を止めさせようと間に割って入って来た幸助。

そのまま幸助がスフェーの方に向いて彼を諫めようとした。


「その、ユリアーヌ隊長。ランの事を気に入らないのかもしれませんが、今はとりあえず収めて……

 まずは裏切り者の捜索に集中しないと」


 目の前の光景への動揺からか丸くしつつも真っ直ぐ見てくる幸助の瞳にスフェーは苛立った気をとりあえず落ち着かせた。


「これは失礼……少々気を立て過ぎた」


 矛を収めたスフェーに幸助と南が胸を撫で下ろすと、そのスフェーが先導して本題に戻した。


「とにかく、将星隊長はこれ以上持ち場を離れず捜索に集中してくれ。肝心な報告がないのなら以上だ」

「上から言うな。ま、了解した」


 ランもこれ以上反論しても碌な事にならないと自分が折れて会話を終わらせることにした。

 これで悶着は一段落。幸助と南も落ち着いて再び清掃作業に戻れるかと思ったが、ここに来てスフェーが口にした鶴の一声が事態を急変させた。


「マリーナ、君も分かったね?」


 ランの服の中にぬいぐるみの姿で隠れているであろうユリに対して優しく声をかけるスフェー。ところが少し時間が経ってもユリがランの服の中から出現する事はなく、動いている様子も見受けられなかった。


「マリーナ?」


 これには問いかけたスフェーだけでなくランも反応した。まさかと思いランが服の中を手で触り、目で見て確認をした。

 確認を進める程にランの表情は青ざめていき、汗が流れ出していく。


「おい、まさか……」


 横から悪い予感に目線を細めながら問いかけてくる幸助。隣にいる南も声は出さないが同じ表情になり何となく事態を察していた。

 そしてこの後起こる事への危機感を感じつつも、隠すことは出来ないとランはこの場の全員に正直に口を開いた。


「いない……」

「……」

「ユリが! アイツ! いつの間にか消えている!」


 直後、主にスフェーによるものが最も大きい騒ぎになった事は想像に難くなかった。



_______________________



 その同時刻、場所は変わって別の建物の中。清潔感の伝わる白い壁や床に同じく白い服装をした人たちが歩いている。雰囲気から見て病院なのだろう。

 広い廊下に静かな空気が流れている場所だったが、この瞬間にその静寂を強引に破り駆け足で過ぎ去っていく一人の人物。ランの話を聞いて様子が豹変していたジネスだ。


 ジネスは近くを通りかかる人にぶつかる事も気にせずに必死な様子で走り、ぶつかりかけた人たちはどうにか回避して彼の背中を呆然と眺めた。

 廊下を突っ切ったジネスは他の何にも目もくれずに一つの病室の中に飛び込んでいき、その中の一角で眠っている人物の元に詰め寄った。


「ハァ……ハァ……」


 冷静さを欠き息も絶え絶えになっているジネス。ベッドに眠っているのは人工呼吸器を付けられた状態で眠っている少女。

 目は閉じているものの、彼女の顔立ちや髪色はジネスと非常によく似ている。


「ファンス……良かった……大丈夫みたいだな」


 ジネスは、ファンスと呼んだ少女の眠り続けている顔を見て荒くなっている息を整える。少しして溢れ出した汗が引いていくジネスは、ファンスの左頬に自身の右手を伸ばして優しく触れる。

 誰に見られていない場所だからか、思い入れのある人物に対しての態度だからか、他の人達に接する時とは違って優しい、相手を思うような表情に顔つきが変化していた。


「大丈夫だファンス。俺が……お前の分まで……」


 眠り続けるファンスの近くで何かを小声で語り掛けるジネス。そんな二人の様子を近くから覗くようにして見ている人物が一人。いつの間にかランの元から姿を消していたユリだ。

 ユリはジネスがヘレティックの名前を聞いた途端に血相を変えて走り去っていったことがどうにも気になり、勝手についてきてしまったのだ。


(ベッドの上で眠っているのは……ジネスさんにそっくりな顔! あれ?)


 ユリが少女が眠るベッドの周りに視線を動かすと、枕元の上にこの世界の文字で書かれた名札らしきものを見つけた。

 異世界での文字をいくつもの種類勉強してきたユリは、翻訳機に頼ることなく書かれている文字の内容を理解する。


(『ファンス オルド』……年齢は十七。私と同い年ね。ジネスさんの見た目からして妹かしら? 呼吸器までつけて、眠り続けているのかしら?)


 ユリが更に情報を得ようと目を動かすと、ふと見つけたものがあった。扉が開いていたクローゼットに立て掛けられていた白いワンピース。ユリがランの服の中に隠れて見た、戦闘現場から足早に走り去っていった女性が着ていたものと同じ服だ。


(なんであのワンピースがここに!? 流行りものでたまたま同じものが? いや、それにしたってあんな所でわざわざ見つかるものかしら。

 ジネスさんの焦りにあのワンピース……何か関係があると見た方がいいわね……)


 ユリは更に情報を得られないか顔を覗かせようとするも、ここに来て廊下から足音が聞こえてきたために人が近づいていることに気付いた。


(やばっ! こんな所見つかったら確実に変な人に思われちゃう! かといって飛び出してもジネスさんに怪しまれるし……もっと知りたかったけど、時間切れって事ね」


 ユリは情報をいまいち得られなかったことを歯がゆく感じつつも、引っかかる興味を引っ提げて病室の傍から去っていった。

 病院から出たユリは、ここでは転移しようにも誰かの目についてしまうとマズいと思い、人目に付かない物陰に足を運んでいった。


 ユリはランの様に感覚が優れているわけではない。故に気付くことが出来なかった。自分がジネスについて行き観察していたのと同じように、彼女もまた誰かに既に監視されていたという事に。


 距離を離れて彼女を見ていたその人物は、少し口角を上げて独り言を呟いた。


「お人好しのお姫様は何もしなくても勝手に動く……仕掛けるにはいい頃合いだ」


 そんな何者かの思惑の標的にされていることなど気付いていないユリは、ある程度人目に付かない場所に来たことを確認すると、ペンダントの装飾を手に持って起動させる。

 座標を指定してラン達のいるビルに転移する用の扉を目の前の空間に広げようとした直前、狭い空間内に響いて来た足音にユリは思わず起動したペンダントを停止させて足音の方向に顔を向けた。


「誰?」


 どこかリズムの狂った歪な足音。不気味に感じたユリが警戒を強めると、フラフラとした千鳥足で姿を現したのは一人の青年。ユリはその青年の姿に見覚えがあり、記憶を辿って少しして判明した。

 大柄な体格をしたチャラついた風貌の男。ユリやリコルにナンパして来たあの男だ。


「アンタ! なんでこんなところに?」


 不審に思うユリ。その予感は直後に現実となる。目の前の男は見る見る間にその体を歪ませていき、上半身の服がはじけ飛ぶほどに筋肉が膨張し、肉体から黒い毛が生えて体を覆いつくす。

 男は人間であった姿を変え、ゴリラの様相を模した怪人へと変貌したのだ。

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