6-8 ヘレティック
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ここまで討伐しようとしていた対象を軽々と撃退した新たなゾンビ。ランはそのゾンビの規制に耳を抑えつつ視線を鋭くさせ警戒を強める。
(何だこのゾンビ。どこから現れた? なんでゾンビを攻撃して……)
次々に疑問が浮かんでくるラン。仮説を立てて納得しようと頭を動かしている彼だったが、続いてゾンビたちが出てきた曲がり角から銃撃音が鳴り響き、マシンガンの銃弾が次々に飛び出した。
銃弾の向かう先はもちろん新たに現れた謎のゾンビ。最初の数弾が接触すると、回避する間もなく多量の銃弾が身体に飛び込んでくる。
先程までラン達が対峙していたゾンビとは違い撃ち込まれた銃弾の箇所を負傷し、痛覚があるのかダメージを受けているように見える新たなゾンビ。
曲がり角からマシンガンを構えたままゆっくり歩いて姿を現した隊員達はこのゾンビに対して他のゾンビとの遭遇とは違う驚いたような反応を見せて口を開き連呼する。
「『ヘレティック』だ」
「ヘレティック……まさかこいつが現れるだなんて!」
口ぶりからしてこの隊員達は今しがたゾンビを倒したゾンビ、ヘレティックについて何か知っているらしい。
(ヘレティック……異端者か。確かにゾンビがゾンビを殺すなんて異常な事態っぽいからな。単にあのゾンビを食料の人間と誤認して狩りをしたのか。
いや、そんな奴にわざわざ異端者なんて名前を付けるとは思わねえな)
ランも新たに現れたヘレティックが何者なのか頭を回していると、とうのヘレティックは先程の攻撃で自身の右手に付いたゾンビの血を目にする。
「ウウウゥ……」
唸り声を上げたヘレティックは、真後ろに身体を向けて隊員達に目線を向けた。そして返り血を受けた直後と同じように甲高い雄叫びを上げてマシンガンを構えて硬直している隊員達に真正面から突撃していった。
「来たぞ!」
「構うな! 撃て!!」
数人足が下がりかけながらも攻撃を始めようとする隊員達だが、ヘレティックの足は倒された個体とは比較にならない程に素早く、攻撃を意識してマシンガンの引き金を引こうとした数瞬の合間に隊員の内前方にいた何人かがヘレティックの両手の爪によって切り裂かれた。
爪の鋭さは隊員達の特殊服をいとも簡単に切り裂き、更に蹴り飛ばされて気絶させられた。
(素早い!)
前方数名が撃退されて焦った隊員達はヘルメット越しに怯えを感じさせながら激しく銃弾を乱射した。
しかしヘレティックはこれのほとんどを回避し、微かに受けたダメージも感じさせない程の狂気を纏って飛び掛かり、真正面にいた隊員を骨ごと切り裂く勢いで爪を振るおうとしてきた。
「ったく、ここの連中はビクつくとすぐに固まりやがって!!」
ランは隊員達の行動に悪態を付けながらも走り、マシンガンにてヘレティックの攻撃を受け止めようと割って入った。
しかしマシンガンの銃身はいともたやすく切り裂かれて使い物にならなくなり、咄嗟に後ろに下がって隊員を背中で押しながら移動しどうにか攻撃を回避したが、真っ二つに割られたマシンガンに冷や汗をかく。
(盾にもならないとは……喰らった連中は大丈夫なのか?)
既に戦線離脱させられた隊員達の容体が少し気になるも、すぐに追撃をかけてきた目の前のヘレティックの対処に追われたランはこちらに集中せざる負えなくなった。
真後ろにいた隊員を転倒させつつ上がった足で回し蹴りをするラン。ヘレティックは向かってくる足に爪を当てようとしてくるが、ランはこれを見越して切り裂かれたマシンガンの半分をヘレティックに投げつけて爪の動きを妨害、一瞬の隙をついて顔面に当てて蹴り飛ばした。
さっき撃退された個体とは違い感触は人に近く特に問題なく攻撃が出来た事にとりあえず一安心するランだが、今の攻撃でヘレティックの意識が彼に向いたのも明らかだった。
「お前ら手を出すなよ! 余計な事をされて被害が広がったら最悪だ!!」
「は! ハイィ!!!」
足を地面に置いて隊員達に怒声を浴びせるラン。せっかく自分が直截戦える状況に持っていったところに余計な事をされてしまえばまたしても混戦になりかねないからだ。
(さて格闘戦は有効のようだな……ここまで目立っちまったんだ。今更こいつらに合わせても無駄だろうな……
最も見た感じ指揮系統はグチャグチャ。ジネスだったか? アイツはどこに行った? クソ、全員同じ姿しているからわかりずらい!)
ランが周りの人達に対する文句を頭によぎらせていると、蹴り飛ばしたゾンビがフラフラとした様子で立ち上がり、完全にランを睨みつけているらしき構えを取る。
(来るか!)
ランがもう一度身構えると、ヘレティックもランに飛び掛かろうと足を走らせる。しかし二人がもう一度戦闘を再開するかに思われたその瞬間、脇から撃ち込まれてきたマシンガンの銃撃が割って入って来た。
「アイツ等! 別の遊撃車に乗ってきた連中か!? めんどくさいタイミングに!!」
愚痴をこぼすラン。彼が懸念した通りヘレティックはこの攻撃に反応して追加部隊に意識を向けて足を動かし飛び出した。
当然ランはこれを自分の身を危険にさらす行為だと走りかけたが、新たに現れた隊員達は真っ先に自分達に向かって来るゾンビに対して恐れることはなく、逆に待ち構えているかのようにマシンガンの形を変形させて構えた。
そしてヘレティックが間合いに入った瞬間、銃口から範囲の広いネットを放射した。攻撃する事ばかりに意識を集中させていたがために相手の攻撃方法に気付くの遅れ、網を直撃しそこから高圧電流を流された。
苦しみの叫びをあげるヘレティックに容赦なく電撃を続ける隊員達。どうにもさっきまでの隊員達とは戦い方の様子が違う彼等にランが違和感を感じていると、ヘレティックは爪を力強く振るって網の一部に穴を開けて脱出した。
「しまった! ネットが!」
「構うな! 次のネットをはやく発射するんだ!!」
しかし隊員達が次の行動に出るよりも早くヘレティックは逃げ出した。
「ヘレティックが逃げる!」
「追いかけるぞ! 奴を必ず捕えるんだ!!」
追いかける隊員達の努力もむなしく、ヘレティックは素早い動きで翻弄して隊員達を撒き、姿を消した。
ゾンビを取り逃がしたのとはまた違う様子で悔しがる追加動員の隊員達。ヘレティックを逃したと決まった途端に彼等は誰が指示を出すわけでもなく乗って来た遊撃車に乗り込み、この場を後にした。
ランは明らかに行動目的が違うように見える彼等に少し興味を持っていた。
(アイツ等、妙にさっきのゾンビに固執してやがったな。ゾンビを狩るゾンビ。異常の言えば異常だが……どうにも引っかかる)
何かを思い近づこうとするにももう遅い。降り注いでいた雨も上がり、とりあえず一段落した現場で何か悪目立ちの件で最悪正体を問い詰められるよりも前にトンズラをここうと気配を消してこの場から離れようとするラン。
ところが逃げ出す前の一瞬、ランはあるものを目にして足を止めてしまった。
ここは戦闘現場。即席とはいえ人払いはされており周辺には一般人はいないはず。そんな場所にて物陰を横切っていった一人の女性。
傘もささずに急ぎ走りさった白いワンピースの女性は、頭に帽子を深く被って顔を見えないようにしていた。急ぎながら足取りは何処か歪にも思え、腰も曲がっている。酷く疲労しているような様子だった。
一瞬の出来事。しかしこの異質な人物に強い引っ掛かりを感じていた。
(今のは……まさかアイツが?)
行き先が決定したことで早速足を進ませたランだったが、丁度人目に付かなくなってきたあたりで彼は突然足を止めた。
「何の用ですか?」
即席で取り繕ったような丁寧な台詞を吐くラン。彼が足を止めた理由は単純。後ろから突き付けられた銃口の存在に気が付いたのだ。
「単刀直入に聞く。お前、何者だ?」
銃を構えている人物はヘルメットを被ったままでいるものの、声からしてジネスであることはすぐに分かった。
「何者、とは?」
「とぼけるな。お前は討伐部隊の隊員じゃないな?」
「何を言い出すのですか隊長? 自分は」
「俺の討伐部隊は指示統制を強くしている。余計な行動をして隊に多大な損害を与えることを防ぐためだ。隊員達にもそれは徹底している。
にもかかわらずお前は隊の規律を破り個人行動をし過ぎた。そしてその動きに手馴れている。隊の人間でない根拠としては十分だ」
ランは自分が隊員達の危機を放っておけなかった行動をさっそく後悔して苦い顔を浮かべる。
「統制ねぇ……そのおかげでイレギュラーが発生した途端に隊員全員棒立ちだったじゃねえか。俺が出なければやられてただろあれ」
こうなればもう隠せないと踏んだランの口調が素のものになる。逃げる機会を伺おうと話を続けるランは文句ついでについ先ほど起こったことについても言及した。
「その上ヘレティックだったか? ゾンビを狩るゾンビまで出てきて、本当にてんやわんやだった」
「ヘレティック!?……今ヘレティックと言ったか!!?」
「あ?」
疑問を感じて首を少し後ろに回すランに、ジネスは彼の襟を掴んで力づくで身体を回して胸ぐらを掴み怒声で問いかけてきた。
「アイツが出てきたのか!? どこで!!? どこで見た!!?」
ヘルメット越しにも見える鬼の形相と強い焦り。ランはジネスの台詞に疑問を感じつつも掴んできた腕を放して素直に答えた。
「何処でって、すぐ近くで暴れただろ? お前来てなかったのか!?」
「すぐ近く……」
ジネスはランからヘレティックの事を聞いた途端に少し下がると、ランを咎めることも捕えることもせずに開けた場に向かって走り去っていった。
再び取り残されたラン。どういう訳かは知らないもののジネスに正体を知られるより前に去っていったことと幸いに思いつつ、何故彼が動揺してヘレティックを探しに行ったのかが少し気になった。
「アイツ、例のゾンビと何かあったのか? 気になるところだが……これ以上近付いたら今度こそ正体がバレるな。一旦退くか」
謎の人物も見失い、これ以上の調査は落とし穴にはまる判断したランは、人目に付かないことをいいこととして現場から立ち去っていった。
もう一人この場にいた人物が、彼と同じくジネスの事が気になっていた事に気付かずに
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