1-1 勇者パーティー
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どうしてこんな訳の分からない事態になったのか。それには、少し時間を遡った同じ場所での出来事から振り返る。
紫色の禍々しい空の下、雷の轟音が響き重い空気が流れ込む。その中には一目見るだけで恐怖を引き起こされる一際目立つ黒い外観の城。
RPGの経験者なら、これを『魔王城』と言えば、誰もが納得するものだろう。
城の中には人間を虐げ、苦しめる邪悪な魔王が居座っている。
誰もが憎んでいた。だがその憎しみを軽く上回る恐怖故に人間ならば誰もが近付かず、支配に屈するしかなかった。
しかしその状況下で不落の城に挑む無謀としか思えない、だが勇敢な四人の冒険者がいた。
襲いかかる怪物達を軽々と切り裂いていく茶髪の青年。周囲の敵を全て撃退した彼は、ふと後ろを振り向いたときに仲間の女性二人が危機に陥っている様子を見た。
一人は小柄な体格に見合わない巨大な斧を持つ猫のような耳と瞳を持つ美少女。もう一人は美しいポニーテールを持ちつつも髪とは反対に傷を残した甲冑を着る女騎士。
ダウンしている二人に慈悲なく襲いかかる巨大な魔物の拳に青年は目にも止まらぬ速度で走り出した。
危機に陥り、思わず目を閉じてしまう少女達。次の瞬間二人の耳に響いたのは暴力の鈍い音ではなく、金属同士がぶつかり合う甲高い音だった。
何だと思った二人がゆっくり目を開けると、目先にはさっきまで別の場所で戦闘をしていたはずの青年が剣の刃で金棒を受け止めている姿があった。
「「コウスケ!」
「大丈夫か? ソコデイ、アーコ」
『コウスケ』と呼ばれた青年に声をかけられた獣耳の少女『ソコデイ』と甲冑の女性『アーコ』は頷く。コウスケは彼女達の無事を確認すると前を向き、魔物の相手に集中した。
「サイクロプスか」
コウスケは攻撃を受け止めた片腕の力だけで相手の巨体を跳ね返して足下をふらつかせた。相手が怯んだ所を彼は見逃さずに両手を前に出すと、一瞬にして火炎が飛び出しサイクロプスの身体に直撃させた。
「これでも喰らえぇ!」
しかしサイクロプスは炎が晴れたその場でも多少身体が焦げた程度であまりダメージを受けているようには見えない。
「この魔術じゃダメか」
「そんにゃ、コウスケの火の魔術が効かないなんて」
コウスケやソコデイが当然のように吐く言葉。どうやらこの世界では『魔術』が当たり前にあるらしい。不安になるソコデイだったが、アーコが彼女の肩に触れてなだめる。
「大丈夫。コウスケは普通一つしか持たない属性を七つも持っている。あの技ならきっと!!」
女性が予想した通り、サイクロプスに火炎が通じないと見たコウスケは足を肩幅に広げて両腕で剣を上へ持ち上げて力を込める。
するとコウスケの剣の刃が七色に次々と色を変化させて光り輝いた。
(この世界の人々の身体に流れる各属性の魔力。光の魔力を中心としてほかの属性の力も一点に集中し放つ)
(アタシ達を何度も助けてくれた、コウスケの一番の得意技!)
「お前に、俺の大切な仲間は傷付けさせない!」
目つきを鋭くさせたコウスケは力が溜まった剣を振り下ろし、突き刺す構えをとる。そして動作が終わると同時に彼の刃の先端から剣の輝きと同じ色の光線を広い範囲に高速で放った。
「<七光衝波>!」
光線を直撃したサイクロプスは苦しい断末の声を出しながら瞬く間に異常な量のエネルギーが体中を駆け巡り、その力に耐えきれずに爆発を起こして絶命した。
衝撃で背中が破裂したサイクロプスの死体はそのまま重い音を立てて倒れ込んだ。
「フゥ……」
戦闘が終了し息をつくコウスケ。しかし立ち上がって剣を腰の鞘に納めて二人の方を振り返ったときには、戦いのあととは思えないような優しい笑顔を見せていた。
「二人とも、大丈夫か?」
彼の心配する声に、二人の緊張の糸が一気に崩壊する。敵に襲われ死にかけたという恐怖、そして助けられた安心感からこみ上げた涙が二人の目から溢れ出した。
「「コウスケーーー!!」
途端に彼女達はこみ上がった激情に身を任せ、立たせた姿勢を前のめりにしてコウスケの胸に飛び込んでいった。いきなり二人に抱きつかれた方はいささか参ったような顔をしている。
「あぁ、ごめん遅れて。ここの周りにいた奴らを倒してたら、予想より数が多くて手こずっちゃった」
「ううん、いいの」
「ここまで来て、助けてくれたもんにゃ」
力強く、かつ震える手で背中に延ばされる二人の腕。相当怖かったのであろう事をコウスケに伝えていた。彼もそれを深く受け止めて自身の手で優しく背中をさすった。
そんな三人のいるところに、コウスケが入ってきたのと同じ入り口からもう一人の少女が入ってきた。
金色の美しい長い髪の一部を束ねた髪型に長い花のような杖を持ち、両耳の先端が横にとんがっている。いわゆる創作作品の『エルフ』のそれだ。
「二人とも、大丈夫ですか?」
しかし部屋に入ったエルフは、二人がコウスケになだめられている様子を見た途端に顔をしかめ、はやくその状態を解かせるためにコウスケの左肩に右手を置いて声をかけた。
「すぐに傷を治します。一旦コウスケは離れて」
催促されて彼はいやがる二人を鎮めながら離れると、エルフは二人に向けて杖の先端を差し、目を閉じて何か技名のようなものを口にすると、彼女がここで言う『魔術』を行使した。
「<聖快>」
するとさっきの巨大な魔物の攻撃にやられていた二人の傷がみるみるうちに塞がっていき、傷跡もなく完治した。
「ありがとう、ココラ」
「当然のことです」
「ほぉんと、コウスケは強いけど、回復術だけは苦手にゃもんね」
「それを言わないでくれよ。気にしてるんだから」
『ココラ』と呼ばれたエルフは小さいながらも愚痴を言われたことに苦笑いをする。
仲間の回復が済んだことにコウスケもホッとすると、その場を立ち上がってソコデイとアーコに両手を差し伸べた。
二人はそれを握って支えられながら腰を上げると、さっきの戦闘のこともあったために不安が生まれたのか二人に聞いてみる。
「もうすぐ魔王の間だ。多分ここよりもっとキツい戦いになると思う。こんなことを言うのもなんだけど……」
しかしその言葉はソコデイが手で口を塞いできたことで止められてしまった。
「ここでリタイアなんてしにゃいわ。それこそ失礼よコウスケ!」
「私も、騎士としてここで帰る事こそ恥だ」
二人の言葉に胸を打たれ、分かったと頷き、この先の道に体を向けて仲間の三人に投げかける。
「皆、行くよ」
三人も自身の拳に力を込めてに活を入れると、前を進むコウスケの後ろをついていった。今日こそ邪悪な魔王を倒し、この世界に平和をもたらす。
そのたった一つの目的のために前を向き、禍々しい空気がより一層流れる道に入っていった。
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そしてコウスケ達パーティーは城の中でこれまで見たものより一段と大きく、触れる前から本能で危険を察してしまう程の邪気を放っている扉の前に辿り着いた。
一行に緊張が走る中、ココラは気合いを入れるために声を出し、ソコデイがそれに頷く。
「いよいよですね」
「うん」
しかし言葉とは裏腹に肩に力が入っている二人に、不意にアーコが後ろから飛びついて驚かせた。
「「ひゃぁ!?」
「アーコ、何するにゃ!」
「フフッ、少しは緊張が解けただろう? そんなに気負ってたらそれこそ負けてしまうぞ」
アーコの説得に二人は少しだけ落ち着く。彼女はコウスケに向かってウインクし、アイコンタクトを送ってきた。美しいお姉さんの視線に少しドキッとしてしまう。
息を整えるコウスケ。彼は隠してこそいるが、この場で一番に緊張している。これには理由があった。
(いよいよこの時が。日本で死んでこの世界に転生して魔王を倒すためにここまで旅をしてきた。
今日ここでそれが終わる)
自然と剣を握る手に必要以上の力が入ってしまい、そんなコウスケが力んだまま扉のドアノブに手をかけようとした。しかしその寸前、ココラが彼の背中に手を置いて優しく声をかける。
「大丈夫」
「ココラ」
ふと小さな笑顔で頷く彼女。それによって緊張が解け、気合いを入れ直されたコウスケは、深呼吸をして扉に視線を向ける。
「開けるよ!」
後ろの三人は武器を構え、コウスケが前に出て扉を開けた。重い扉が鈍い音を鳴らしながらゆっくりと動く、先の部屋の明かりの光が差し込み、いよいよ魔王の間が見えてきた。
「行くぞ!!」
覚悟を決めた彼等が見た先、そこには
「チッ、ここも外れか」
「エッ?」
既にボロボロに砕けて無惨に殺された魔王の亡骸。そしてその上に一人の青年が座り込んでいた。
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