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ココラー19 初めてのシャワー

 少し時間が経過してほとぼりが冷めた後。女性陣三人は戦闘で汗をかき汚れた体を洗い流そうと、鈴鹿によって自社ビル内にあるシャワールームにまで案内された。


「ごめんなさい。私達までお世話になって」

「何言ってるのよ。アタシの方がお世話になりまくっているわよ。いいから入りなさい」


 遠慮なく足を進めるオーカーと少々躊躇しつつ入るココラ。鈴鹿は脱衣所に入ってすぐに自分の服はもちろんの事、困惑しているココラの服も脱がした。


「ほらほら! 戸惑ってないでちゃっちゃと脱いじゃいなさい!」

「あぁ! ちょっと鈴鹿さん!!」


 流石エルフというべきか、下着姿になって見えたココラの肌は一目で綺麗といえるほどに美しく、更に程よく育ったバストにヒップ、引き締まったウエストと下手なモデル顔負けのボディライン。

 いたずらに服をはぎ取った鈴鹿は服屋では隠れていたココラの姿に言葉を失ってしまった。


「オッ……オウゥ……」

「な、何ですか?」

「いや……ココラがここまで恵まれた体格だとは思ってなかったから。これならモデルとか、グラビアとか行けたんじゃないかと」

「グラビア?」


 よくわかっていないココラが一度首を傾げつつも、元に戻して鈴鹿に返す。


「よくわかりませんが、それを言うなら鈴鹿さんやオーカーさんこそ、すらっとしていて健康的な身体つき。長い手足がとってもセクシーですよ」

「ムムム……」


 ココラが誉め言葉を口にするが、聞いたオーカーはココラのスタイルに嫉妬の目を向けていた。


「お、オーカーさん? どうかしましたか?」

「フンッ! 持つ者に持たざる者の気持ちは何処までいっても相容れないものなのだココラ譲」

「はい?」

「天然なのが、なおさらなんともだ」


 オーカーが嫉妬を向けられてなんと返事をするべきか表情を固まらせていると、背中を見せていた鈴鹿に隙を突かれて下着も剝ぎ取られてしまった。


「ちょっ!!」

「ほら脱がないと体洗えないでしょ。脱いだら片付けてさっさと行く!」

「わわわ! 押さないでください!!」


 服をすべて脱いだ三人が部屋を移動すると、ココラは自分のいた世界には存在しなかった機器に目を丸くして上下左右を何度も見回した。


「な! 何なんですかこの道具!? ここの操作するとか……冷たいっ!!」


 レバーを操作して飛び出したシャワーの水が身体にかかったココラはその冷たさに驚いて身を引いてしまう。


「ああ、ごめん。そういえばココラってシャワーの使い方知らないのよね。アタシが教えるから、同じところに入りましょ」


 そこから先オーカーは少々気恥しく思う羽目になった。

 隣のシャワールームから聞こえてくるココラと鈴鹿の会話。二人にとっては他愛ないものだったのだろうが、はたから聞いていればむず痒いものだったらしい。


「うわ! ココラって髪もサラサラ! ホント隙のない身体してるわね。胸もこんなにあって」


 自然な流れで鈴鹿はココラの胸を救い上げるように触れる。ココラは慣れない場所であることもあってか敏感に反応してしまった。


「ひゃっ! 急に触らないでください鈴鹿さん」

「ほほ~可愛い反応をする。ここがくすぐったいのか? それともここかな?」


 次々体を触る鈴鹿にココラは体を震わせひざを曲げてしまう。


「ひゃんっ! や、止めてください鈴鹿さん。くすぐったいです」

「しょうがないでしょ。ちゃんと全身くまなく石鹸の泡付けないと」

「そうは言いますけど……鈴鹿さん、何処か楽しんでませんか?」


 むず痒い二人の対話に耐え兼ねたオーカーはとうとうツッコミを入れてしまう。


「二人共、もしやわざとやっているのではないか!? こっちまでこそばゆいからやめてくれないか!!」

「「ハッ! ご、ごめんなさい……」」


 いつの間にか二人の世界に入っていた二人はオーカーの声で我に返り、ちゃんと身体を洗うことに専念した。


 数分後。体に付いた泡をシャワーのお湯で洗い流している最中にまたしても鈴鹿から今度は言葉で余計な案件を始められた。


「そういえば二人って、好きな人いる?」

「「ほえっ!!?」」


 この質問にココラはもちろん、オーカーも素の反応で声を出してしまった。


「いきなり何を言うんですか鈴鹿さん!!」

「そうだぞ鈴鹿譲! 唐突にもほどがある!!」


 感情に任せて反論する二人に鈴鹿は女の勘を感じたのか、表情をにやつかせて話を続けた。


「その焦った反応。もしかして二人共いる感じかな?まあ、ココラはいると思ってたけど」

「ええぇ!!? 私は、別に好きな人なんて……」


 とは言いつつも頭の中には一瞬で自分が共に旅をしていた勇者の青年の姿が映し出される。どれだけ言葉で取り繕うとも、本心はやはり思い人の事を振り切れない。

 雷太と話していた時にココラはそのことを心の底から思い知らされた。


 観念したココラは頬を赤くさせ、恥ずかしそうにしながら口を開いた。


「はい……います……忘れたくても、忘れられない人が……」

「おおぉ!! やっぱりね。アンタ気付いてないみたいだけど、時折誰か御思いふけるような心ここにあらずな顔をしてたから」


 ココラの素直な返事に釣られたのか、オーカーも少し間をおいてからゆっくり口を開いた。


「わ……私も……います」


 恥ずかしさからか、口調が素に戻ってしまっているが本人はそれに気づいていないようだ。

 鈴鹿も恋愛話に夢中でオーカーの口調が変わったこと気が付かないまま話を続ける。


「オーカーさんも! どんな人なのか気になるなぁ~」


 茶化す鈴鹿にココラとオーカーは顔をより真っ赤にしていると、先にオーカーが小さい声で返事をした。


「私は……その人と今いる組織の入隊試験のときに出会って、私の変なキャラも受け入れて、出会ってばかりだったのに、命がけで守ってくれたんです。

 言葉にすれば単純だけど、惹かれてしまったんですよね。その人に……」

「へへ~、良いお話!」


 オーカーの話に鈴鹿がワクワクしていると、隣にいるココラがふと呟いた。


「なんだか、私の思う人と似ていますね」

「え?」


 オーカーが興味を示すと、ココラはまた物思いにふけた様子で語った。


「私の思う人も、誰彼構わず率先して助けに行って、本当なら巻き込まれるはずのなかったことにも自分から参加して、活躍して……私も仲間も、何度彼に助けてもらったのか……」

「ココラ……」


 そばにいる鈴鹿がまたココラが暗くなりかけていることに気付いて何か励ましの台詞を考えたが、その前にココラが自分から話を続けた。


「だから彼の願いを叶えるためなら離れ離れになっても構わない。そう思って……いや、自分に思い聞かせていました。

 でも雷太さんとの話して、気づかされました。思いを封じたくても出来るもんじゃない。私はそれだけ彼の事を思ってしまっているって」


 鈴鹿は自分の心配が杞憂だったことを思い知らされた。ココラは落ち込んでなどいない、むしろ心の中でつっかえていたものが外れたような、文字通り洗われて爽快といったような顔つきになっていた。


「だから私、決めました!」

「決めた?」

「何をですか?」

「ん? オーカーさん、さっきから口調随分と丁寧になってない?」

「はえっ!? あ、いやこれはその……何の事だ鈴鹿譲?」

「あ、戻った」


 オーカーの態度の急変からのツッコミ。どこかツボに入ったのか鈴鹿とココラは思わず笑いだしてしまう。


「ナッ! 笑うでないぞ二人共」

「ご、ごめんなさい。でもなんだか可愛くて」

「うんうん、そっちのキャラもいいと思う。個人の自由だから強制はしないけどさ」

「もう……止めてくれ二人共」


 笑い声が響くシャワールーム。女性陣がしょうもないながらも楽しくやり取りを行いながら体を洗っていた。


 その一方で、社内の廊下の一角では、フジヤマが周囲に人がいないことを確認しつつスマートフォン型のデバイスを使って誰かと連絡を行っていた。


「以上が報告です。事件の犯人は兵器獣にやられて情報を聞き出せなかったことが残念です」

「そう自分を悔やむな。その世界でのテロは阻止された。十分な成果だ」

「ありがとうございます、タイタン隊長」


 フジヤマが通信をしていた相手は、彼とオーカーが所属する次警隊四番隊の隊長『ジーアス タイタン』だ。

 ジーアスはフジヤマの仕事を称賛したが、フジヤマの方はどうにも引っかかっている様子だ。


「どうにも何か気になるのか?」

「はい」


 フジヤマはジーアスに自分が思っている事を正直に話した。


「今回の事件。宇高雷太の証言、何より兵器獣が出来てた事から明らかに星間帝国が絡んでいます。

 だが奴らがわざわざこの世界の住民にシステムを譲渡して扱わせた理由が分からない」

「確かにな……」


 フジヤマ達が今いるゲームの世界は他の異世界との交流はなく、調査したところネオニウムなどの資源も見当たらない。正直星間帝国が侵略する理由が思い当たらないのだ。


「フジヤマ。君は今回の件、何が目的だと思う?」


 ジーアスは賢い。この程度の事ならすぐに看破してもおかしくないのだが、彼はフジヤマの成長のために敢えて答えさせてくれているのだろう。

 フジヤマは考えた。だがやはり現場にいた彼にとって真っ先に思い浮かぶ仮説は一つだった。


「実験……だと思いますね。俺が元々いた魚人の世界にもあった量産型の兵器獣。今回の件はそれを小型機器によってどこまで操れるか。

 星間帝国が最終的に何かを起こすかは分かりませんが、今回の件はそのための実証実験。前準備だったのではないかと」


 静かにフジヤマの仮説を聞いたジーアスはこれに頷き、肯定した。


「私も同意見だ。当然例外もあるだろうが、今はそう考えるのが一番納得だろう」


 二人の間に少し重たい沈黙が流れる。ジーアスが再び口を開いてフジヤマに話したのは、二人がいた忍者の世界で起こった事件の事だ。


「以前入隊試験の折に侵入して来た星間帝国の刺客。それを手引きした裏切り者。その一人は捕まえても敵に始末されてしまい、情報は一切というほどない。

 内通者も一人ではないだろう。ここだけの話、一人やられた事に気付かれたのか隊から逃げ出した奴がいるらしいしな」

「それ、俺に言っていいんですか?」

「ハハハ、当然秘密案件だ。だが君は赤服との関わりが深い。そして信頼できる。少し漏らしたまでの事だ」

「大事になったら俺も動けってことですか」

「不満か?」

「いや、当然引き受けます。報告もまた細かく」


 フジヤマは通信を切ると、少し距離のある窓の外の遠くを見るような目つきになる。


(その大事が俺を狙っているのなら全然構わないのだが……どうにも悪い気がしてならないな)


 フジヤマの胸の内には今回の事件に対する不安が残ってしまう結果になった。

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