1-12 勇者の一撃
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予想外の人物の登場。その場の空気が一変し、敵も味方も揃って彼に注目する。
その彼は引っ張っていたランをその場に降ろすと、自身もバイクに似ながらも、二輪部分に車輪がなく、その代わりに小型のスラスターが並び、車体全体を浮かせている奇っ怪な乗り物から降りた。
「お前、これは……」
ランがその乗り物に見覚えがあるようなことを言うと、幸助は重荷が外れたような明るい表情で軽い口を開いた。
「あの子に貸して貰ったんだ。凄いな、起動してハンドルを握っただけでここまでひとっ飛びだったよ……」
「俺のブレスレットの座標を追ったんだろう。アイツとは常に繋がっているからな」
ランはその場に足を付けてしゃがみながら隣の幸助を見た。
一目で見ても彼には幸助の心情の変化が読み取れた。そこで彼はわざと幸助に聞いてみる。
「仲間が死んで凹んでたんじゃないのか?」
「誰の死体も見ていないんでね。証拠がないなら前向きに考えた方がいいだろ?」
「フフッ……分かってるじゃねえか」
調子よく返事をしてきた幸助を見て小さくニヤけながら立ち上がると、ハンドガンをホルダーにしまって剣を右手に持ち直し、その場から相手二人を見下ろす。
「砲弾自体は俺もお前も多少喰らったところで持つだろうが、間合いに入ると必ず光の壁が出てこっちの攻撃を防いでくる。持久戦になればキツいぞ。コタロウ君」
「幸助だ。あれはココラの聖壁、俺と同じ力の片鱗だ。なら俺なら破れるかもしれない。ただそれだと、技を出すのに時間がかかる。今は剣が折れているから照準も合わせづらい……」
幸助は刃の折れた剣を強く握り、ランもそこに視線を向けるが、すぐに前に戻して彼の左肩に手を置いた。
「十分だ。時間稼ぎは俺がする。とはいえじっとするのも無しだ。あの男に女達のときと同じく攫われるぞ。コジロウ君」
「幸助だ! 油断はしないでおくよ」
と二人が会話をしている間に兵器獣は既に左腕のナイフを振り上げており、その刃は白い光を纏っている。
「アーコの術だ! 避けろ!!」
幸助の声にランもすぐに反応してバイクにまたがり、二人は左右にばらけて兵器獣の放った巨大な斬撃を回避した。
直後、さっきまで二人が立っていた廃虚は縦に真っ二つになるだけに収まらずに傷んだ建物そのものを粉々にした。
「何だあれ!?」
「アーコの刃弾だ。でもここまで巨大なのは初めて見た。俺達でも喰らったら真っ二つだ」
「コウタロウの首がすっ飛んだってか?」
「幸助だって言ってるだろ!! いい加減覚えろよ何度も名乗ってんだから!!」
「ツッコんでいる暇はなさそうだぞ!!」
ランの声かけの直後に幸助へ向けて兵器獣のミサイルが飛ばされる。
折れている剣を下手に使えば完全に使い物にならなくなるのを恐れた彼が動きに迷うとすぐに砲弾は距離を詰めてくる。
「しまっ!!……」
「フンッ!!」
敵の攻撃が当たりかけた直前、幸助の前に移動したランが武器を思いっ切り振り、砲弾を弾き飛ばしてクーラの近くに爆発させた。
「ガッ!!……」
避けきれなかったクーラは受け身を取るも、これ以上自身を傷つけたくないのか兵器獣の後ろに下がった。
幸助はそのときランの武器が剣から野球のバットに変わっているのを見る。
「それ、野球の……」
「後ろに乗って力を溜めとけ。連中の攻撃は俺が防いでおく」
目線も向けずに武器のない右手の親指で座席を差す。
少々シュールなランの出で立ちに困惑する幸助だが、余裕もない彼は素直に従ってバイクの後部座席にまたがる。
ランは一瞬後ろを見て確認をするとアクセルを回してバイクを走らせた。
「オワアァァァ!!!」
勢いに振り落とされそうになるもどうにか耐え、幸助は体勢を整わせながら剣の持ち手を両手で強く握り、技を放つ準備を始めた。
兵器獣はそれを防ごうと追撃をかけてくる。ランはバイクを器用に運転してかわすも、後ろで揺らされる幸助は体勢を維持するのにかなり苦労していた。
「ウオアァ! グオアァ!! もうちょい安定して運転できないのかよ!?」
「敵の攻撃避けながら悪路を飛ばしてるんだぞ! 文句を言うな!! ……ッン!!」
次にランは音で風爪を感知して更に速度を上げる。彼等が過ぎたすぐ後、地面の瓦礫に大きな亀裂が入る。
「風爪か!?」
「集中しろ!!」
「オウッ!!」
前方にいるランからの注意に気を引き締められた幸助は持ち手をより強く握り、剣に力を送り続ける。
ランは幸助の準備が整うのを待ちながら彼に向かうミサイルや斬撃を弾き続けていた。
「ラ……ド、ソレ、シ……」
ランはここでもまるで砲弾の当たるタイミングを予知するかのようにタイミングぴったりにバットを振って弾き返し、斬撃は紙一重で回避していた。
じれったく思ったクーラは後ろへ下がりつつも兵器獣に指示を飛ばし、再び大量の砲口を発光させ、一斉射撃してきた。
「来たか……だが今度はそれに怯むことはない!!」
ランは剣を逆手持ちしてバイクのハンドル中央部にあるキーボードにパスコードの四つを打ち込んだ。
するとバイクの先端部、及び両端から折りたたまれていた機関銃が出現し、同時に複数のミサイルを迎撃した。
次々と照準を変え反撃する装備に砲弾の数が切れ、そのまま機関銃で兵器獣本体を攻撃しにかかったが、そちらはまた聖壁によって防がれてしまう。
このとき、彼等の方のタイミングもかち合ったようだ。
「溜まった! いけるぞ!!」
「よっしゃ! かましてこい!!」
ランはバイクを操作して前屈みにし、幸助は足場を蹴って空中に飛んだ。
(何かする気か? そうはさせん!!)
危機を感じたクーラは幸助の攻撃を防ごうと隠れていた姿を現してブレスレットの装飾から誘拐光線を撃ち出した。
しかしその光線は幸助に命中する前に飛んできた緑色のレーザーに衝突し、相殺された。
「何っ!?」
クーラがまさかと視線を向けると、右手でバイクの姿勢を戻しながらも剣を口に咥え、左手に持ったハンドガンを向けているランがいた。
「貴様!!」
この一瞬を防ぐ内に幸助は七色に輝く剣を振り下ろし、兵器獣に向かって魔術を繰り出した。
「<七光衝波>!!!」
剣から解き放たれた光線は前回のものとは比べものにならないほど大きくなり、クーラは危機を悟ってその場から逃げ出した。
光線は一目散に兵器獣に向かって行くが、これもまた寸前に発生した聖壁に押さえられてしまう。
クーラは移動した場所から安堵したように肩を下ろしてまた彼等に罵声を飛ばした。
「フフッ……悪だくみも失敗だったようだな!!」
罵倒を受けてもランと幸助が表情を変える様子はない。そしてその意味をすぐに証明するように攻撃を阻んでいた聖壁にヒビが入った。
ヒビは途端に広がっていき、光線の威力に耐えきれなくなる。
「馬鹿な!!」
「ウオオオオオオオオオオォォォォォォォォォ!!!!!」
幸助の必死の叫びに同調し、光線が更に溢れ出ると、光線を受けた聖壁はとうとう砕け散り、その先にいる兵器獣に直撃させた。
障壁を壊しても尚続く攻撃はつぎはぎの身体の兵器獣にかなり堪える。
「よしっ! これっ……でっ……」
しかしそう事は上手く運ばない。やはり病み上がりの身体に折れた剣で大技を噴出させるのは無理があったらしい。
おおっぴらに光線が広がっていたのも強化のためではなく、凝縮できなかった光線の一部が霧散したものだった。
幸助はあと一歩の所で力尽きてしまい、光線も止まって瓦礫の中に落ちていく。
「クソッ……こんなところで……」
肝を冷やしたクーラだったが安心して彼にトドメを刺そうと兵器獣に追撃を指示する。
「よし! 今度こそ終わりに……」
クーラの言葉通り、兵器獣が攻撃にかかろうとしたとき、落ちる幸助の後ろから兵器獣に迫る青い恐竜の頭が現れた。
「ッン!!」
この場にいる全員がこれに見覚えがあった。ランが恐竜の世界の結晶を使って放つ斬撃技だ。
ランは幸助の攻撃で仕留めきれなかったときの二撃目としてバイクの足場に立ち上がり、剣に結晶を当てて自身の技の準備も行なっていたのだ。
「油断したな、でかぶつ」
幸助にトドメを刺そうと攻撃に動いていた兵器獣はランの攻撃に対応しきれず、まともに直撃してしまう。
「グガアアアアアアアァァァァァァァ!!!……ガアァ……アアァ……」
轟音の雄叫びを上げながらも、故障した機体のように声が途切れていく兵器獣。
次にその場の全員が見たものは、立て続けの攻撃に耐えきれなかった兵器獣の、右肩から左腰までが大きく食いちぎられたように消え去り、真っ二つになっている姿だった。
目から光も消え去り、完全に絶命、機能停止した状態になっている。
「ナッ!……そんな……」
そのまま瓦礫の山に自由落下する幸助。ランはすぐに座席へ腰を戻してハンドルを両手で握り、地面に激突する前の幸助を先程彼にやられたのと同じ方法で救出した。
「ウゴッ!!……首が絞まる……」
「我慢しろ、というかこれで俺の気分も分かっただろ……」
そのまま無事に地面に着陸した二人。対してクーラは自身の用意した兵器獣が今度こそ完全に破壊されてしまった事実にかなり動揺している。
「そんな……私の兵器獣が……」
こうなっては為す術がない。そう考えたクーラはブレスレットを自身の前にかざし、目の前の空間を以前と同じように割って異空間に繋いだ。
(クッ……仕方がない。ここは一度態勢を立て直す!!)
ランたちに知られない間に空間をくぐり、すぐに割れた部分を修復して門を閉じた。
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そして空間内にて立ち止まり、焦りによる荒い息を整えるクーラ。動揺のあまりランと幸助に対する愚痴が口からこぼれる。
「おのれ……あの虫共が……被検体はまだあるんだ、次に出す兵器獣で必ず……」
「俺らの首を取るってか?」
「ッン!!?」
クーラは自分しか話す者がいないはずのこの場所で後ろから問いかける声が聞こえてきた事に更に表情を引きつって動揺する。
それも聞こえた声は鮮明に聞き覚えのあるものだ。
「そんな……まさか……」
クーラが恐る恐る後ろを振り返ると、剣を構えているランとその後ろに控える幸助の姿があった。
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