1-0 俺より先に魔王を倒した奴
以前投稿した短編作品『異世界転生者の俺より先に魔王を倒した奴についていったら別の異世界に来てしまった!!』の連載版です。
短編では描ききれなかった『何でもあり』の世界観を出すのでお楽しみに!!
勇者は、その心にもった覚悟や勇気を根底から打ち砕かれる強い衝撃を受けた。
日本の一般的な家庭に生まれ、ごく普通の高校生にまで成長した彼だったが、突然の事故により、その世界での人生があっという間に終了してしまった。
しかし不思議なことにその魂は異世界へと転生し、生まれた世界で俗に言う『チート』な力を手に入れ、人のいい性格だった彼は世界を救う勇者として旅をしていた。
そうしてとうとうこの世界の危機の元凶である魔王と相対するときが来た。彼がそう思って覚悟を決めていた矢先、その覚悟は目の前に見えた光景によってあっさりと打ち砕かれてしまった。
「チッ、ここも外れか」
「エッ?」
勇者が様々な旅を経験し、その集大成として戦い、倒すはずだった魔王。
彼の目の前には、その最悪であり、人々が忌むべき存在が既に息絶えてうつ伏せになり、その巨大な遺体の上には、白いローブに全身を包み込んだ一人の青年が、ため息をつき、疲労した様子で座り込んでいた。
勇者が倒すはずだった魔王が、彼よりも前に別の誰かに倒されていたのだ。
「お前! 何者だ!?」
「俺は……風来坊だ」
これが、風来坊『ラン』と勇者『コウスケ』の出会い。
そして、これから始まる単なる異世界にはとどまらない、いくつもの世界を渡る壮大な冒険の始まりとなった。