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【第50話】私のお兄様は、鬼い様だったようです

お待たせいたしました( ˘ω˘ )

波乱の50話です



「カイン様、どういうおつもりだったのでしょう?……炎の魔法を発現し、我々の近くに居たのは貴方だけだ。言い逃れはできませんぞ!」

「……調子に乗った醜い者を黙らせようと思っただけで、アメリア嬢に危害を加えるつもりなどなかった!」


底冷えのするような低い声で問いかけるお父様に答えたカインの言い分は、耳を疑いたくなるようなものだった。

お兄様に魔法を撃つ事に対しては、悪いと思ってないというような口ぶりにも、空いた口が塞がらない。


(頭おかしいんじゃない?!!黙らせるって何?!殺すって事?!!あの威力はちょっと静かになるようなものじゃなかった!!見えてないから分からないけど、背中の痛みは尋常じゃぁなかったぞ!!)


「なんですと…?貴方も見た通り、人が死んでもおかしく無い威力だった。黙らせると言うのは、殺すつもりだったと受け取ってよろしいか?……その上、ユリシスになら魔法を当てても良いとお考えか?!!」

「待ちたまえ、ハワード侯爵。うちの息子が魔法を放ったらしいが、殺すつもりだったとは思えない。直撃させるつもりだったのかも分からぬ上、現にアメリア嬢は治癒できているでは無いか」


私と同じように受け取ったお父様の追求に、マルセール公が割って入る。


「治ったからいいと言う問題でも無いですし、普通ならばこのように治るような負傷ではなかった!!アメリアが庇わなければ、ユリシスが重症を負ったでしょうし、ユリシスの治癒が奇跡的な回復力があったから助かっただけです!!アメリアは命懸けの治癒魔法でも治癒しきれぬような傷を負っていたのですぞ!!」


お父様はもう、相手が公爵だろうと譲らぬという強い口調で責め立てた。

その勢いに、流石に顔色を変えた公爵がカインに問いかける。


「……カイン、どうなのだ?私はお前が魔法を使うところを見て居ない。本当にそんな威力で、直撃を狙って放ったのか?」


カツンッー!!


そこへ床に固いものを打ちつけるような音が響いた。

この場にいた全員が、音の方を向いた。


「炎魔法を受けた重症者が居ると聞いたが…どこか?」


響いた音は、杖で床を突いた音だったようで、会場の入り口に、先ほど儀式を担当していた大司教が、錫杖のような杖をついて立っていた。


「大司教殿……」


マルセール公が苦虫を噛み潰したような顔で、大司教を見た。

その声にマルセール公を見やった大司教は、事情を察して居るかのように、厳しい目を向けていた。


「よもや、魔法を授かったその日に、人に害をなすような者が居たのではあるまいな?炎魔法という事は……マルセール家の者の行いかね?……私は、重症者はどこか?と聞いて居る」

「……ハワード家の令嬢だ」


貴族の信仰を集める教会の大司教というのは、公爵家にすら、かなり強く出られる立場のようだ。


(……それで公爵が嫌そうな顔をしてたのか)


「大司教様、当家の娘が重症だったのですが、治癒は既に終わっておりますわ…。駆けつけて頂き、感謝申し上げます」

「…そうかね。なるほど、ハワード夫人が治癒されたのかな?重症と聞いていたのだが、治し切れたのかね?」


大司教は、かなり家毎の魔法特性を把握して居るようだ。

そして、温和そうに見えるのに、圧がすごい。


「いいえ……。(わたくし)ではとても完治など出来るような傷では無かったのです…。ですが、ユリシスが授かった神聖特性の魔法で治癒を試みたところ、なんとか完治が叶ったのです」

「……ほう。神聖特性か。それならば治癒も出来よう……。しかし、授かったその日に重症者を治癒し切るとは、よくぞ出来たものだ…。令嬢が無事で何よりであった」

「はい。ありがとう存じます」


(それなっ!!神聖特性も凄いけど、やっぱりお兄様が凄いのだ!!)


心強い味方らしい大司教の登場に、すっかり観戦気分になってしまう楽観的な私である。

カインを懲らしめられるなら、誰がやってくれてもいい。

そして、お兄様が褒められるのは嬉しい。


「して、誰がなぜ、炎魔法を人へ向けたのか?」


先ほどまでは、言い逃れできると高を括っている様な顔をしていたカインが、真っ青になって固まって居た。


侯爵家と公爵家なら、言い逃れのチャンスがあると踏んでいたところに、教会の重鎮が現れて、逃げ場がなくなってしまったのだろう。


大司教の問いにはお父様が答えた。


「カイン様が、当家のユリシスを攻撃したのです。それを庇ったアメリアが重傷を負いました。…先ほど聞いたところ、”調子に乗った醜い者を黙らせようとした“と申しておりました」

「……そうか。ではカイン・マルセール。こちらに出なさい。公爵もだ」


二人は聴衆が遠巻きに注目する中、大司教の前へ進み出た。


「カイン・マルセールよ、ハワード侯爵の言ったことは事実か?魔法を無闇に振るってはならぬと、先ほど言ったばかりであろう。事もあろうに、人に向けて放つなど……許されぬよ」

「……す、少し特別な魔法を授かったからと、醜い者が騒いでいたので、黙らせようと思っただけです。アメリア嬢が変に庇ったのが悪いのですよ!」


(……は???私が悪いってなんなの?!)


イライラ度が跳ね上がってカインを睨んでいると、お兄様が私を抱きかかえたまま立ち上がった。

ちょっとビックリして、咄嗟にお兄様の首に掴まる。

そして至近距離のお兄様を見て固まってしまった。


(……お兄様が…。お兄様の表情(かお)が……ヤバイ……)


「カイン・マルセール…。僕を庇ったアメリアが……悪い…だと?……許さない。君だけは絶対に許さないよ……」


激昂したお兄様は、私を抱えて居ない方の手に、実寸大の杖を握っていた。


(いつの間に?!って言うか、片手で抱き上げるって凄いな?!)


そんな事に驚いていると、お兄様は関節が白く色を変えるほど強く握った杖を、ゆっくりとカインに向けた。


(ええええええっ!まって?!何するの?!)


「おっ、おに、お兄様っ?!」

「ユリシス・ハワード!やめぬか!!何をするつもりだ!」

「「ユリシス!」」


私もビビったが、大司教も両親も焦った声をあげる。


「いいえ。僕はたとえ罰を受けようとも、彼を許さない!」



キーーーーーンッ!!


耳を突き抜けるような澄んだ音を響かせて、お兄様の杖が白く光る。

その先端は、直視で出来ない程の眩しさの光を宿していた。


(ななな、何これ?!ヤバくない?!攻撃?!止める?!)


まず、神聖魔法で何ができるのかが分からないので、お兄様のイメージで撃つ魔法の威力も効果も、私達には分かるはずもない。

大混乱しながら、お兄様にしがみつく。


「お、お兄様!お兄様が罰を受けるのはだめですよ!!やめてください!!」

「……ごめんね、アメリア。僕は、やめないよ…」


(いっやあああっ!!私のイケメンの決意が固すぎるうう!)


公爵がカインとお兄様の間に割って入ったが、その顔には恐怖と焦りが浮かんでいた。

魔力量9の未知の魔法に冷静になどなれるはずもない。


もしかしたら、公爵が逆に先制攻撃して来たらと思うと、気が気では無い。

焦ってキョロキョロしていると、お兄様だけで無く、カインの周りも光って居る事に気がついた。


ワタワタとするカインの胸の辺りに、直径1メートル程の、円盤型の白い魔法陣のようなものが浮かび上がり、強く輝いていた。


「なんだこれは?!やめろっ!!」


そこで全員の視線がカインへ向けられた。


(それって死んじゃうやつじゃ無い?!)


「君には、二度とあんなことはさせないよ。……アメリアを傷付けた報いを受けてもらう……」


そうお兄様が言い切ると、魔法陣がカインの胸の中心に向かって収縮していく。


「ぐあぁぁあぁあっ!!!」


苦しそうな声を上げるカインを、全員が見守るしか出来ない。

なんの魔法かもわからず、既に発動した未知の魔法の止め方などわからないのだ。


「苦しぃいぃああっーー……!!」


遂に魔法陣がカインの胸へと収縮し切ると、心臓の辺りで強く光って消えた。


光が収まったと同時にへたり込んだカインは、外から見た分には、なんともなっていないし、既に苦しそうにはしていなかった。


(……失敗?それとも手加減??)


「………」

「………な、に?何をした?!」


無言で蹲るカインに公爵が駆け寄り、お兄様を睨んで怒鳴った。


「彼には、もう二度と人間を攻撃出来ないようにと魔力を込めただけですよ。初めてやった事なので、結果は僕にもわかりません。どうなったのかは彼自身に確認してみては?」


(ひえええっ!お兄様ってば、割と無責任っていうか、容赦なさすぎる…!どうなるかも分からずにやったって……鬼の所業では……?)


確かに、罰を受ける覚悟でやるとは言っていたが、まさかの返答に、空いた口が塞がらない。


「なんだと?!!……カイン!大丈夫か?!カイン!…何か分からないか?!どうすればいい!カイン!」


カインの肩を揺さぶりながら問いかける公爵に、カインは揺すられながらもしばらく呆然としていたが、公爵の顔を見ると泣き出した。


「……父上…。わかっ…、わかりませんっ!宿っていた魔力を感じられなくなったのです!!僕はどうなってしまったのですか!?」

「なんだと……?」


泣きながら訴えるカインに、公爵、そして大司教を含めた大勢が呆然とする。


(まさか……魔力を封印した的な……?)


中二病な私の脳が弾き出した答えはこれだった。


確かに、お兄様は二度と人を攻撃出来ないように魔力を込めたと言ったが、そんな事が出来るなんて、神聖魔法がチートすぎる。

治癒特性より万能だろうなと思ってはいたが、想像を超え過ぎていた。


なぜなら、この世界の人間は、一つの魔法特性を持つだけのはずだから。

確かに、炎魔法を例に考えても、種火を起こす魔法から攻撃魔法など、幅があるには有るのだろうけど、これは幅というにはあまりにも広すぎる。


皆が呆然とするのも当然である。



「……ユリシス・ハワード。何をイメージして神聖魔法を使ったのだ?」


呆然としていた大司教も、いつの間にか我にかえっていたようで、お兄様に問いかけた。


「二度とこんな事が出来ないように、彼の魔法を閉じ込めようとイメージしました」

「……なんと……。それは魔法自体を封じたということか?」

「もし彼が魔法自体が使えないと言うのなら、そうなのだと思います。イメージはお話しできますが、初めての事なので結果までは把握出来ていません。二度目は許さない…と、それだけを考えていました。……僕が人に魔法を向けたのは事実です。罰があるなら受けます」


(お兄様がマジでヤバイ……。どうしよう!どうしよう?!お兄様が犯罪で捕まるなんて、嫌だあああ!!!)


「……なんという事か。……まずはカイン・マルセールの状態の確認をし、その行いも精査する。その結果によって、ユリシス・ハワードの今後について考える事とする。国王へも報告せねばならぬので、今すぐに答えは出ぬ。ハワード家とマルセール家の者はそれぞれ別室に移りなさい。その他の皆は、診断が終わり次第解散でよろしい」


そう大司教が言い渡すと、周りの親子がざわめく中、それぞれ違う大司教の付人に先導されて、ハワード家とマルセール家は会場を出た。



(これ、どうなっちゃうのーーーーーーーっ?!)


読んで頂き、ありがとうございます( ˊ̱˂˃ˋ̱ )


ブックマーク・☆評価・イイね!して頂き、ありがとうございます。

とても励みになります( ˘ω˘ )g

書け次第投稿していきますので、不定期更新ですが次回もよろしくお願いします(*´꒳`*)


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