【第39話】私、推しと恋愛は別だと思います
体調不良により、遅くなってしまいました。
お待たせいたしました(´;ω;`)
私はベンチに来てから、この最高の状況で固い言葉しか使えない事に、大変な歯痒さを感じていた。
そこで、思い切った行動に出る。
「アニー!私達はこれから、例の暗号を交えて話すから、多少おかしな言葉遣いや、よく分からない単語があっても目を瞑ってちょうだい。勿論、暗号なんだから他言無用よ?」
「!!承知いたしました」
アニーは、重要任務でも受けるかのような真剣な顔で頷いた。
アニーほど忠誠心の塊と呼べる人間を、私は他に知らない。
こんなこと言わなくても、他言無用と言うだけで、アニーは絶対にここでの会話を、他へ漏らしたりはしないだろう。
だから暗号云々は、前世の言葉を使う事への、ただの言い訳のようなものだ。
先日ミーナに送った日本語での手紙に、「他の人に読まれても解らないよう、暗号代わりに日本語で書きます」と書いておいたので、暗号=日本語だと言う事は、ミーナにも伝わる。
ミーナは目を見開いて、やがてなるほど…とばかりに頷いた。
「口調は今までのままで、用語だけでも暗号を使うようにすれば、多少不自然でも、私達にとっては話しやすくなると思うわ!」
「そうね…それなら言いたい事が伝えやすくなるかもしれないわね!」
ミーナにも私がやりたい事が伝わったようだ。
「ええ!では、お兄様達が休憩に入るまでは、暗号表現ありで行きましょう!」
「うん!」
こうして、我慢の足りない私の提案で、オタ用語や現代日本語を交える、令嬢口調のオタクが二人誕生した。
「ミーナって、結構リアルにウェイバー卿狙ってる?」
「うん。初対面だけど、わりとマジよ。だって、私ってリアよりも上だったでしょう?だから、20歳より上で30歳に近い年齢の方が、気持ち的にもねぇ……」
前世で私より5つ年上だったミーナは、今の私達の同年代よりも、転生前の年齢に、より近い男性の方が違和感なく恋愛対象に出来るという事だろう。
「……わかるわ」
実際の恋愛対象と差異のないキャラクターや芸能人しか推さない人は別だが、確かに推しと恋愛対象は別物だ。
自分よりも圧倒的に年下だろうとカッコよく見えたり、好きになったり出来るのは、二次元限定だった。
25歳だった私も、漫画やアニメなどでは、高校生位の年齢のイケメン登場人物に、ときめいたり憧れたりした。
でも、実際の高校生と付き合いたいと思ったことは、一度もない。
実際の高校生なぞ、25歳からすれば、犯罪という壁すら有る“子供”という認識だった。
余談にはなるが、私の場合、二次元での設定だからこそ推せる性格設定もあったくらいだ。
どSとか、ヤンデレとか、リアルに居たら痛いレベルのナルシストなどが、それにあたる。
リアルでそんな性格だと、実際の私とは全く合わないだろう。
少々脱線したが、そう言う事なのである。
いくら身体が6歳児でも、精神年齢の主張の方が圧倒的に強い私達は、恋愛対象がそちらに引っ張られるので、“今既に大人”だと言うことは大きい。
精神的な罪悪感がないから。
だだこれには、相手にとっては逆に、私達が“小さな子供”という落とし穴があるけども。
「私達の同年代が大人になるまで待とうと思ったら、10年以上かかるわ……それまで待ってたら、とっくに望まない婚約をさせられて、なんなら結婚してるなんて事もあり得るのよ……」
「そ、そうよね……特にミーナは今のところ後継ぎだから、婚約の打診も早いでしょうね」
多少は駄々のこねやすい私の立場とは違って、後継ぎという立場のミーナには残された時間が短い。
ミーナは私よりも精神的に大人なので、後継ぎに対する責任も重く受け止めているのだろう。
その中で、好きな人と結婚したいという希望を叶えるなら、実年齢の差よりも“すぐにでも恋愛対象に思える”相手が望ましい。
「ライオネル卿は20代前半に見えるから、かなり無理ゲーかもしれないわ。だけど、すっごく好みのタイプなのよ!彼を逃したら、また次いつ好きになれそうな人に出会えるか分からないわ」
「……そうねぇ。だけどミーナが20歳の時、ウェイバー卿は40歳手前よ?そこも大丈夫そうなの?」
そんな事は分かってるだろうが、一応聞くと、キリリと頷いてサムズアップするミーナ。
「イケオジも推せるわ!」
凄くいい顔だった。
「それなら私も応援する!できる事は少ないけど、ミーナが来た時は、絶対に稽古の見学にきましょうね!」
「リアっ……!貴女ってばなんていい人なの?!私頑張るわ!」
ヒッシと抱き合う私達。
「ウェイバー卿は結婚の予定もないって言ってたじゃない?だから、ミーナが婚約や結婚する年になっても、独り身の可能性は大いにあるわ!」
「いくら敬遠される見た目とはいえ、私達みたいな娘が居ないとも限らないじゃない?だから、私がガードするわ!押して押して押しまくって、他の娘が入る隙なんて与えないわ!」
「ミーナってば積極的ねぇ!」
「勿論守り切った暁には、責任を持って美味しくいただきます」
そう言ったミーナはゲス顔だった。
(ちょ、顔っ!)
「その顔でその表情はヤバイわミーナ」
「あ、あら!オホホホホ!」
そんなやり取りをしていると、お兄様達がこちらに向かって歩いてくるのが見えた。
すると、すかさずアニーは私にタオルを渡し、ミーナにはおしぼりを渡した。
(で、できるっ!流石アニー!)
ウェイバー卿は、相変わらず流すような汗はかいていないが、手を清めるためのおしぼりなら、使ってくれるだろう。
テーブルに置いておけば使うだろうが、ミーナに少しでも接点を持たせる為の心配りだった。
「お兄様、私が拭きますわ」
「う、うん。ありがとう」
(あーイケメンをタオルで包んでヨシヨシ最高っ)
私は、なし崩し的に恒例にした、お兄様の汗を拭うイベントを楽しみながらも、ミーナのやり取りに聞き耳をたてる。
(ミーナ、頑張って!)
「ライオネル卿、お疲れ様でした。こちらをお使いになって下さいませ」
「ミ、ミーナ嬢、ありがとう御座います」
敬称付きではあるが、ミーナと呼ばれて嬉しそうなミーナが可愛い。
だが、その攻めの手は可愛いを通り越していた。
「ライオネル卿は、手も綺麗なのですね。はぁ……バランスよく細長い指に整った爪。男性的な色気もお有りですわ。この、甲に浮き出た血管も素敵……」
「……………」
(セクハラじゃない??!それ大丈夫なやつ??!)
遂にウェイバー卿も、声がでない様子だ。
ウェイバー卿が手を拭くのをうっとり見つめながら、ミーナは褒め言葉を並べているようだが、少々官能的に聞こえてしまうのは、私が汚れた大人だからだろうか?
でも、褒められているだけにしては、ウェイバー卿反応が激しすぎる。
(人間、そこまで真っ赤になれるものなのか……!?)
ウェイバー卿は真っ赤になって俯いて、少し震えていた。
6歳児にセクハラされて震える20代男性という、なんとも言えない構図だ。
「アメリア、ウェイバー卿は大丈夫だろうか……」
やり取りが聞こえて、お兄様も気になったのだろう。
「大丈夫ではないかもしれませんが、ウェイバー卿も不快感を示されてるというより、羞恥に耐えているように見えますので、慣れれば大丈夫かと……」
「僕もいまだにアメリアの賛辞に慣れないのに……大丈夫だといいけど」
「ウェイバー卿も、大人の男性ですので、子供の言う事だと思ってくだされば、なんとかなりますわ!きっと!」
(無理そうだけどっ!)
ミーナの味方な私は、そんな無責任な事を言いつつ、お兄様とテーブルに着くのだった。
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