【第26話】私の絵と、お兄様からの誕生日プレゼント
大暴走が止まらない26話です!
悪魔的破壊力の笑顔をみて、頭パーンした私だったが、お兄様にファンアートを持って帰ってもらたい願望で、何とか立ち直る。
「こちらから順に説明いたしますわね」
「うん、ありがとう。それにしてもアメリアの絵は……何と言うか斬新?だね。初めて見る画風だね。まるで動いているところを切り取ったようだ」
(やっぱり天才でしかないわ!好き!)
「お分かりいただけますか?!私の描きたい絵は、まさにその通り、美しい一瞬を切り取ったように表現する事なのです!」
「うん、よく描けているね。それに……不思議と僕なのに嫌悪感が薄い気がするよ」
(んー、お兄様はやっぱり、自分でも自分に嫌悪感があるのか……でも絵なら見ても嫌じゃないのなら、嫌がらせにならなくて、よかった)
最初に紹介するのは、風に髪を揺らせて微笑むお兄様だ。
ガゼボで寝ていたお兄様を思い出し、起きた後の瞳や眩しそうに目を細めたところから、笑顔を導き出すと言うか……結局のところ妄想して、それを再現した形だ。
「ガゼボで見た風にそよぐお兄様の美しい髪を表現したかったのと、笑ったらきっとこんな美しさだろうという、ときめきを込めました!」
「んン、期待じゃなくて、と……ときめき?なんだね……」
真っ赤になってツッコミを入れてくるお兄様が尊いが、引かれてはいけない!
(言い訳して、言い訳……)
「つ、つまり!笑顔を想像すると、ときめくと言う事です!間違えてしまいましたっ!」
「……あんまり変わってないと思うけど、理解したよ、うん」
(ダメだったみたいです!)
これはいかん、次の絵にうつって話題を変えるべきである。
「では次の絵に移りますね」
「うん」
こちらは、支配者のポーズをとっている、イケイケお兄様の妄想画である。
子供ながらに整いすぎたその容姿は、時に冷酷にもみえるだろうと言う発想から描いたものだ。
中二病患者には支配者のポーズは避けて通れないという症状もあるのだと、そう思ってもらっても構わない。
「こちらはですね、最初に言っておきますが、決してお兄様が怖いと言う事ではありません!美しい顔は、時には冷酷に映るのではという憧れをこめて描きました!」
「……うん。冷酷な顔に憧れるのは分からないけれど、強そうなポーズだね」
「くぅぅ!お分かりいただけませんか?!支配者のポーズとは!支配者にのみ許されたポーズであり、その支配下に置かれたいっ!とゾクゾクするものなのです!」
「う、うん?つまり僕は許されたって事で……いいかな?」
「はいっ!!!!!」
全力で肯定する。
(っああああああ!めっちゃ変なこと言ってるって!もうダメかもわからんね……)
早くも自制の効かなさに諦めを感じた私は、もうお兄様には素直にやべーやつと思われても、嫌われなければいいんじゃないかという方向転換を視野に入れ始めた。
アニーに引き続き、内なる私を隠せない相手が出来てしまった。
25歳児を押さえ込むには、まだ精神修行が足りないようである。
もしかして、精神年齢の成長が止まっている気がする私には、もうどうしよもない事ではないだろうか?
(よし、次、次っ!)
「お次のものは、ガゼボで眠るお兄様そのものです!題名は、天使の寝顔に完全敗北です!」
(多分一言多かったが、気にしない気にしない!)
「そ、それは誰が誰に敗北したのかな……」
「もちろん!私が、お兄様に!敗北いたしましたっ!」
胸を張って答える私をみて、お兄様は眉尻を垂らして苦笑いしてしまう。
「どうして嬉しそうなんだろう?」
「まぁ!この私が敗北を認めるほどの美貌に出会った事を喜ぶのは、当然ではないですかっ!」
(はっ!毎度やらかさないとダメな呪いかなんか?!)
とうとう自分可愛い発言まで漏らしてしまった事に気がついて、赤面しながら慌てて訂正する。
「すみません。自画自賛してしまったようで……つまりそれ位美しかったと言いたかったのですが、上手くいきません……」
「どうして?アメリアは今まで見た誰よりも綺麗で、可愛いよ?アメリアの気持ちを否定したくは無いけど、僕の負けだと思うよ」
(っあ”あ“あ”ぁ“あ”ーーっ!負けたけど勝ったけど、負けしかないわああああああ!)
お兄様は魔性の持ち主かもしれないなと、気を引き締めようとして、当然の如く失敗する。
この間約0.2秒であった。
「では引き分けという事で!どっちが敗北者か争いは譲れませんので、それで手を打ちましょう!……最後がこちらです」
誰しも譲れないものはあるので、そそくさと次に移る。
「こちらはですね、なんと言いますか……最初は飾っていなかったのですが……仲良くなる切っ掛けになれば良いなと思って、最後に加えたものです」
「……そう……僕は、この絵が一番好きだよ。……この絵が一番好きだけど、全部……全部の絵が一生懸命に好きだって気持ちが込められているのが伝わってくるよ」
(ピッヤアアアアア!やっぱ、やっぱ魔性なのでは?!)
キラキラした目で私を見てくるお兄様に、罪悪感が湧いてくる。
何故ならばこの4枚目は、私の願望が詰め込まれたもので、私がお兄様にバックハグしてもらっていて、二人で微笑みあっている……という作品である。
もう、風も光も花も飛んでいる極まった逸品である。
「そそそっそうですか?!そうですね!もちろん、気持ちを込めました!……でも、私もこの4枚目が一番好きではあるのですが、願望丸出し過ぎかなー?なんて思って、飾るの躊躇ったのです」
「……が、願望なんだね。でも、僕もアメリアと仲良くなりたいから……だから、もし貰えるのならこの絵がいいな」
(っいいんですかあああ!?ファンアートなのに自分登場しちゃってるヤツでいいんですかああ?!)
「もちろんです!是非!受け取ってくださいっ!」
(こんなに嬉しい事はないっ……!)
「ありがとう。……そうだアメリア、誕生日プレゼントがまだだったけど、用意出来ていないんだ……だから、この絵のお礼を含めて、何か僕にできる事とか、お願いはないかな?」
(な ん で す と ? !)
「……え?え?いいんですか?!」
「もちろん!」
「いっ!今考えますから!少しお待ちくださいっ!」
「わかった。いつでもいいけど、今でももちろんいいよ」
一大事ですよ!アメリアさん!と急遽脳内会議を開催する。
今日は私の誕生日で……と考えていると、絵を見ながら顎に手を当てたお兄様が視界に入る。
(ーーーー??!!ま、まさか!あれは!!)
顎に手を当てて、その肘を逆の手で支えている、イカしたポーズのお兄様の袖元がズレて、カフスボタンが見えていた。
それは薄紫色の宝石で……つまり、明るいシルバーグレイの衣装は私のプラチナブロンドの髪を、薄紫色のカフスボタンは私の瞳を意識しているのでは無いだろうか?!
絶対にお母様の手が回っているが、それをお兄様は着てきてくれていたのだ……!
(わわわ、私の色を着ている!私もお兄様の色を来ている!……つまり、ゴールインではないでしょうかっ?!)
混乱する脳内会議は、暴走した私を止めることを放棄した。
「で、では……誕生日プレゼントは……おやすみのキスがいいです……」
「……………???……えっ?……え?!なん?」
「だ、ダメですよね?!や、やっぱりいいです!聞かなかったことにしてくださいっ!」
(大 失 敗)
大失態に泣きそうになりながら取り消しを要求する。
「だ……ダメではないよ?アメリアが望むなら……それで」
私の時間は止まった。
呆然とお兄様を見ているしかできない私。
お兄様は何故か右を見て、左を見て……
(横断歩道かな?)
なんてアホみたいなツッコミをしてしまうが、きっとアニーがいない事を確かめたのだ。
(バッチリ二人きりです!お兄様!)
それから、優しく両手で私の頬を支えるように包むと、頭のテッペンに「ちゅっ」として、「ありがとう、おやすみアメリア」と言って微笑んだ。
(えっと、誓いのキスで合ってますか?)
「あ“あ”あ“あ”あ“ーーーっ!!!!!」
「わっ!?ご、ごめんね?!ダメだった?!」
私は両手で顔を覆って悶えた。
頭の中では教会の鐘がリンゴンとなっている。
(真っ白なお兄様色のドレスを着て、誓いのキスをもらってしまった!!)
「ありがとうございます……おやすみなさいませ、お兄様」
どう見ても違う答えに躓いて現実に戻って来られなくなった私は、その後どうやって部屋に戻ったのか記憶がない。
ーーー本当に、あの後どうやって帰って来たのだろうか?
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