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【第23話】私のお出迎えと、尊いお兄様


お待たせしました。

正直難産だった二十三話です_:(´ཀ`」 ∠):


1月18日21時半追記

誤字報告有難うございます!

そして、誤字申し訳ございませんでした。

報告者さんが訂正提案してくれてて、ワンタッチで直せるとかいう便利機能なんですねー!

報告と訂正感謝です!



アニーを呼んで、“体調は悪くないが、少し休みたいのでこのまま自室に帰ります。夜のユリシスお兄様との誕生会は何としても実行したいので、申し訳ありません。”というメッセージをカードに代筆して貰い、手の空いた使用人に、必ずお母様に届けるよう言い付けた。


アニーに届けて貰おうかとも思ったが、折角早めに上がったので、疲労で多少なりとも崩れただろう髪などを整えたかった。


お兄様とのパーティーは、晩餐をとっても余裕のある20時から、1時間くらいを予定している。

私が6歳の幼女なので、21頃には就寝準備に入る為にというのもあるが、まともに一緒に過ごすのは初めてなので、程々の時間にした方がお兄様への心への負担が少ないと思ったのだ。


「18時10分か……ねぇアニーあと1時間半で、急げばお風呂にはいって、もう一度ドレスを着られないかしら?嫌な汗もかいたし、1番綺麗な私でお兄様に会いたいの」

「!!承知いたしました!マッサージを省略してもよろしければ、可能で御座います。それでよろしゅうございますか?」

「もちろんよ!汗を流して、下着をかえたいわ。急ぎましょう!」



◇◇◇◇◇◇◇◇




「……流石ね、アニー!」

「勿体無いお言葉でございます」


(何と言う事でしょう……)


思わず昔聞いた事のあるフレーズを脳内再生してしまう。


先ほどまでは、ハーフアップをしっかりと編み込み、侯爵令嬢の気高さを演出する髪形だった。

しかし今は、余裕を持たせたハーフアップで、儚げで繊細な雰囲気だ。

“守ってあげたくなる妹”を見事に演出している。

凝った編み込みだけが全てでは無いのだと、思い知らされた。


しかも髪飾りは、レースで縁取られている柔らかで艶のあるリボンのみで、ドレスとお揃いの色。

もしこのリボンを知らない人が拾ったなら、「持ち主の令嬢は、きっと可憐な女性に違いない!」と想像が捗る事請け合いの清楚な一品だ。

リボンだけしか付けない事で、私自身を引き立てている。

ドレスは先ほどのパーティーと同じものを着ているのに、それだけの事で、こんなにも印象が違うのかと感嘆する。


「しかも時間に余裕があるわね。優秀な侍女を持って、私は本当に幸せ者だわ」

「おじょ、お嬢様ぁ……うっ……っ」


(アニーったら……でも本当に有難いよね)


「んもぅ、アニーったら。少し早いけどアトリエで待機するわよ。行きましょう?」

「かしこまりました」


切り替えが早い。

お兄様が来たら、最初の給仕だけして貰い、アニーには部屋から下がってもらう。

今回は本当に二人っきりなのだ。


自分の席に座ってその時を待つ。



◇◇◇◇◇◇◇◇



控えめなノックの音がする。

直ぐにアニーが確認し、「ユリシス様がおいでになりました」とドアを開け広げ、主人を迎え入れる時の礼を静かに取る。


私は、テーブルセットより少し入り口に近い場所に立ち、入室を待つ。


(うぅ……!心臓が壊れそうっ!……来てくれた!本当に来てくれたんだ!……ま、まずい。なんかもう泣きそうなんだけどぉーー!)


泣いてたら、怖がっていると誤解させてしまうかもしれないのだから、絶対に泣くわけにはいかない。

ふぅ……と音に出さない様に一度息をはき、人生で一番柔らかい表情をしようと決め、ドアの先を見つめる。


「………」


ドクン……ドクン……


自分の心臓がうるさい。


(す、凄く長く感じる様な、もう少し心の準備をしたいような……何これ……どうしよう?ちゃんと笑えてる?)

 


コツコツコツ……


ーーーーー!!!!!


「……!……!!」


お兄様は、私の顔を見ないようにしているのか、伏目がちで歩いてくる。


(えっ…えっ、えっ?!王子様ですか?!何でそんなに尊いの……?!!)

 

お兄様が着ている衣装は、“異世界貴族の為のテールコート”としか言いようがない……他の表現が見つからない。


元の世界でのテールコートは原則黒だった筈だが、その縛りから解放されて、美しい色で仕立てられたテールコート(仮)は、王子様に着て欲しい衣装ベスト3には入りそうだ。

洗練されていて、それでいて華がある。


前世の由緒正しいテールコートと、結婚式で花婿が着る、わりと自由なタキシードとの、いいとこ取りのような感じがする。


ただ、侯爵家の用意した物ともなれば、結婚式のタキシードがコスプレに見えてしまうレベルで威厳があって、高級感が段違いである。


生地の滑らかさが目を引く、明るめのシルバーグレイのジャケット。

襟はピークドラペルで、ジャケットに映えるシルクの艶やかな光沢で、色味が少し違う事が華やかさを演出している。

開け放したジャケットの合わせから見える、スッキリと体型に沿った白のウェストコートに、パリッと襟のたった真っ白なシャツ。

そして高貴さを醸し出す真っ白なタイは、その美しい顔の輪郭をさらに引き立てていた。


テールコートは、前が短く後ろが長いタイプのドレススーツなので、スタイルが良くないと着こなせない。

この完璧な着こなしは、異世界ではお兄様ならではだろう。


(同じ物を仕立ててお父様が着たら、別物に見えそう……)


ウエストが子供ながらに引き締まっているので、ジャストサイズのトラウザーズは、お腹や腰回りにダボつきもなく、すっきりとしている。

ベストの下から足の甲までが、ストンと綺麗に真っ直ぐだ。

 


「おにぃ……さま!お兄様……なんて尊いのでしょう……」


(ダメみたいですよ!挨拶も何も言えてないし、本音ド直球ーーー!これはドン引きするヤーーツ!!)

 

パニックになった私は、ぎゅっと目をつぶるが、感動やら羞恥やら、乗っけからの大失敗による後悔で、涙が滲んでくる。

 


「…………ご機嫌ようアメリア。……その涙は……僕が怖いから?」


ーーーーー!!


(誤解されてしまうから、泣いてはいけなかったのに!)


「いいえっ!いいえ、違いますっ!あんなに……どうやってお出迎えしようか考えていたのに、失敗してしまったのが悔しくて……」

「………」

「あと……、もっと正直にお話しすると……」

「……うん?」


(ああぁっ!その「うん?」も、好きぃーー!)


「お兄様にはまだ信じられないかもしれませんが……あまりにもお兄様がかっこよくて綺麗で、感動しちゃったのも有ります……」


綺麗に白状した私は、必死にバクバクする心臓を片手で抑えながら、正面からお兄様を見つめる。


そこで、私の涙を気にしていたお兄様と、今日初めて目が合った。


お兄様は大きく目を見開くと、サッと顔を逸らして黙り込んだ。


その時にサラリと揺れた髪もとても綺麗だということを、この人は知らないのだろうか?

お兄様は、私の目には、全てが美しく見えるのに。


逸らされた事で見える横顔の輪郭も、黄金比の彫刻のよう。

肉で埋もれていない彫りの深さ、伏せられた長いまつ毛、太すぎないのに男の子らしい眉。

スッと通った鼻筋。

鼻の頭と顎先を直線で結んだ斜めのラインから、出っ張らずに、綺麗に収まっている程よい厚さの淡い色の唇。

幼いながらにシャープな印象を出し始めているの顎周り。


私の知っている……感じている美的感覚や黄金比を、完璧に再現し過ぎて、ことごとく捻じ伏せるほどの美貌に、なぜこの世界はこんなにも優しく無いのか……


 

お兄様にとって、“かっこよくなくても好きだ!”と言うのが正解なのか、“醜くなんか無い!美しい!”と言うのが正解なのか、分からない。

本当にお兄様を思い遣っている答えは、私の出す答えと違う気もする。


だって、私の出す答えは、お兄様のためじゃなくて、私の為だろうから。

 

(かっこいいねって言われて照れるお兄様が見たいだとか、喜ぶ顔が見たいだとか、いつでも一緒に居られるようになりたいだとか……結局全部自分の為になる事ばっかりだ)


内心かっこいいと思いながら、かっこよくなくても好き!なんて、言える気がしない。


(ごめんなさいお兄様……。私はお兄様を、お兄様のために諦められる子じゃないみたい)



だから。

 


(美幼女、いきまーーーーす!)


 

決心した私は、お兄様のガラ空きの美ボディーに突撃するのであった。


読んで頂き、ありがとうございます( ˊ̱˂˃ˋ̱ )

“テールコート”とは、燕尾服の事です。

“ウェストコート”とは、ベストのようなものです。

“ピークドラペル”とは、剣のように尖っている下襟の事です。

出来るだけイメージ出来るように、書いておきます。


ブックマーク・イイね!して頂けると、大変励みになります( ˘ω˘ )g

書け次第投稿していきますので、不定期更新ですが次回もよろしくお願いします(*´꒳`*)


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