5日目 朔吾の当番
新藤後輩よ、こういってはなんだが私に相談事をするのは間違っていると思うぞ。君の謂っている通り、私は変わり者という自覚はある。
だがこれだけは断っておきたいが決して演じている訳ではないのだよ。出会ってきた人のせいだとか、育った環境のせいだとか、色々考えうる可能性は考えられるが、今の私に一切の無理は生じていない。ということは、今の私こそが普通であり、それ以外の――例えば、新藤後輩みたいに阿呆のように能天気に笑う私だとしたら可笑しな話というわけだ。
人それぞれに本当の自分というのは少なからずある。新藤後輩はいつも仮面ばかり被っているから、視界が悪いんじゃないか? たまには気分転換に仮面を外したり、一層のこと新しいのを用意したりな。君が新しい顔を用意したとしても、私は君の先輩だ。見捨てるつもりなど毛頭ない。
なんだか重苦しい雰囲気で続いてしまっているな。ここらで一つ冗談でも謂っておこう。新藤後輩は陸上部がずるいということを謂っていたが、あれらは可哀想な部活動であるぞ?
新藤後輩は1年だから知らないと思うが3年に頭の……いや体力の可笑しい輩がいる。常に短距離走のように全力疾走で駆け抜ける、肉食動物のようなやつがな。
本人曰く、「人なんかには負けねぇぜっ! 最低車ぐらいからだな。ハッ!」と自信満々に謳っていたよ。あいつはどうにも生まれる時代を間違えたらしい。戦国時代にでもいたら一騎当千の強者として教科書に掲載されていることだろうに。
それは置いておくとし、まあそんなやつがいるのだ。陸上部如きが勝てると思うか? まらそん大会であれば一瞬で帰りつき、体育祭ではやつ一人で優勝を狙える、そんなやつに。
体力馬鹿の話をしたついでに私の交友関係も少し触れておこう。体力馬鹿とは小学校からの付き合いで、年数で数えると十年、十一年。字面だけなら竹馬の友とでも謂えるほどだな。そんなことは決してないが。
奴とはじめて会ったのは集団登校だった。あの頃の私は小学校に上がりたてだというにも関わらず、厭世的な考えから引き籠りの道を選ぼうとしていた。確か幼稚園が動物園と変わりないことを嘆いたからだったはずだが、今になってみると恥ずかしいものだ。
だから私は当然の如く集合場所に行かず家で朝食をとっていた。しかし、集団登校では連絡の届けがない者は家にまで押しかけて来ることをその時の私は知らなかったのだ。
私の属する班は学校までの道を迂回し、わざわざ私の家訪ねてきた。それをしてきたのが体力馬鹿……というわけではなく良心的な一般班長が矢面に立ち話してきた。「どうして集合場所に来なかったの?」だったか?
だからこそ私は包み隠さずその時の本音を彼らに語ったよ。疚しいことなんて一切ないのだから、高らかに語って聞かせてあげたよ。そうすると彼らのなかから一人、私の前にでてきて……おっと、もう書く場所がなくなりそうだ。また次の機会にしよう。