スライム
「なあ女神。スライムのレベルはいくつだ?」
『ナナオさんと同じくレベル1にしておきました』
「だったら……」
俺はスライムを左手で掴み上げると右手で殴りかかった。
「おらぁっ」
にやにやしているだけのスライムの顔面をこれでもかと殴り続ける。
「おらおらおらおら…………おらぁっ!」
『ナナオさん。なんだか弱い者いじめに見えるのですが』
「いや、そんなことはないぞ……はぁ。これはレベル1同士の正々堂々とした対等な勝負だ……はぁ」
『そうですか』
呆れたような女神の声。
それはいいのだが……。
「こいつ、はぁ。結構タフだな……」
俺は殴り疲れてしまった。
スライムの体は弾力があってパンチが跳ね返ってくるので手応えがない。
そのためダメージを与えられているのかいまいちわからない。
「おい、女神……こいつ俺の攻撃効いてるか?」
『すみません、わたくしにはわかりません』
スライムってたしか最弱モンスターのはずだよな。
それなのにこっちが疲れるほど殴っても倒せる気配がまるでないんだが……。
すると今まで受け身一辺倒だったスライムが突如動いた。
ぐにゅ~っと体を変形させ、口をカバのように大きく開けたかと思うと次の瞬間俺をばくっと飲み込んだ。
「ごぼっ……!?」
スライムの体に全身が包まれてしまった。
なんだこれっ!? 息が出来ないっ!!
手足をばたつかせてもがくが、スライムは俺の体をすっぽり覆いつくして離れない。
女神っ、なんとかしてくれっ!
俺は心の中で叫ぶ。が、
『そう言われてもわたくしにはどうすることも出来ませんので』
淡々と返す女神。
やばいっ。このままだと死ぬっ!!
『言い忘れていましたが、この世界ではナナオさんはたとえ死んでも最初からやり直せるので安心して死んでくださって大丈夫ですよ』
なんだとっ! 安心なんて出来るかっ、くそ女神っ。駄目だマジで限界だ頼むなんとかしろっ!!
「ごぼごぼっ……!!」
『すみませんナナオさん』
死っ……。
「ごぽっ…………」
次の瞬間どさっと地面に落ちた。
「いってぇ……って。はっ、ここは……?」
「きゃあっ!」
すぐそばから女性の悲鳴が聞こえた。
「マ、マジかよ……」
俺は全裸でさっきまでいた町の往来に寝転がっていた。
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