占い師のおばあさん
「ちょっとそこのお若いの、こっちへ来んさい」
一人で武器屋を出たところで俺は通りの向かい側に座っていたおばあさんに声をかけられた。
俺を見ながらひょいひょいと手招きしている。
風貌から察するに占い師っぽいが……。
まだパンドラは武器屋から出てこなそうなので俺はおばあさんのもとに近寄っていった。
「なんですか?」
「わしゃ占いを生業にしとるもんじゃがお主を見てしんぜよう」
やっぱり占い師か。
「あの、悪いんですけど俺金持ってないんですよ」
「ただでいいわい。これはわしの趣味みたいなもんじゃからのう」
さっき生業にしてるって言わなかったか? 大丈夫かこの人?
「ほれ、右手を出しなされ」
「はぁ、じゃあ……」
言われる通りに俺は右手をおばあさんに見せた。
「ふむふむ……お主、女難の相が出ておるのう」
「女難ですか?」
「そうじゃ。いや待つのじゃ、それだけではないぞ……なんとっ、お主死相も出ておるぞ。ん? どういうことじゃ? この死相は……?」
俺の手にぐっと顔を近づけ目を見開くおばあさん。
「お主すでに一度死んでおる……? いや、わしは何を言っておるのじゃ、そんなことあるはずが、いやしかし……」
おばあさんは首をひねりながらぶつぶつと言っている。
このおばあさん、俺の素性を見抜いているのか?
その時、
「何してるんだ? ナナオ」
横からパンドラが覗き込んできた。
「すいませんおばあさん、どうもありがとうっ」
「あっ、こら待ちんしゃい。まだ終わっとらんよっ……」
俺はおばあさんから手をひきはがすとパンドラを連れ、逃げるようにしてその場から離れた。
「あのおばあさん、何か言いたげだったぞ。いいのか?」
後ろを振り返りながら歩くパンドラ。
「ああ。気にするな」
俺が一度死んでいるなんてパンドラが聞いても混乱するだけだからな。
あのおばあさんが占い師として優秀であることは確かだ。ということはだ、女難の相も……。
「ナナオ、そういやあんたには言ってなかったが他の冒険者仲間は既にみつけてあるんだよ。これからそいつらを迎えにいくぞ」
「なあ、そいつらってもしかして……女か?」
「はっ、何を今さら。決まっているだろう、二人とも女だよ」
パンドラは白い歯を見せにやりと笑った。
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