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君に愛を乞う  作者: 京町ミヤ
第1部
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第95話

連続無差別殺人事件の犯人、魔物・ナハトが根城にしていた廃墟の屋上に、ゴーグルをかけた魔物が立っていた。


ギザギザの歯を覗かせて、長い舌を出して笑う。


「アッハハハハハハハハ最高じゃん最高じゃん!俺っちも殲滅隊の野郎共殺したかったけど…こっちはこっちで最っ高におもしれーじゃん!!」


コンクリが崩れ、埃を巻き上げられる。笑った拍子に口の中に埃が入り込み噎せてしまう。が、今はそんな事はどうでもよかった。


崩れる建物。嫌でも聞こえてくる人々の悲鳴。それだけで彼は満足だった。


「さてさて。次はどこにしましょうかね〜」


ゴーグルを外し、特徴的な双眸が顕になる。


右目は差程珍しくもない黒い瞳。しかし左目は、本来ならば白い強膜が黒く、真っ白な丸い瞳をしていた。指で丸を作り、目に当てて景色を見渡す。


「ふんふふーん…じゃあつっぎはね〜」


ニッ、と笑みを深めて、ゴーグルの魔物は目を閉じる。鼻歌を歌いながら、カッと左目のみを開く。


「爆ぜよ」


その合図とともに、繁華街とは反対方向の、高級マンションが立ち並ぶ住宅街が、煙を上げた。


「アーッハッハッハハハハハハいいねいいね超絶最っ高興奮する!!」


身を逸らして高笑いを上げる。そんな彼の背後からひっそりと近づく、一つの影があった。


「相変わらず、うるさい笑い声だね。シュネー」


「はん?」


「そんなに面白い?人の悲鳴は」


シュネーの隣に並び立った少年も、耳が尖っていた。くつくつと笑って、シュネーは少年の肩に腕を回した。


「なんだよモーント。んなシケたツラすんなって」


「やめてよ」


「ちぇ〜。同じ二世として仲良くやろうぜ〜?あ、二世と言、え、ば〜」


シュネーはモーントの耳元に口を寄せ、囁くように言った。


「タークはつまんなかったよね〜。お前もだけど」


「………」


モーントはシュネーの腕を払い、廃墟の塀に腰掛けた。


「黙れ。死んだ奴の事でも、それをいじられるのは不愉快だ」


「へーへ。…なぁ、モーント」


モーントの眼前に立ち、シュネーは両腕を広げ、目を伏せる。


「俺達は二世だ。親に連れてこられた哀れな魔物だ。魔界にも帰れず、人間界にも居場所はない。そんなの…」


カッ、と一度閉じた左目を開く。モーントの後ろに聳え立つビルがドンッと音を立てた。しかし、崩れる様子はない。


「あまりにも…残酷じゃねぇ?」


「………」


モーントは無言でシュネーを見つめた。


シュネーはターク同様、親に連れられて人間界にやって来た魔物だった。


しかしシュネーはタークとモーントと違い、人間界で殺戮を心から楽しんでいた。

だからこそ人間と魔物のハーフであるモーントはそれに嫌悪感を覚えていたし、仲良くしたいとは少しも思わなかった。


眉をひそめてモーントはため息をついた。


「そうだな。けど、俺は不幸じゃない」


「へーへー、そうですかい」


くるり、と身を翻してシュネーは景色を見渡した。指で輪っかを作り、魔物殲滅隊の隊長等が住まう屋敷に目を向けた。


「あーあ。つまんねぇの」


「じゃあ…」


先程と同じようにシュネーに歩み寄る。シュネーは変わらぬ気配に目を動かすこともせず、じっと屋敷を見つめていた。だからこそ気付くのに遅れてしまった。





「───死ねばいい」





その言葉が聞こえてきた時にはもう遅かった。モーントの腕がシュネーの胸を貫いて、穴を開けていた。


ぐっ、と込み上げてきた血を吐き出して、シュネーはその場に膝を着いた。


「て、めぇ…」


「ふん」


勢いよく腕を引き抜いて、モーントは倒れ込んだシュネーを見下ろした。そしてシュネーの特徴的な左目を踏みつける。


「お前は初めから俺を信用するべきじゃなかった。忠誠を知らない二世、人と魔物の異端児、そう区切りをつけて、俺から近付くべきじゃなかった」


「モ、…ント…てめぇ…!!」


「俺はモーントじゃない。魔物じゃない。俺は町田悠月。人間だ」


「はっ…どう、だか……所詮、てめ、ぇ…も…」


「種族なんか関係ない。俺の守りたい人達は人間だ。それを壊すお前達は…立場が同じだろうと種族が同じだろうと…俺の敵だよ」


ぐしゃり、とシュネーの頭蓋を踏みつぶす。即死だったらしく、シュネーの身体は靄に包まれることなく魔石へと変化した。


魔石を拾い上げようとしたその時、モーント、もとい悠月の背後に気配を感じた。


「…町田…君…?」


切れ長の目を見開いて、走ってきたのか息が上がっている空の方へ振り向いて、悠月はにっこりと笑った。


「四季さん…だっけ?俺と会った事ありました?」


「長月から聞いたよ。魔人と魔物のハーフの子がいる。敵意はないから見逃して欲しい、って」


悠月は驚いたように目を見開いて、拳を握った。


「そっか…長月が…」


「話は聞いてるよ。長月と仲良くしてくれてありがとう」


ゆっくりと頷いて、悠月は空にシュネーの魔石を手渡した。悠月の尖っていた耳が、人のものへと変わってゆく。


「シュネーの魔石。確かに渡したよ…。…師走さんと長月は…」


「あの二人は…今魔界だ」


空の言葉に再度、悠月の目が開かれる。でも、と空は微笑んだ。


「きっと大丈夫だ。二人共強いからね…。町田君…一人で怖かったろう?よく頑張ったね」


ぽんぽん、と頭を撫でられる。じわりと浮かんだ涙を拭い、悠月は頷いた。


その後、空と悠月は、街の人々の避難に当たっていた陸と合流。人々の安否確認に急いだのだった。

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