表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君に愛を乞う  作者: 京町ミヤ
第1部
83/204

第83話


「つまり、俺達の中にある魔力は、ディツェンバーの部下の…」


「そういう事だ。そして、舞夜はディツェンバー直属の部下、名をノヴェンバーという」


舞夜がそっとお辞儀をする。


「そして師走陽羽が…宇宙とディツェンバーの間に生まれた子だ。間違いない」


断言する海に、口を挟む者はいなかった。皆理解していたのだ。陽羽の持つ魔力は特殊だと。

幸雄はギュッ、と布団を握りしめた。


(結局…アルターの言った通りだったのか…)


幸雄の様子を察してか、海はおもむろに立ち上がり、何も言わずに部屋を出て行ってしまった。


「………」


洋子、舞夜もその背を追いかける。澪だけは幸雄の座っているベッドに腰掛ける。


「…どうしたよ。そんな暗い顔すんなって」


「………」


幸雄が口を開こうとすると、部屋の扉がノックされる。


入ってきたのは魔物の少女だった。

黒い艶のある髪を三つ編みにまとめ、そばかすが特徴的だった。魔物にしては穏やかそうなタレ目で、視線も柔らかかった。


「怪我の具合はどうですか?」


「エーラちゃん。見てやって。俺、お手洗い借りるね」


「はい!」


エーラと呼ばれた少女は、今まで澪が座っていた椅子に腰掛けた。


「私はエーラと言います。初めまして」


「長月幸雄だ。手当をしてくれたのは…貴方で合っているか?」


「はい。僭越ながら、治癒魔法で」


「痕もなく治っていた。ありがとう」


エーラは恥ずかしげに微笑んだ。

聞く所によるとエーラは反アルター派との事。人間である幸雄達を家に招き入れ、匿ってくれたらしい。


「あの…一つお聞きしてもいいかしら…?」


「…何だ?」


エーラは膝の上で手を組んで、視線を逸らしながら聞いた。


「その…ずっと寝言で陽羽、って名前を呼んでいたから…どんな子か気になって」


「………」


幸雄は少し考えて、目を細めた。


「目が大きくて睫毛も長くて…美人、って印象だったな。なのに赤くなった顔は可愛いんだ。何より…優しい」


「…素敵ね…彼女さん?」


彼女、という言葉に胸が一瞬どきりとした。


「………違う」


しかし否定した瞬間、どきりとした胸が少し傷んだ。


「じゃあ好きなの?」


「………」


「違うのですか?」


幸雄は目を伏せて、拳を握った。


「大好きだと…思っていたはずだった。大切にしたいと思っていた…だが…大切なはずなのに、これが俺の感情なのかゼプテンバールの感情なのか、…分からないんだ…」


「…あ。貴方…ゼプテンバール様の魔力を持っているのね…」


エーラはゼプテンバールを知っているらしい。懐かしい、と目を細めた。


「…陽羽は…ディツェンバーの魔力を持っているらしい」


エーラは目を見開いて、息を飲んだ。


「…確かに…それは難しいわね…。ゼプテンバール様は、ディツェンバー様の側近でもあったし…忠誠心はお強いと思うわ…」


アルターが言っていた事は、恐らくそういう事だろう。


「でも…忠誠心と大切にしたいという思いは…別物だと思うわ」


戸惑う幸雄にエーラは真っ直ぐ向き合った。


「答えは貴方にしか分からない。でも、大切だと思っているなら、大切なんだよ。大切だと思えてる。それはきっとすごく尊い事のはずよ」


エーラは柔らかな声でそう言った。幸雄ははっ、と目を見開いた。


「………そうか…」


胸にそっと手を当てる。


(陽羽…俺は陽羽を…)


聞きにくそうにエーラは続けて問いかけた。


「…その…陽羽さんは?」


「今は…アルターに捕えられているらしい」


「!アルター様に…!?」


エーラの顔が引き締まる。アルターの性分はエーラも知っているらしい。


(今の魔界を納めているのだから…当然か)


「アルター様には…御自身の部下の魔力を取り込んだって噂があります。きっとそれは本当です…」


「あぁ。本人もそれらしい態度をしていた。それと…ゼプテンバールも言っていた」


エーラが重いため息を吐く。

だが、と幸雄はベッドから下りてゆっくり立ち上がる。


「陽羽は…俺に助けを求めていたらしい。なら…助けに行かなくてはな」


エーラも立ち上がり、力強く頷く。


「そういう事でしたら…私も力になります…!」


「!しかし…」


「お任せ下さい!」


断ろうと思ったが、エーラの目には強い意志が宿っていた。頭を下げて礼を言う。


「…ありがとう。助かる」


「陽羽さんを…必ず助けましょうね」


「…あぁ…」




───陽羽。必ず助けるから…待っていてくれ。


窓から見える城に視線を向ける。ぐっ、と唇を噛んで、拳を握ったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ