表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君に愛を乞う  作者: 京町ミヤ
第1部
81/204

第81話

ディツェンバーを召喚して数日後。

研究所内にある一室のソファーに海、陸、空と並んで腰を下ろす。ソファーの隣に座る陸が盛大なため息を漏らした。


「はぁ〜…まだ信じられないや…」


「頭の整理、落ち着かないよね」


メガネを拭きながら空もソファーの背もたれにもたれ掛かった。


「なんで宇宙さんあんなハイテンションなの…」


「研究者の性ってやつでしょ…」


ふと、海が廊下を見ると、宇宙が一人の幼子を抱き上げ通り過ぎるのが視界に映った。虐待されていた痛々しい傷が頬に残り、青く腫れ上がっていた。


「今の子は…」


「施設にいた子だよ」


同じく視線を向けていた陸が答えてくれる。


「挨拶したら笑いかけてくれるいい子だよ〜」


「子供の扱いはよく分からない」


「自分も子供じゃん」


海は現在十七歳。陸は一つ年下で、空は二十歳だった。

海は眉根を寄せて、肩を竦めた。


「ところで、魔力の移植ってどうするのかな?」


ふと陸が口にした疑問に答えたのは空だった。眼鏡をかけながら口を開く。


「魔物の魂の結晶である魔石。あれには微力ながら魔力が宿ってる。それを体内に直接埋め込むらしいよ」


「そんな事可能なんだ…」


「ただ、元々ない物を入れるからね。一週間程度で魔力が身体から分離しようとするんだって」


「え、駄目じゃん!」


そこで、と空は懐から小さな小瓶を取り出した。中には水色の液体が入っている。


「そ、それは…?」


「召喚した日に、ディツェンバーさんが持ってた魔石を調べさせてもらってね。魔石の中にある魔力と似せて作った薬さ。

これを週一で飲むと、魔力が分離せずに身体に定着したままでいてくれる」


「凄い…って、召喚した日って一昨日位だよね!?もう作ったの!?」


二十歳で為せる事ではない、と陸は驚きを露わにする。海も内心驚いてはいたが、表に出す事はしなかった。


「……こんにちは」


ふと、海達の背後から声がした。人間界の衣服をまとったディツェンバーを見て、海は一瞬目を見張った。


「ど、どうも…」


たどたどしい返事をして、海は自身の隣に腰かけるディツェンバーを見つめた。


「君達にお願いがあるんだ」


「何でしょう」


「ノヴェンバーという魔物を召喚してくれないか?私の側近の一人なんだが…彼女を魔界に置いてきてしまってね」


「は、はぁ…分かりました」


「やってみます」


海、陸、空は先日、ディツェンバーを召喚した場所へと向かった。魔法陣を囲むようにしてそれぞれ三方に別れて立つ。


「誰だったっけ?」


「ノヴェンバーさんだよ」


海達が行うのは世間一般的に知られている悪魔召喚のそれだ。名前と詠唱を唱えれば人間界に呼びつける事が出来る。


詠唱を唱えると、先日と同様に光と風が巻き起こる。今度は目を閉じる事なく、腕で目を庇いながら魔法陣の中央を見つめた。


「……私を呼ぶのは…どなた」


凛とした女性の声。二回続けてこうも単純に成功するとは思わず、海は目を瞬かせた。


艶やかな腰まである金髪と、目元にある黒子が特徴の女性がそこに立っていた。


「ノヴェンバーさん…ですか?」


空が聞くと、女性はゆっくりと頷いた。


「いかにも」


「ディツェンバーさんに呼ぶように言われて…呼ばせてもらったんだ」


「!ディツェンバー様は…ご無事なのですか?」


静かに、それでいて焦ったように、ノヴェンバーは問うた。空が頷くと ほっとしたように目元を弛めた。


「案内しますね」





研究所に戻ると神妙な面持ちで宇宙が腕を組んで座っていた。隣にはディツェンバーも立っている。ノヴェンバーはディツェンバーの姿を見るなり、慌てて駆け寄った。


「ディツェンバー様!ご無事で何よりです!」


「ノヴェンバー。魔界の現状を聞きたい」


「勿論でございます」


ディツェンバーのノヴェンバーは部屋の外へ出て行ってしまう。海は横目でそれを見て、眉根を寄せている宇宙に歩み寄った。


「何かあったのか?」


「…失敗したのよ…」


何が、とは言わなかったが、海はなんとなくだが察せてしまった。


「幸い、命に別状はなかったけど…拒絶反応が酷い…」


ギリッと歯ぎしりする音が聞こえる。海は宇宙を見下ろしたまま、何も言わなかった。かける言葉などないと分かっていたからだ。それは陸も空も同様だったらしく、静かな空気が漂った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ