第8話
屋敷に置いてもらって二日が経った。
答えはやはりまとまらず、幸雄が答えを急かさないのが唯一の救いとなっている。
朝起きて着替えようと、ベッドを下りる。
一応バイトは探しているが、あまり見つからないのが現実だ。所持金もそんなにないため、安いホテルを探す事も忘れちゃいけない。考える事が多く、気が付けばぼんやりとしてしまう。
そのせいかノックの音に気付かず、服を脱ぎ出してしまう。
「師走。起きてるか?」
扉を開けて幸雄が入ってくる。
「きゃっ!長月さん…!?」
上半身だけとはいえ、下着姿の陽羽を見て幸雄は慌てて扉を閉めた。バタン、と大きな音を立て、部屋のシャンデリアが小さく揺れた。
「す、すまん!いや、ごめんなさい!!」
扉越しに幸雄の謝罪が聞こえてくる。
(み、見られた…?)
羞恥を覚えながら陽羽は慌てて服を着て、扉から顔を覗かせた。幸雄は気まずそうに陽羽から視線を逸らしつつ、頭をさっと下げた。
「へ、返事が無くて…寝てるのかと思った…!本当にごめんなさい…」
「いえ!ぼーっとしてた私が悪いんです!謝らないでください…」
朝食を持ってきてくれた幸雄から盆を受け取り、軽く頭を下げた。
湯気をたてているコーンスープ。
レタス、卵、ハム、トマトが挟まれたサンドイッチが皿に盛られ、デザートにりんごもあった。
「ありがとうございます」
「いや。…三十分後に食器片しに来るから。あと…紅茶も持ってくる…」
「分かりました」
扉を閉めて陽羽は盆を机の上に置く。驚きと羞恥で早くなっている鼓動を感じながら、髪を整える。
「はぁ…びっくりした…。しっかりしないと…!」
椅子に腰掛け、コーンスープを口に運んだ。
扉を閉めた後も、幸雄はしばらく立ち尽くしていた。一瞬だったが見てしまった、下着姿の陽羽の後ろ姿。
顔や手と同じで、背中も白くて、細かった。
美しくしなやかな背筋を思い出し、頭を軽く抑えて息をついた。
「……早く、忘れないと…」
誰にも聞こえないように小さく呟き、自室へ戻ったのだった。




