第79話
『…すまない』
「………」
脳裏に直接響く声を無視し、はぁと思いため息をつく。
『本当に悪かったって…』
「何を謝る必要がある。感情的になって…一人で突っ走って。俺が一人でした結果だろう」
自分が情けない。陽羽と共に居るようになって、感情的に動く事が多くなった。
それは良い事だと澪は言ったが、幸雄にはそうは思えなかった。
己の弱い所を見せているようで、どことなく羞恥心を覚えていた。
今回もそうだ。感情的に行動した結果、負傷してしまった。ゼプテンバールが謝る必要性は何一つ無い、と幸雄は理解していた。
『何だよ…いい事だと思うよ〜?喜怒哀楽が分かんなかったお前が、怒りに任せて刀振るって…』
「どうだかな。冷静な判断が出来てない、と…夜鳥さんに怒られてしまうな…」
自嘲的に笑って目を閉じる。
『それでもだ。今回のお前の行動は恥じるものじゃない。胸を張れ』
「…今日は随分と友好的なんだな」
感じたままを口にしてみる。しばらくの沈黙の後、ゼプテンバールは苦笑混じりに言った。
『僕にも非はあったからね。直前までヤーレスツァイトの魔力を感知出来なかった。責任感じてんのさ』
「………それなら…俺だって…」
『ま、ヤーレスツァイトは魔力を隠すのが上手いからな…多分気付けなかった…。でもな』
少しの間を空けて、ゼプテンバールは強く念を押した。
『起きた事はもう引き返せない。進むしかないんだ。後悔する暇があるなら、事実を受け止めろ』
「……そうだな」
ふわり、と途端に少しだけ身体が軽くなった。意識が覚醒し始めているのだろう。
『でも…あんま…自分を責めるなよ…』
「………」
返事はしなかった。そのまま包み込まれる浮遊感に身を任せた。
目を覚ますと同時に身体を勢いよく起こす。アルターに刺された腹部に目を向けるが、そこに傷は一切なく、痛みもなかった。
「よっ」
ベッドの隣から澪の声がした。読んでいた本から顔を上げ、幸雄の様子を見つめる。
「傷、ねぇだろ?ここの嬢ちゃんが治癒で治してくれたんだとよ」
「……そうか」
皆を呼んでくる、と澪は席を立った。枕のすぐ横に置かれていた黒い眼帯に手を伸ばし、右目に着ける。すると海達が部屋に入ってきた。
「大丈夫?長月君」
「はい。問題無いかと」
「俺達が魔界に着いた時、お前は城の前で倒れていた。何があった」
海に問われ、経緯を話す。
話が終わり、一番初めに口を開いたのは澪だった。
「…そうか……でもなんで陽羽ちゃんを…」
「それについて、俺と霜月から話がある」
舞夜は背筋を伸ばして、静々と話し始めた。
「陽羽様は…前王・ディツェンバー様の娘様で間違いありません」
「前王ディツェンバー…話には聞きますが、どのような方なんです?」
洋子が聞くと、海は腕を組み口をゆっくりと開いた。




