第74話
瞼越しに強い光を感じ、目を開ける。黒いベッドの上で横たわっていたらしい。
「!」
身体を起こすと、一瞬クラッと目眩がした。
「ここは…」
窓の方へ歩み寄り、窓から外を見渡す。
血のような赤黒い空に黒い雲。木々も真っ黒で、まるで燃やされたよう。陽羽が見た事ない光景だった。
思わず後退りしてしゃがみ込んだ。
(私の知ってる世界じゃない…)
それこそ、物語の中のような。長時間見ていると気分が悪くなりそうに異様な空模様だ。
「目覚めた?」
すぐ耳元で声がする。先程の関西弁の男性だ。
「あっ…」
恐怖を感じて身を引くと男性に腕を掴まれる。
「逃げんといてぇな。逃げられると、いじめたなるやん?」
「っ…」
しかし男性がそれ以上何かをする事はなく、手を離して陽羽を見下ろした。
「俺はヤーレスツァイト。アンタは?」
「し、師走陽羽…です…。あの、ここは一体…」
「ここは…魔界。アンタ等人間が住む世界があるように…ここは俺等魔物が住む世界や…」
両腕を広げて目を細める。
(ここが…魔界…!?)
陽羽は再度窓の外を見る。魔界と言われたからか、先程よりも不気味で禍々しい雰囲気が感じられる。
「そんな…どうして…」
「アルター様の命でな。連れてきたんや」
「アルター…さん?」
聞き返すが、ヤーレスツァイトはそれ以上は語らなかった。
「まぁ会えば分かるわ。連れてくるさかい、ちょっと待っとき」
それだけ言い残して、手を振りながら部屋を出て行ってしまう。とりあえずポケットからスマホを取り出す。
表示は圏外になっていて、ため息をつきながらスマホをしまった。
(今あるのはスマホと魔石五つ…)
アルターやヤーレスツァイトがどれ程の実力か分からないが、倒せるとは到底思えない。逃げ出す事を考えたが、陽羽達の世界へ戻る方法が分からない。
(どうしよう…)
縋るようにスカートのポケットへ手を伸ばす。以前陸に貰った、黒いお守りのような形をした布製の袋。
中には固い何かが入っているが、中身は見た事ない。
「…その時が来るまで…って陸さんは言ってたけど…。今がその時、なのかな…」
袋の紐を解き、中身を取り出してみる。出てきたのは陽羽が持っているのと同じ、透明の魔石だった。しかし、陽羽が持っているのは長方形の魔石だが、袋に入っていたのはひし形だった。
「?透明の魔石…。珍しいものじゃ…」
魔力を流してみるが何も起こらない。仕方無く魔石を袋にしまった時、部屋の扉がゆっくりと開けられた。




