第73話
季節は流れ、十二月。
外にある木々の葉は枯れ落ち、学校の図書室の窓を揺らして冷たい風が吹く。借りていた小説を本棚に戻す。
「付き合ってくれてありがとう」
「いや。俺も何か読もうと思ってたから」
幸雄にオススメの本を教えたりしながら、別のコーナーへ移動する、ふと、一冊の本に目を留める。何となく気になったため手を伸ばしてみる。
(か、固い…)
ぐぐっ、と力を入れると本はすぽっと抜けた。しかしその反動で本棚がぐらつき、上の棚から本が降ってくる。
「っ!!」
目を瞑り咄嗟に頭を守る。しかし痛みは無く、恐る恐る目を開けた。
顔を上げるとどうやら幸雄が庇ってくれたらしく、壁に手をついて陽羽を見下ろしていた。
「長月君…!大丈夫!?」
「あぁ…。陽羽は?怪我はないか?」
「わ、私は大丈夫…ありがとう…」
床に視線を向けると、棚から落ちてきた本が散らばっていた。幸雄は壁から手を離した。
「人を呼んでくる。待っててくれ」
「あ、うん…」
幸雄の背を見送り、先程手に取った本を見下ろす。裏表紙のあらすじを見る限り、恋愛本らしい。
「…ふーん。そんなん読むんや」
ハッとして顔を上げる。目の前に、深緑の色の髪をした男性が立っている。しかし、その耳は魔物特有のもので、陽羽は驚いて走り出そうとした。
「おっと。逃げんといてな」
「んんっ…!!」
背後から腕を引かれて口を塞がれる。
持っていた本を手放し、塞がれている手を離そうと男性の腕を掴むが、びくともしない。
身体を揺さぶって離れようとするが叶わず、男性はにやりと笑った。
「ちょっと堪忍やで」
急に眠気が襲ってくる。意識を手放さないようにと目を開けるが、ついに逆らえず全身の力が抜けてしまった。
「ここなんですが…。?陽羽…?」
幸雄が来た時には散らばった本しかなく、陽羽の姿はそこにはなかった。
冷たく強い風が吹き、図書室の窓を激しく揺らしていった。




