表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君に愛を乞う  作者: 京町ミヤ
第1部
68/204

第68話

校舎の壁を蹴って、突き出された槍を避ける。


昼の槍は地面に深く突き刺さり、その隙に陽羽を下ろし、刀を取り出した。


「宮下。まさかお前が魔物だったとはな」


「…ふん。私の一族は、化ける事が得意なの。勿論、人間になる事もね」


槍を引き抜き、不敵な笑みを浮かべる。


「師走陽羽。貴方の特殊な魔力、私が頂くわ」


「昼ちゃん…」


陽羽は何かを言おうとしたが、ぐっと唇を結んで昼を睨んだ。


「…っ…」


大切な友人だとしても、魔物であるならば敵だという事だ。現に、昼は陽羽と幸雄に敵意を出して、攻撃を仕掛けてきた。


魔物殲滅隊として、平穏を守るものとして、陽羽と幸雄はここで昼を処分しなければならない。


それが、二人の運命だった。


昼は眉根を少し寄せて、拳を握った。



「…陽羽、援護を頼む」


「うん!」


幸雄が刀を構えて駆け出す。


昼が突き出した槍をかわし、刀を振り下ろす。しかし昼は刀を避け、距離をとった。


その瞬間、陽羽が攻撃魔法の魔石を投げつける。


「甘いっ!」


槍を使って薙ぎ払うと、小さな爆発が起こる。砂煙が舞い上がり、腕で目を庇いながら昼の姿を探す。


「陽羽!」


幸雄の声にハッとして咄嗟に防御魔法を発動させる。キィンッ、と弾かれるような音が響く。


目の前には昼の姿があり、少し反応が遅ければ貫かれていたかもしれない。


「…昼ちゃん…!」


薄く白い壁越しに昼と視線が交わる。昼の目は魔物特有の鋭く光る目をしている。気を抜けば力が抜けそうな、そんな目だ。


しかし、昼の目にはどこか辛そうな、苦しみを噛み締めるような、そんな複雑な色が映っていた。


「……っ、死ねぇっ!!」


「!」


悲鳴にも近い声と共に、昼は槍を大きく振りかぶる。陽羽はどうしてかそれを避ける気にはなれなかった。




グシャッ、と肉が裂け血が飛び散る。昼の胸から夥しい量の血が溢れ出し、地面を赤く染めていく。


幸雄の刀に貫かれて、昼は槍を仕方なく手放した。その場に仰向けになって倒れると、苦しむ様子も見せずに呟いた。


「…あーあ…私…死ぬのか」


その表情は、怒りに満ちていた。しかしどことなく、晴れやかなものを感じられた。


「昼ちゃん…」


「…本名は、タークというそうだな」


幸雄が確認するように聞くと、昼はゆっくりと頷いた。


「アンタの魔力奪って…魔界で上位に立とうと思ったのに…」


息をするのも苦しくなってきたのか。か細くなった声で昼は吐き捨てた。


「………昼ちゃん」


目を閉じかけた昼に陽羽は歩み寄った。


「陽羽…!」


幸雄が腕を掴み引き止めるが、陽羽の目を見るなりその手を離してしまった。倒れている昼に


「昼ちゃん…。────」


幸雄に聞こえないように、昼だけに聞こえるように、そっと耳打ちする。




──自覚したよ。私、長月君の事好きになっちゃった…。




昼は陽羽に何かをするでも、言うでもなく、ただ満足そうに頷いた。それ以上昼が動くことは無く、やがて昼の姿が消え、黄緑色の魔石が二つ落ちていた。


陽羽はしばらくの間、二つの魔石を見つめていた。


「……帰ろう、陽羽」


そっと肩に幸雄の手がのせられる。ゆっくりと頷いて、二人は帰路についたのだった。


驚く程の静寂が耳につく。二人は屋敷につくまでの間、一言も言葉を発する事はなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ