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君に愛を乞う  作者: 京町ミヤ
第1部
67/204

第67話

その後も。展示や凛子のクラスのクレープ屋、美里と侑のクラスのカフェ等を共に回り、時間を共にした。


時間が経つのはあっという間で、休憩時間の終わりが迫っていた。


教室に戻る最中、陽羽はそっと幸雄を見上げて微笑んだ。


「もうすぐ終わりだね…一緒にまわってくれてありがとう」


「いや、俺も楽しかった。ありがとう」


(同じだ…)


幸雄と同じ気持ちを共有出来た事に感情が揺れ、思わず頬を緩ませた。


まだ時間に余裕はあったが、少し早めに帰る事にする。階段を下ると、蓮が看板を持って陽羽と幸雄の前に立ちはだかった。


「あ、皐月君…」


「っス。お二人共。時間はあるっスか?お化け屋敷入って下さいっス」


「…ごめんなさい…私達もう行かないといけなくて…」


「五分位なんで」


壁にかけられている時計を確認して、幸雄が渋々頷いた。


「…まぁ大丈夫だろう」


「アザッス」


半ば強引に蓮に入口まで連れられ、教室に入る。黒いカーテンで道が作られ、不穏なBGMがかけられている。


(ちょっと怖いかも…)


思わず幸雄の袖を掴むと、気付いた幸雄が手を絡めた。


「ぁ…」


「大丈夫だ」


「う、うん…」


恐怖と緊張で早くなる鼓動を抑えながら、ゆっくりと歩き出す。最初の曲がり角で幽霊が飛び出してくる。


「きゃっ!」


驚いて思わず幸雄の腕に抱き着いてしまった。慌てて離れ、苦笑いを浮かべた。


「あ、ごめんなさい…」


「………」


幽霊がいなくなった事を確認してから、一瞬、ほんの一瞬だったが幸雄は陽羽を抱き締めた。


「…っ…!」


「……進もうか」


恐怖よりも緊張の方が勝ってしまい、暗い教室を俯きながら歩く。


その後も驚く度に幸雄は手に力を込めたり、頭を撫でてくれたりとしてくれたが、その度に胸が高鳴って息が苦しくなる一方だった。


とはいえ教室をぐるりと一周するだけだ。恐怖感はあったものの、すぐに終わり、幸雄と手を離した。


出口へ出ると、蓮が頭を下げてきた。


「無理やり入れてすんませんっス。神無月さんが…感情の変化を教えて欲しいって…」


「まぁいい。お前は悪くない。それじゃあ、また」


「皐月君、頑張ってね!」


「っス」


蓮に手を振り、急ぎ足で教室へ戻った。クラスメイトに交代を知らせ、裏でエプロンを着けていると、幸雄が陽羽の耳元で囁いた。


「───」

「──っ!」







文化祭は無事に幕を閉じた。片付けも済み、帰るだけとなった幸雄と陽羽は窓の外を眺めていた。


その表情はとても晴れやかとは言えず、どこか影が落とされていた。


生徒もほぼ全員が帰宅し、外はもう真っ暗で星が見えていた。二人の表情に反する、きらびやかな夜空を見上げると、そこへ荷物を取りに来た昼が入ってくる。


「あ、二人共!まだ帰ってなかったんだ」


「昼ちゃん…。今日はお疲れ様」


「二人もね〜。でも、楽しかったな〜!」


ぐいっ、と伸びをして昼は鞄を持った。


「それじゃ、私帰るね」


背を向けて歩み始めたが、数歩歩いた所で昼は立ち止まった。


「───ね」


昼が何かを呟いた瞬間。


幸雄は陽羽を抱き抱えて窓から飛び降りた。幸雄と陽羽が立っていた所には、いくつものナイフが突き刺さっている。


急降下する二人を追うように、昼も鞄をその場に捨てて窓から飛び降りる。


「!!!」


昼が指を鳴らすとその姿が変わってゆく。


鋭く光る目。尖った耳。ショートヘアーだった昼の髪も長く伸び、何処からか取り出しされた槍を手に握りしめ、きつく陽羽と幸雄を睨みつけた。




「死ねっ!長月!!」




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