第67話
その後も。展示や凛子のクラスのクレープ屋、美里と侑のクラスのカフェ等を共に回り、時間を共にした。
時間が経つのはあっという間で、休憩時間の終わりが迫っていた。
教室に戻る最中、陽羽はそっと幸雄を見上げて微笑んだ。
「もうすぐ終わりだね…一緒にまわってくれてありがとう」
「いや、俺も楽しかった。ありがとう」
(同じだ…)
幸雄と同じ気持ちを共有出来た事に感情が揺れ、思わず頬を緩ませた。
まだ時間に余裕はあったが、少し早めに帰る事にする。階段を下ると、蓮が看板を持って陽羽と幸雄の前に立ちはだかった。
「あ、皐月君…」
「っス。お二人共。時間はあるっスか?お化け屋敷入って下さいっス」
「…ごめんなさい…私達もう行かないといけなくて…」
「五分位なんで」
壁にかけられている時計を確認して、幸雄が渋々頷いた。
「…まぁ大丈夫だろう」
「アザッス」
半ば強引に蓮に入口まで連れられ、教室に入る。黒いカーテンで道が作られ、不穏なBGMがかけられている。
(ちょっと怖いかも…)
思わず幸雄の袖を掴むと、気付いた幸雄が手を絡めた。
「ぁ…」
「大丈夫だ」
「う、うん…」
恐怖と緊張で早くなる鼓動を抑えながら、ゆっくりと歩き出す。最初の曲がり角で幽霊が飛び出してくる。
「きゃっ!」
驚いて思わず幸雄の腕に抱き着いてしまった。慌てて離れ、苦笑いを浮かべた。
「あ、ごめんなさい…」
「………」
幽霊がいなくなった事を確認してから、一瞬、ほんの一瞬だったが幸雄は陽羽を抱き締めた。
「…っ…!」
「……進もうか」
恐怖よりも緊張の方が勝ってしまい、暗い教室を俯きながら歩く。
その後も驚く度に幸雄は手に力を込めたり、頭を撫でてくれたりとしてくれたが、その度に胸が高鳴って息が苦しくなる一方だった。
とはいえ教室をぐるりと一周するだけだ。恐怖感はあったものの、すぐに終わり、幸雄と手を離した。
出口へ出ると、蓮が頭を下げてきた。
「無理やり入れてすんませんっス。神無月さんが…感情の変化を教えて欲しいって…」
「まぁいい。お前は悪くない。それじゃあ、また」
「皐月君、頑張ってね!」
「っス」
蓮に手を振り、急ぎ足で教室へ戻った。クラスメイトに交代を知らせ、裏でエプロンを着けていると、幸雄が陽羽の耳元で囁いた。
「───」
「──っ!」
文化祭は無事に幕を閉じた。片付けも済み、帰るだけとなった幸雄と陽羽は窓の外を眺めていた。
その表情はとても晴れやかとは言えず、どこか影が落とされていた。
生徒もほぼ全員が帰宅し、外はもう真っ暗で星が見えていた。二人の表情に反する、きらびやかな夜空を見上げると、そこへ荷物を取りに来た昼が入ってくる。
「あ、二人共!まだ帰ってなかったんだ」
「昼ちゃん…。今日はお疲れ様」
「二人もね〜。でも、楽しかったな〜!」
ぐいっ、と伸びをして昼は鞄を持った。
「それじゃ、私帰るね」
背を向けて歩み始めたが、数歩歩いた所で昼は立ち止まった。
「───ね」
昼が何かを呟いた瞬間。
幸雄は陽羽を抱き抱えて窓から飛び降りた。幸雄と陽羽が立っていた所には、いくつものナイフが突き刺さっている。
急降下する二人を追うように、昼も鞄をその場に捨てて窓から飛び降りる。
「!!!」
昼が指を鳴らすとその姿が変わってゆく。
鋭く光る目。尖った耳。ショートヘアーだった昼の髪も長く伸び、何処からか取り出しされた槍を手に握りしめ、きつく陽羽と幸雄を睨みつけた。
「死ねっ!長月!!」




