第65話
心地よい夜風が吹き抜け男の髪が滑らかに揺らされる。遠く見える街の該当が煌びやかに輝いていた。
それを見つめながら、男はパチンッ、と指をならした。
そこは連続無差別殺人の犯人、ナハトが根城にしていた廃墟。男の合図と共にその屋上に複数の影が映る。
その内の一人が指で輪っかを作り、街を見渡して呟いた。
「ナハトもやられちゃったね〜」
「仕方あらへん。アイツは遊びすぎや。いずれ始末するつもりやったしな」
関西弁の男の魔物がくつくつと笑う。
「せやけど。人間にしてやられるんも…俺等のメンツが立たんしなぁ…。皆殺しにするしか…道はないで」
関西弁の魔物は声を低くして圧をかけるように言う。
「それに、珍妙な魔力を持った奴もおるみたいやしな…ソイツは生け捕りな」
「えぇ〜?どうして?………。え、その人を妃にするつもり?本当なの?姉さん。………。えぇ〜その子可哀想〜」
屋上の隅で、一人でぶつぶつと喋る女の魔物がいた。一人での会話を済ませると、影に沈み込むようにして姿を消した。
「それが。アルター様の。望みならば」
「手段は問わへん。任せたで」
関西弁の魔物が言うと、影が次々と消えて行く。その場には関西弁の魔物と黒いマントを被った魔物だけが残っていた。
「何や、ターク。帰らんの?」
「…ヤーレスツァイト」
変声機で声を変えているのか。タークと呼ばれた魔物はくぐもったような声を響かせて、関西弁の魔物の名を呼んだ。
容姿はおろか、性別すらも分からない魔物を見下ろして、ヤーレスツァイトは首を傾げた。
「珍妙な魔力を持った奴とは、どんな奴だ」
「ふぅん?やる気やん…。…懐かしい魔力をしている、やとさ。あぁ、すまんな」
ヤーレスツァイトはニヤリと目を細める。
「子供ん時に親に人間界に連れてこられた…二世には分からんか」
「ふざけているのか、ヤーレスツァイト」
ヤーレスツァイトは耳障りな笑い声を上げながら、タークから背を向けて姿を消した。
「目障りな奴だ。この私が…殺してやろう。どいつもこいつも、な…」
怒気を含んだ声色で呟きを残し、タークも姿を消したのだった。
文化祭当日。
風船や張り紙で飾られた廊下を幸雄と並んで歩む。生徒達も忙しそうに接客したり、呼び込みをする姿が見える。
「やっぱり賑やかだね…」
「だな…」
「あれ、陽羽ちゃん!長月!」
声をかけられ、同時に振り返る。クラスメイトの女子何人かと回っているらしい、昼が手を振りながら駆け寄ってきた。
「あ、昼ちゃん」
昼の姿を見て、ふと思い出した。
(…自覚したって…言う約束してたな…)
以前約束していた事を思い出し、口を開こうとすると昼が陽羽の肩を組み、そっと耳打ちした。
「なにか進展あったら教えてね」
「あ…その」
早口気味に言うなり昼は駆け足で去っていってしまう。言うタイミングを逃してしまい、短くため息をついた。
「…行こうか」
「あ、うん…」
後ろ目で昼を一瞥して、再び歩みを進めた。




