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君に愛を乞う  作者: 京町ミヤ
第1部
64/204

第64話


学校帰りに陸の経営する店、『LICC-STONE』に訪れた陽羽と幸雄は、店の奥の部屋に通されていた。


正確に言うならば、陽羽が扱う魔石を見に来たのだが、魔石を貰った瞬間に肩をがっしりと掴まれ、店の奥に引きずり込まれたのだった。


陸ワインをグイグイと飲み干していき、隣に座っている陽羽の肩を引き寄せた。


「でねぇ?海ちゃんがぁ…『お前はもっと淑やかになるべきだ』なぁんて眉間にシワ寄せて言うのよぉ〜!」


「は、はぁ…」


緋月さんには海ちゃんと呼ばれているのか、と内心思いながら、陽羽は生返事をする。


簡単に言えば陽羽と幸雄は現在、陸の愚痴に付き合わされているのだ。


幸雄が何度か酒を飲むのを辞めるように牽制したが、陸は聞く耳も持たない。それどころかジュースの入っている幸雄のグラスに酒を注ぐレベルだ。


「別にいいじゃないのよね〜?これが私なんだしさぁ?」


「そ、そうですね…」


「ふへへぇひわっちはいい子ね〜…お酒持ってくるぅ」


千鳥足で酒の置いてある棚に向かう陸。はぁ、と幸雄のため息が聞こえ、陽羽は幸雄の方を向いた。


「油断した…すまない、陽羽」


「ううん。緋月さんも愚痴とか溜まってるんだよ…。私は大丈夫」


新たにワインの瓶を持ってきた陸は、陽羽と幸雄の間に腰掛け、また飲み始める。


「私だってねぇ…昔は大人しかったのよ〜?」


「そうなんですか?」


「そうよぉん。昔はねぇ、髪型も三つ編みだったしぃ」


陸の高校生時代の話を延々と聞かされ、気付けば時刻は十時を過ぎていた。


チリンチリンッ、と店のドアが空き、陽羽達のいる部屋へ空がやってきた。


「もう〜またそんなにガバガバ飲んで…二人はまだ学生なんだから。お酒飲ませてないよね?」


「もちろんょ〜。じゃあくぅちゃんが付き合ってよぉぉ」


「ちょっとだけね。二人とも、外で霜月が待ってるから」


「ありがとうございます」


「助かった…」


陽羽と幸雄は店を出て、舞弥の運転する車に乗り込んだ。





空は陸の隣に座り、陸の額を小突いた。


「あぅ」


「陸ちゃん。僕を呼び出す口実が酷いんじゃない?純粋な若い子達を巻き込むんじゃないよ全く…」


新しいグラスにワインを注ぎ、空も飲み出す。


「だってぇぇ海ちゃん来てくんないんだもん〜」


「忙しいんだよ、海君も」


ぷぅ、と頬を膨らませた陸のグラスにワインを注ぐ。


「それより、耳寄りの情報よ〜」


「ん〜?何さ」


陸は空の耳元に口を寄せ、静かに囁いた。空の丸眼鏡越しに、切れ長の目が見開かれていく。


「…」


「あはっ、期待通りの反応〜!」


「それは…本当なのかい?」


「本当よぉ、間違いなく、ね…」


悔しい事に、陸の情報の正確さ、素早さは随一だ。空はギリッと奥歯を食いしばり、顔を歪めた。


「…運命って残酷だね…」


「でも、それが運命よ」


空はワインに映った自分の顔を見つめ、一気に飲み干した。


「……可哀想すぎるよ…陽羽ちゃん…」


「…それは同情?それとも…ひわっちが──」


言いかけた陸の頬を片手で挟み、空は眉根を寄せた。


「陸ちゃん…僕は、海君も陸ちゃんも信用してるし信頼してる。大切な親友だ。それでもその話題を出すって事は」


「ごめんごめん。いじってるんじゃないのぉ」


ぱっ、と手を離して空は陸を見つめた。


「睨まないでよぉん。でもね、くぅちゃん。過去に囚われてちゃ…くぅちゃんきっと…」


「…分かってる…。分かってるよ…」


「でもまぁ…似てるもの。ひわっちと宇宙そらさん…」


顔を俯かせて、空はため息をついた。

陸はワインを注ぎながら、一枚の写真に目を向ける。


「とりあえず今は…」


「あぁ。…酷だけど…魔物を倒すのが、僕達の仕事だ」


陸から書類を受け取り、空は夜風に当たりながら帰路についたのだった。

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