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君に愛を乞う  作者: 京町ミヤ
第1部
63/204

第63話

黒板に大きく『文化祭の準備と役割分担』と書かれ、教壇に昼と悠月が立っている。


来週に迫った月下高校文化祭。

陽羽達のクラス、二年一組はドリンク専門店とくじで決められており、メニューを決める作業等を決めなくてはならない。


コーラ、紅茶、ジュース、とあげられたメニューを昼は黒板に書いていき、大方決まったところでシフトの構成に移る。


シフトを決めるのはくじ引きで運試しだったので、当日、幸雄と回る約束はしていたものの、ここで一緒の時間帯に当たらなければ意味がない。


ドキドキとしながらくじを引く。結果は十時から十一時。幸雄が一時から二時だった。


「ちょっとズレちゃったね…」


「まぁ仕方ないさ…」


二人して残念そうに肩を落としていると、その様子を見ていた悠月が、陽羽の手元の紙と自身の紙を無理矢理交換させ、飄々と紙に書いてしまった。


「ま、町田君…!?」


「俺十時から十一時ね。で、師走さんと長月が一時から二時だって」


「えっ!?」


慌てて悠月と交換した紙を見てみると、一時から二時となっていた。どうやら見越して交換してくれたらしい。


「町田君…!ありがとう…」


「いいよいいよ。師走さん、ここでの文化祭初めてなんだからさ。長月に色々案内してもらって」


「…うん…!」


悠月に感謝しつつ、幸雄と顔を見合わせて微笑んだ。


「あ、でも…申し訳ないから、何かお手伝いさせて」


「マジ?じゃあね……買い出し頼めるかな?紙コップとストロー」


「勿論」


悠月から買う物リストを受け取る。




放課後。幸雄と見廻りを終えた後、ホームセンターへ向かう。


「時間、一緒になってよかったね…。町田君に感謝しないと…」


「そうだな」


ホームセンターの入口に着くと、昼とばったりと会った。家の電球が切れたらしく、買いに来たそう。


「二人は買い出しかぁ」


「うん」


紙コップ(蓋付き)、ストロー、電球、と順番に店内を回り、それぞれ会計を済ませる。


昼の提案で近くにある人気のアイス屋に寄り道する事になった。


もう日も沈みかけており、スーツを着た会社員らしき姿や、他の学校の制服姿の人々が多くなった。俗に言う帰宅ラッシュだろう。


学校帰りの学生がそこそこに並ぶアイス屋は、ホームセンターから歩いて五分程の場所にあった。

店員の女性に待っている間に、とメニュー表を渡され、昼が持っているメニュー表を陽羽が覗き込む形で並んでいた。


幸雄は二人の上からメニュー表を覗き込み、即決した。


「私抹茶アイスにしようかな〜。二人は?」


「私は…イチゴチョコ」


「紅茶ラテ」


相変わらずの幸雄の紅茶好きっぷりに、陽羽はふふっ、と頬を緩めた。


店員に注文を頼み、しばらくすると注文したアイスがそれぞれ出された。


「美味しそ〜」


「写真撮ろ〜」


自身の抹茶アイスを写真に収める昼。陽羽はそんな昼を後目にアイスを一口食べる。


ひんやりとしたチョコレートの味に、しゃりしゃりとイチゴのシャーベットが混ぜられている。気温が下がったとはいえ、暑さがまだ残っているのもあり、更に美味しく感じられた。


「美味しい…!」


「…うん。美味いな」


そう言う幸雄の表情を、こっそりと見上げたつもりだった。しかし、幸雄も陽羽の方を向いていて、ばっちりと目が合った。


慌てて目を逸らすと、幸雄が自身の紅茶ラテアイスを一口分掬い、陽羽の口元へ運んだ。


「食べるか?」


「へっ…」


幸雄のアイスが欲しいのだと思われたらしい。


以前にも似たような事があったな、とふと思い出して顔を赤くさせる。込み上げる恥ずかしさを隠しながら、幸雄のアイスを食べた。


ふと、幸雄の表情が変わった。少し戸惑ったように目を瞬かせた。


「………」


「な、長月君も…どうぞ?」


と、陽羽も同様に幸雄の口の前に差し出す。幸雄がそれを食べると、陽羽の中に何ともいえない気持ちが混み上がる。


「……ありがとう」


「こ、こちらこそ…」


写真を撮り終えた昼は、先に食べ始めていた陽羽達に負けない早さでアイスを食べる。


空になったカップをゴミ箱に捨てていると、聞き覚えのある声が陽羽達の後ろから響いた。


「あれ〜?ゆっきーにひわっち?」


振り返るとそこには胸元のあいたワンピースを着用し、ベージュのカーディガンを羽織っている陸が手を振っていた。


「緋月さん…!こんばんは!」


「こんばんは」


陸は挨拶を返しつつ、陽羽の隣にいる昼に視線を止める。


「………」


しばらく見つめた後、陸は昼の髪にそっと触れた。


「ゴミついてるから取ってあげるわね〜」


「あ、ありがとうございます…」


サラッ、と昼の短髪が揺れる。陸はにっこりと笑って陽羽に向き直った。


「学校帰り?」


「はい。文化祭の買い出しに」


「そっか〜。懐かしいなぁ。ま、頑張ってね」


そう言い残すなり、陸はすぐ近くに停めてあった車に乗った。


「…珍しく大人しかったな…」


「え…そう?」


幸雄に言われ、陽羽は陸の言動を思い返してみる。けれども不審な所は何もなく、走り去っていく陸の車を見つめていた。


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