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君に愛を乞う  作者: 京町ミヤ
第1部
60/204

第60話

幸雄と一緒に行った事のある場所を、思い当たる限り行ってみる。


辺りは暗くなってきていて、街の街灯が点き始めている。風が吹き抜け、陽羽の髪をたなびかせていく。


走り続けて体温が上がっているとはいえ、秋の夜風は肌寒く、腕を摩って寒さを誤魔化す。


(寒い…早く見つけないと…)


ふと、脳裏に初めの魔物と対峙した公園がよぎる。自然と足を公園の方に運んでいた。


公園のベンチにぼんやりと空を眺めて座っている幸雄がいた。陽羽は躊躇う事なく歩み寄り、声をかける。


「長月君…。ここにいたんだね…」


「陽羽…」


「帰ろう。風邪ひいちゃう…」


幸雄は陽羽の方を見ずに、立ち上がって何処かへ行こうとする。その腕を掴んで引き止める。


「待って…どうして私を避けるの…?」


「避けてなんか…」


「避けてる。目…合わせてよ…」


今にも消え入りそうな声で言うと、幸雄はゆっくりと振り返って陽羽を見つめた。

いつも無表情な幸雄が、少しだけ悲しそうな、苦しそうな、そんな表情をしていた。


「…教えて。何か、困ってる事があるの?」


「………」


「長月君はいつも私を守ってくれる…。長月君、困ってたり辛かったら…私を頼って?」


「……陽羽…」


幸雄はばっ、と陽羽に抱き着いた。体重はかかっていないが、陽羽の肩に幸雄の額が当てられる。


「………!」


「…俺…俺…、おかしいんだ…。陽羽を見ると…胸が暖かいのに苦しくて…」


「………」


「守りたいのに…壊してしまうんじゃないかと…不安だ…怖い…」


ぎゅっ、と陽羽を抱き締める。包み込まれるような抱擁ではなく、縋るような、力のない抱擁だった。


「…そう…」


幸雄の頭をそっと撫でる。


「…すまない…。こんな気持ち…初めてだ…。どうすればいいのか分からない…」


「…大丈夫だよ…。気の利いた事言えないけど…私も傍にいる。それだけは約束するよ…」


「…陽羽…。キス、していいか」


「………」


(キス…。魔力の譲渡ではなく…?)


「…いいよ…」




───何でもいい。感情は全て捨てて。頭を真っ白にして。欲望のままに動けばいい。その先に何を得るのか。まだ知らない。




──何でもいい。キスでも魔力の譲渡でも。彼が求めるのならば、私はそれに応えよう。けれど、きっとそれをしてしまえば自覚してしまう。



(あぁ…。私…)




──長月君が好きだ…。



お互いの唇が重なった瞬間の事。陽羽はそっと幸雄の背に腕を回した。


秋の夜風が吹き抜け、陽羽と幸雄の髪を揺らしていく。

うっすらと目を開けると、空に浮かんでいる月と同じ輝きを持った幸雄の左目が映った。


(綺麗な瞳…)


ゆっくりと唇を離して、陽羽は幸雄の手を取った。


「帰ろう?」


「…あぁ…」


ぎゅっ、と力強く、それでいて優しく、陽羽の手を握り返す。


「…ありがとう」


少し明るくなった幸雄の顔を見上げ、陽羽は柔らかく微笑んだ。


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