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君に愛を乞う  作者: 京町ミヤ
第1部
55/204

第55話


カラカラ、と音を立てて鎌を引きずり、ナハトは一階の廊下を歩く。


「魔力は…こっちからか…。出口の反対側だな」


一度出口から離れてやり過ごす気か、と頭の片隅で思いながら、ニタリ、と笑う。


陽羽の魔力を追い、気配のする方へ向かう。一番奥の部屋の片隅にロッカーが置かれている。


(この中から気配がするな…)


ロッカーに手をかけ、笑みを深めた。


この中にいる彼女は今どんな気持ちなのだろう。どんな顔をしているのだろう。


恐怖で震えているか。泣いているか。絶望しているか。


想像するだけで気分が高揚する。彼女は階段から落ちても必死に逃げようとしていた。


分かりやすい程の、その生への執着を捻り潰すのは、どれ程気持ちがいいか。ナハトは知っていた。


何度も味わいたいと思うからこそ、わざわざ魔人を選んで、あえて近くに人が多くいる廃墟を選んだ。


少しでもいい。生きる希望をチラつかせてやれば、あとは勝手に生き延びようと動いてくれるから。


それを潰した時にこそ、ナハトにとっての快楽が得られる。


(ゲームはもう終わりだぜ…)


勢いよく開く。しかし、そこには陽羽の姿はなかった。

が、代わりにそこには黒く輝く魔石が落ちていた。


「………あ?」


しばらくして、ナハトの呆けた声が部屋の中にこだました。


「………あのアマ…」


黒い魔石を踏み潰し、ナハトはロッカーを殴りつけた。ガンッ、と大きな音を立てて、ロッカーが凹んでしまった。


そして息を吐き出しながら目を細めた。ギリッと歯を軋ませ、鎌の柄を握りしめた。


「嬲り殺すか犯し殺すか…まぁいい、なんでもいい……ぶっ殺してやる…!!!」


自身の楽しみを奪った陽羽への殺意がとめどなく渦巻いていく。靴音を響かせながら、まっすぐに出口へと向かった。




(そろそろ、かな…)


ナハトの足音が遠くなってから十秒後。陽羽は部屋を出て出口へ向かって走り出した。


陽羽が使用した魔石は『代理』。

陽羽の魔力が特殊で見つかったのなら、魔石に魔力を限界まで注ぎ込み、別の方へ移動させる。


結果成功はしたが自身の魔力は底を尽き、歩くだけで精一杯であった。


(練習中だったけど…何とかなったかな…?)


階段を降りてすぐ、出口の大きな扉が目の前に現れる。扉を開けて、建物の外へ出た。


「はぁ…はぁ…っ」


このまま街まで出ようと一歩踏み出した時だった。首を掴まれ、その場に押し倒される。


「きゃっ!…あっ」


「このアマ…よくも…オレを騙したな」


「わ、私は建物から出ました…!約束し──」


「ンなこと知らねぇよ」


ぐぐっ、手に力を込められ、呼吸が出来なくなる。懸命に空気を取り込もうとするが、息が上がっているのもあり、上手く呼吸出来ない。


気が遠のくとパッと手を離される。


「う、ぐっ…げほっ…はぁ、…はぁ…」


「簡単に殺してやるかよ」


ナイフをくるくると回し、頬に、胸にと切りつけていく。


「ぃ、や…っ…やめてっ!」


「黙れ」


再び首を絞められる。先程よりも強い力で呼吸をせき止められる。


次第に呼吸の仕方が分からなくなり、視界がぼやけていった。

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