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君に愛を乞う  作者: 京町ミヤ
第1部
54/204

第54話

「じゃあゲームをしようか」


ナハトは立ち上がって鎌を背負い、陽羽の後ろに回った。


「ルールは簡単。オレから逃げてこの建物を出るだけ。鬼ごっこだねいわゆる」


陽羽の手にかけられていた手錠を外し、陽羽を立たせた。


「ここから出たらオレはそれ以上追いかけない。約束するよ?街に行って助けを求めたらいい…」


つぅ、と陽羽の手の甲をなぞる。背筋に冷たいものが走り、息を飲んだ。


「一分後に追いかけるね。じゃあ…始め」


ナハトが手を離す。陽羽は訳が分からなかったが、急いで部屋を出た。


明かりのついていない廊下を走り、階段を一気に駆け下りる。三階、とかかれた廊下まで走ってきた時だった。


「見ぃつけた」


「っ!」


捕まると思ったが違った。相手は魔物だ。腕に焼けるような痛みが走る。


「えっ…」


「言い忘れてたけど…ギリギリまで捕まえる気ないよ?じぃーっくりいたぶってから…殺してあげるね?」


血がついたナイフを舐めながらにたりと笑う。恐る恐る痛みのある左腕を見ると、シャツが赤く染っていた。

顔からさっと血の気が引き、身体が震える。


「逃げないの?」


「ひっ…」


左腕を抑えて、慌てて走り出した。ナハトがナイフを投げると、その内の一本が太ももに掠る。


「いっ…!」


「止まったら捕まるよ〜?早く逃げないと…ね?」


ナハトの靴音がすぐ後ろから聞こえてくる。荒くなる呼吸を抑えて、階段を下りる。その度に太ももに痛みが走り、顔を歪めた。


そして階段を降りている時だった。ナハトが投げたナイフが足首を掠めた。その拍子に体勢を崩し、階段から転げ落ちてしまう。


「きゃぁああっ…!!?」


「おっ」


幸い、落ちたのは階段の真ん中辺りからだったため、打ち身で済んだ。それでも身体中が痛んで、中々立ち上がる事が出来なかった。


「だいじょーぶぅ?」


ナハトが近付く。咄嗟に煙の出る魔石を発動させ、煙で姿が隠れた隙に起き上がり、階段を降りようとした。


───が。


「よっ」

「っ!!」


後ろにいたはずのナハトが目の前に現れる。驚いて尻もちをつくと、ナハトがナイフをシュッ、と振った。胸と腹部に浅い傷がいくつか付けられる。


「ぃっ…いた…!」


「ハハッ、いい声で鳴くじゃん。君の魔力は特殊だから…すぐに居場所が分かるよ。でも…その傷じゃあ…もう楽しめないかな…?」


小窓から月明かりが差し込み、ナイフがきらりと光る。ポケットから魔石を取り出し、ナハト目掛けて投げつける。


「おっと」


自身の前に防御魔法を発動させ、投げた魔石を爆発させる。続いてまた別の魔石を床に叩きつけると、真っ白な煙が辺りを包み込む。


足を奮い立たせ、階段を一気に駆け下りた。


「ふぅん…面白い」


鎌を振るい、煙を払うとナハトは口の端を釣り上げた。




一階に続く階段がある近くの部屋に身を隠す。震える身体を抱きしめるように、腕を組んだ。


切られた所が熱を持って、血が伝って気持ちが悪い。自然と息が荒くなり、頭が痛くなってくる。


「はぁ…はっ、…長月君…」


自然と口から漏れる言葉に、返ってくる返事はない。陽羽はポケットから黒色の魔石を取り出す。


(…出来るか分からないけど…やってみないと…!)


黒い魔石にありったけの魔力を込め、廊下に転がした。


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