第49話
水辺でしばらく遊んだ後、海の家でジュースを買い、凛子達の元へ戻る。
昼食のバーベキューは経験者らしい悠月が担当してくれた。
食べて早々に凛子達は海へ駆け出して行った。陽羽と幸雄は食器を片付け、シートに腰を下ろした。
「はぁ…お肉美味しかったなぁ…」
「…楽しいんだな」
「…そうね…」
「泳げないけど…海も中々良い所だな」
「後で写真撮りに行こっか」
「あぁ」
ジュースを飲みながら海を見る。青々として、きらきらと輝いている。不意に幸雄は呟いた。
「綺麗だな…」
「…そうだね」
海の事を言っているのだと思い、そう返事をしたが、幸雄はいや、と陽羽を見つめる。
「海を見てる陽羽が…いつもと違って…」
「えっ…」
「…誰にも…見せたくない」
ずいっと距離を縮め、陽羽の目を見つめた。治まっていた熱が再び訪れる。
「そ、れは…」
「水着も似合ってる」
真っ直ぐに目を見つめられ、嬉しい気持ちも込み上げる。が、どうしても恥ずかしさの方が上回ってしまう。
「あ、ありがとう…あの…」
しどろもどろしていると、ガサッと近くの木が揺れた。
驚いて視線を向けると昼が気まずそうに立っていた。
「あ…ごめん…。盗み聞きするつもりはなくて…」
「昼ちゃん…」
「な、長月にも独占欲とかあったんだね…!」
焦って昼が言った言葉に幸雄は首を傾げた。
「独占欲?何だ…それは」
「えぇ!?えっと…さっき長月が言ってた…。水着姿の陽羽ちゃんを、誰にも見せたくない…とか。そういうのが独占欲…です」
何故自分が…、昼はそう思いながら身振り手振り説明する。幸雄は納得したように頷き、陽羽を見た。
「そうか…」
三人の間に気まずい空気が流れる。いたたまれなく感じてきた、その時だった。悠月が手を振りながら走って帰ってきた。
「たっだいまー!やっぱ海サイコーだな!!」
「…ありがとう。町田」
空気を壊してくれた悠月に昼は礼を言う。当然、何故礼を言われたのか分からない悠月は、首を傾げながら頷いた。
「二人とも荷物ありがとー。そろそろ荷物とかまとめ始めよっか」
「あ、そうだ。火、消す前にアレ食べない?」
昼が食材が入っている袋を漁り、個包装されたマシュマロを取り出した。
「マシュマロ…!」
「炙って食べると美味しいんだよね〜」
「いいじゃんいいじゃん!」
マシュマロを串に刺し、コンロを取り囲んでマシュマロを炙る。
「…楽しかったね…」
「また来年も皆で来よう!」
約束をしていると悠月のマシュマロに火がついた。
「どわっ!?」
「け、消して消して!」
隣にいた昼がふっ、と火のついたマシュマロに息を吹きかける。火は消えたがマシュマロは真っ黒に焦げてしまっていた。
その光景を見て陽羽は頬を緩ませながらマシュマロを食べた。
マシュマロを食べ終えた頃に舞夜が迎えに来たため、荷物を積んで車に乗り込んだ。遊び疲れたのか、幸雄を除く他のメンバーは眠ってしまっていた。
助手席に座っている幸雄は、隣で運転している舞夜に話しかけた。
「舞夜さん。独占欲って…どうして出るんですか?」
「独占欲ですか…。相手を独占したいと思った時じゃないですか?」
「そうではなくて…えっと…」
「…私も詳しくは存じ上げませんが…。基本的に独占欲とは、その方の事が好きな場合がほとんどかと」
「好き…?」
赤信号で止まり、舞夜は幸雄の方を見た。
「どうですか?」
幸雄はしばらく考えた。そして静かに首を振った。
「分からない」
「………」
「信号、青ですよ」
幸雄に言われ、舞夜は車を走らせた。
「何だか…胸がきゅっとなって…。不思議と鼓動が早くなった」
「はぁ…身体的な症状を言われても、私には分かりかねますね」
「…そうか」
「澪様辺りなら分かるのではないでしょうか」
「…聞いてみる」
「それが宜しいかと」
「とはいえアイツは出張中だしな…」
呟きながら幸雄はバックミラー越しに眠っている陽羽を見つめた。




