第47話
夏季休暇の中盤。
肩からプールバッグを下げた昼と、同じくプールバッグを手に持ち、スマホの画面を見つめている町田が、郊外の駅に立っていた。
絶好の海日和となった今日。町田の誘いで海に行く事になったのだ。行くにあたって、幸雄の所の使用人が車を出してくれるとの事で、二人はこの駅で待っていた。
額に浮かんだ汗を町田が腕で拭っていると、二人の前に一台の車が止まる。黒いミニバンのドアを開け、幸雄と凛子が降りてくる。
「おはよう。宮下、町田」
「はよーっす!」
「おはよ、長月。凛子ちゃん」
「よっす!!」
荷物を後ろに積み、昼と町田は三列目のシートに座る。二人がシートベルトしたのを確認してから、運転座席にいる舞夜は車を走らせた。
二列目に座っている陽羽が少しだけ振り返る。
「町田君、今日は誘ってくれてありがとう」
「いやいや〜俺は師走さんと仲良くなりたかったからさ〜」
「陽羽ちゃんの水着が拝める〜って?」
昼が茶化すように町田の腕を小突く。バレたか、と町田は笑った。
「てか今日おさげじゃん!可愛い〜」
「あ、ありがとう…」
陽羽の髪型はいつもと違い、耳の下で髪をまとめている。褒められて少し嬉しい気分になった。
「あ、そーだ師走さん!俺の事名前で呼んでよ。悠月ってさ」
町田、もとい悠月はそう言うが、陽羽はうーんと苦笑いを浮かべた。
「わ、私…男の子をお名前で呼ぶの苦手で…」
「何それ超可愛い。まぁ、長月の事も名字で呼んでるもんな〜」
「町田、抜け駆け失敗」
「うるせ」
「ご、ごめんね…?」
「気にしないでいいよ〜」
助手席に座っている幸雄は、静かにその会話を聞いていた。
駐車場に車を停め、荷物を下ろす。舞夜がシートを敷き、その上に貴重品や着替えを置く。幸雄と悠月がバーベキュー用のコンロや炭を運び、食器類や食材を陽羽、凛子、昼が運ぶ。
全員、服の下に水着を着てきているので、男子達はシートの上で。女子達は車の方で着替える事にする。
陽羽は辺りを見渡して服をそそくさと脱いだ。白いフリルのついた可愛らしい水着。以前、宵に勧められて買った水着だ。
「ひ、陽羽…ちゃん…っ」
「マジ…?」
陽羽同様に着替え終わった凛子と昼が、まじまじと陽羽の胸を凝視する。同性とはいえじっと見つめられ、恥ずかしくなって背を向けた。
「あ、あんまり…見ないで…恥ずかしい…」
「ご、ごめん…規格外の大きさにビックリして…」
こくこく、と昼も頷く。
「も、もう…」
顔を赤くしながら、凛子と昼に向き直る。
「そ、そういえば…東間先輩は?」
恥ずかしさを誤魔化そうと、凛子に話を振る。凛子は残念そうに苦笑いを浮かべた。
「もうすぐ受験だからね〜。息抜きにどうか?って聞いたんだけど…」
「残念だったね…あ、貝殻とか持って帰る?お土産に」
「!それいいね!じゃ、そろそろ行こうか」
舞夜はこの後仕事があるらしく、迎えに来る時間を凛子に伝え、駐車場を出ていった。
車が見えなくなってから陽羽達は幸雄達がいるシートの方へ向かった。




