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君に愛を乞う  作者: 京町ミヤ
第1部
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第46話

屋敷の奥にある会議室から離れた陽羽の部屋の前に立ち、軽くノックする。


「はーい」


扉を開けて顔だけを覗かせた陽羽は、幸雄の姿を見て顔を綻ばせた。


「あ、会議終わったんだね…お疲れ様」


「あぁ」


陽羽は陸と海がいる事に気付くと、扉を開けて一礼した。


「こんにちは」


「こんちは〜!」


「………」


海は陽羽をじっと見つめ、目を細めた。


(…ちょっと怖い…)


威圧に耐えきれず、海からそっと視線を逸らした。


「…長月、この娘と話がしたい」


「えっ…」


「…分かりました。いいか?」


「そ、それは…大丈夫だけど…」


本音を言えば拒否したかったが、幸雄の口振りからして陽羽が断れる立場にない事は明白だった。


「どうぞ…」


「すぐ終わる。そこで待ってろ」


海と向かい合って椅子に座る。腕を組んで海は口を開いた。


「俺は魔物殲滅隊総隊長、夜鳥海だ」


「な、長月君の添人の…師走陽羽といいます…。初めまして」


「初めまして」


自己紹介を済ませた瞬間の事だった。海は陽羽の顔を掴み、無理矢理自身の目と合わせさせた。


「っ!?」


「娘、お前に問う。お前に覚悟はあるか」


「か、くご…?」


「長月幸雄に命をかけられるか?」


「………」


海の琥珀色の目がギラりと光る。その目に恐怖を覚え肩を震わしたが、海の手首を掴み、まっすぐに海を見つめて答えた。


「命をかけられるかって聞かれたら…正直分かりません…でも、私は…。私を助けてくれた長月君を見捨てるような事はしません…!」


海は陽羽の顔を離し、すかさず腕を掴んで陽羽を立たせた。


「もう一つ問おう。お前は長月に何をしてやれる」


「え……」


目を泳がせ、何を答えればいいのか迷っていた時、部屋の扉が開かれ幸雄が入ってきた。


「な、長月君…!」


幸雄は陽羽を引き寄せ、海を睨む。すっ、と海の目から光が消え、軽く息をついた。


「俺は待っていろ、と言ったはずだが」


「…陽羽が困っています。…それ以上は…」


「………ほぅ…」


興味深そうに目を細めて口の端を上げた。海は幸雄に歩み寄り、頭に手を置く。


「……?」


「精々頑張るんだな」


それ以上は何も言わず、部屋を去っていった。扉から陸が顔だけを覗かせて手を振った。


「ひわっち、またね!」


それだけを言い残して、扉が閉められた。それを確認してから、陽羽ははぁ、と思いため息をついた。


(怖かった…)


「大丈夫か?」


「う、うん…」


幸雄は先程海に撫でられた自身の頭にそっと触れた。


当然、陽羽に海の行動の意図は分からない。それは幸雄も同様だったらしく、首を傾げていた。


「…ねぇ長月君…」


「何だ?」


「長月君は…私に何をして欲しい?」


海に問われた『何をしてやれる』という言葉。考えても答えは出ないと思ったので、直接聞いてみる。

幸雄は少し考えて、頬を緩めた。


「…笑っていてほしい」


「………」


幸雄の回答に心臓が一瞬強く脈打つ。


「…うん…分かった…!」


期待に応えられているかは分からない。それでも、精一杯の笑みを幸雄に向けたのだった。




街の外れにある陸が経営する石屋『LICC- STONE』。


店の奥にある小部屋で、陸と海、空は酒を酌み交わす。空になった海のグラスに、陸はワインを注いだ。


「ひわっちにもしたの?心読み」


陸の言う心読みとは、海の能力の一つ。

自身の魔力を触れた者に少量流し、相手の心を読むというものだ。


「あぁ。添人全員にするのは決まりだろう」


注がれたワインを一気に煽り、グラスをテーブルに置いた。


「で、結果はどうだった?」


「問題ない。だが、驚いたな…」


「…透明の魔力を持つ子…。これは運命かしらね…」


白い指先でグラスの縁をなぞり、陸は目を伏せた。


「そっちではない。長月の方だ」


「えぇ〜?ゆっきーがどうかしたの?」


「…酷く、あの娘に心を持っていかれてるな」


くくっ、と海は喉で笑う。


「マジでか〜若いっていいねぇ〜」


空は微笑みながら、ワインを流し込む。だが、と海は表情を少し曇らせる。


「何故かまでは…分かっていないようだな」


「ゆっきーはねぇ…」


「陽羽ちゃんの事は守りたいって言ってたよ。それが恋愛感情なのかは分かんないの?」


「俺に色恋の感情が分かると思うか?」


無理だね、と空は鼻で笑った。


「だがアレはそうだろう。空、神無月に知らせておけ」


「はいはーい。じゃあ、僕はそろそろお暇するよ。仕事も残ってるし」


「じゃあね〜ん」


「またな」


陸と海に手を振り、空は店を後にした。陸は足を組んでふぅ、と息をつく。


「感情って…難しいわよね…」


「長月の場合は特殊だからな。欲はあるのに喜怒哀楽が分からない。言葉による説明で理解出来ても、心では理解出来ない。難儀な事だな」


口では冷たく聞こえる海の言葉も、幸雄を案じての事だった。陸もそれは分かっていたため、何も言わなかった。


「…師走陽羽、と言ったか。あの娘なら…」


「…そだね…」


陸はテーブルに置かれている写真に目を向けた。


銀色の髪をした男性と、桃色の髪をした女性が笑みを浮かべて写っている。


女性の首には透明の石のネックレスが付けられていた。


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