第41話
翌日の昼前。
駅で虹乃と合流した陽羽は、魔物や魔石について話をしていた。
虹乃は古くから続く魔人の家の娘である事。
魔石の扱いは得意だが、魔力が少ない事。
一般人に聞かれないように、個室制のレストランで昼食を摂りながら話していた。(陽羽はオムライス、虹乃はナポリタンだった)
レストランを出た所で虹乃がスマホを片手に陽羽の方へ向き直った。
「よければこの後買い物とかどう?」
「ぜひ。どこに行く?」
うーん、と虹乃は人差し指を頬に当て、考える仕草をとる。しばらくして、虹乃は指を鳴らした。
「…そうだ。アクセ見に行かない?」
「!行きたい…!」
「そうと決まれば行きましょ!」
虹乃はスマホで近辺のアクセサリーショップまでのルートを検索し、陽羽を先導する。
「陽羽ちゃんのそれ。可愛いなぁって思ってたの」
陽羽の首元でキラキラと太陽の光に反射して輝く、ハートのネックレス。大切なものを褒められ、陽羽は嬉しそうに顔を綻ばせた。
「ありがとう…長月君から貰ったの」
「………」
しかし、その言葉を聞いた虹乃は不服そうだった。その場に立ち止まり、目を細めてじっとりとした視線を陽羽に送る。
無感情にも見えるその視線に、陽羽は違和感を覚えて虹乃を見つめ返した。
「…行こ」
陽羽から再び背を向けて歩き出す。醸し出される虹乃の纏う雰囲気に気圧されながらも、慌ててその背を追った。
虹乃の後ろを無言で歩き続ける事十五分。アクセサリーショップがあるとは到底思えない、街のビルとビルの間の小脇道に入った所で、虹乃は立ち止まった。
「…春原さん…?」
迷ってしまったのかと思い、不安げに声をかける。
虹乃はため息をついてスマホを鞄にしまった。
「…貴方が羨ましい。長月に気に入られてるんだね」
今まで浮かべていた可愛らしい笑みを消し去り、虹乃はおもむろに振り返った。その目に光はなく、先程感じた違和感と同じものを感じた。
「…気に入られてるとか…そんなんじゃないかと…」
添人だから。気にかけてくれているだけ。きっとそうだ、と自分自身に言い聞かせるように言った。
ギリッと虹乃の方から音が聞こえる。顔を歪めてまっすぐに陽羽を睨み付けていた。
「何それ…何その態度!私を馬鹿にしてるの!?」
陽羽に詰め寄り、虹乃は怒りを露わにした。肩を強く掴まれ、手入れされたネイルが陽羽の肩にぐっと食い込む。
痛みに思わず顔を歪めると、急に虹乃の力が緩んだ。
「やめなさい」
穏やかに、それでも力強く。虹乃の腕を掴んで、陽羽から無理矢理離れさせる。
毛先が白い茶髪。丸眼鏡を押し上げて、声の主…空は陽羽の前に立った。
思わぬ人物を前に陽羽は動揺を露わにする。
「し、四季さん…!?どうしてここに…」
「………。関わらないで、と言ったはずだけど」
空は陽羽の質問には答えず、虹乃に切れ長の目を向ける。
「忠告してあげようと思ったのよ…なのに…。…ふざけないでよ!!」
吐き捨てるように言った後、虹乃は陽羽と空から背を向けて走り去ってしまった。
「あ…!」
虹乃を追おうとして一歩踏み出そうとすると、空に肩を引かれる。
空を見上げると、無言で首を横に振る。追うな、という事だろう。
陽羽は仕方なくその場に立ち尽くし、深く息を吐いた。
「肩、大丈夫かい?」
「あ…はい。大丈夫です…」
痛みはもうなかった。爪の跡がくっきりと残っていたが、今はそんな事はどうでも良かった。
「…実はね、ずっと後をつけてたんだ。ごめんね」
空は申し訳なさそうに眉を下げた。
「いえ…!でもどうして…」
「長月に春原ちゃんと会う事は聞いていたんだ。…詳しく話そう」
街の通りまで歩く。近くのベンチに並んで腰を下ろし、陽羽は空を見上げた。




