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君に愛を乞う  作者: 京町ミヤ
第1部
37/204

第37話

熱い。身体が焼けるようだ。

頭がぼんやりとして視界がぐらぐらする。


『今回は随分とまた拒絶するじゃないか』


「………」


頭に直接声が響く。頭が痛い。


『そんなにあの女が大切…?』


「………」


聞きたくもない声が流れる。何も答えずに視線を彷徨わせる。構わず声は響く。


『…なら、ちょっといじめてみるか』


「………何をする気だ。大人しくしてろ…」


『やっと返事したね。大人しくしてるのはお前だよ』


水の中に溺れているような感覚と同時に、全身が焼かれているような熱を帯びる。


(まずい…!!)


熱で頭がぼーっとする。抵抗したものの、水に、熱に、溺れるのだった。




りんごを切っていると、急に幸雄が苦しみ出した。胸を抑えて苦しそうに呼吸をしている。


「!長月君どうしたの!?」


肩を揺らして呼びかけるが、呻吟するだけで陽羽の声は聞こえていないらしい。


「どうしよう…四季さん呼んでっ」


ベッドから離れようとした瞬間、腕を引かれ背中からベッドに倒れ込んでしまう。


「きゃっ…な、何…!?どうしたの…!?」


「……ふぅん」


いつもは黒い眼帯で隠されている右目が開かれる。左目は月明かりのような黄色だったが、右目は鮮やかな赤色だった。


(…綺麗…)


切れ長の目を細めて陽羽を見下ろす。いつもなら見せないような不敵な笑みに、少しだけ胸が高鳴る。


「な、長月、…君…?」


「何?」


幸雄は陽羽の頬にそっとキスをする。


「へっ…?」


「どうした?照れてるのか?」


そのまま陽羽の耳元でくすくすと笑う。


(いつもと様子が違う…どういう事…)


「あの…、ひゃっ…!?」


高熱時特有の熱っぽい舌を陽羽の耳に這わす。吐息も交わってか、くすぐったくて声が上ずってしまう。


「や、やめっ…長月君…!」


幸雄の胸を押すが陽羽の力ではびくともしない。


「へぇいい声で鳴くじゃん。その調子で僕を楽しませてくれよ…」


その言葉を聞いてハッとした。幸雄の一人称は俺だ。僕じゃない。

陽羽は思いっきり力を込めて幸雄を押しのけた。二人の間に少しだけ隙間が生まれ、その瞬間に距離をとった。


「おっと…」


「あ、貴方は誰…!」


幸雄はニヤリと笑って答える。


「僕はゼプテンバール。長月幸雄に埋め込まれた魔力の持ち主だ」


幸雄、もとい幸雄の姿をしたゼプテンバールは、先程まで陽羽が切っていたりんごに手を伸ばす。


「ゼプテンバール、さん…長月君は?」


「眠ってる。お前と話がしたかったんだ」


「私と…?」


ゼプテンバールはりんごを飲み込んでから陽羽に顔を近づけた。咄嗟に身構えるが、ゼプテンバールは特に何かをするでもなく、目を閉じて何かを考えているようだった。


「なるほどねぇ…これはまた懐かしい…」


「?」


「ふむふむ。たしかに納得はいくな…」


「…あの、長月君を返してくれませんか…?」


ぶつぶつと呟くゼプテンバールに、陽羽は思い切ってそう言った。

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