第36話
朝。いつも通り陽羽、凛子と学校に行くため玄関で集まっていた。
しかし、集合時間の十分を過ぎても幸雄が出てこなかった。
「遅いねー長月」
「…私、様子見てくるね…」
陽羽は鞄を置いて、幸雄の部屋へ駆け足で向かった。部屋の前の廊下に幸雄の姿を見つける。
「あ、長月君…!」
名前を呼ぶが、その目は虚ろで若干呼吸が荒い。
「陽、羽…」
ふらっ、と幸雄が陽羽にもたれ掛かるようにして倒れる。慌てて支えるも重さに耐えきれず、幸雄の下敷きになってしまう。幸雄も力が入らないらしく、起き上がろうとする様子は見せなかった。
「な、長月君…どうしたの…!?大丈夫?」
軽く肩を揺らした後、幸雄の首筋に触れる。
(どうしよう…凄く熱い…!)
熱があるらしく、立ち上がる気力もないらしい。
「だ、誰か!手伝ってください…! 」
押し潰されそうになりながら叫ぶ。声が届いたのか、部屋から空が出てきた。
「どうしたの陽羽ちゃん…って、長月!?廊下で何してんの!?」
「ね、熱があるみたいで…」
「あぁ〜…きちゃったか…説明するけど、とりあえず長月を部屋に運んじゃおう」
空は幸雄の身体を起こし、部屋まで運ぶ。幸雄をベッドに寝かせてから、陽羽達は空の部屋に移動した。
「葉月ちゃんには学校に行くように言っといた…陽羽ちゃん、悪いけど看病お願いできる?」
「勿論です…!」
「ありがとう。それで早速なんだけど…前に魔力と異人の説明はしたね。長月はちょっと特殊で、魔力が身体に馴染み切ってないんだ」
幸雄の身体に埋め込まれた魔力は、幸雄の身体には合わなかったそう。事前に行われた検査では問題なかったが、実際に行うと拒絶反応を示したという。
幸い死には至らなかったが、そのせいで喜怒哀楽の感情を失ってしまったらしい。
「今回の高熱もそう。魔力が離れようと反応を示すんだ。普段なら添人の魔力の譲渡で大丈夫なんだけど…。今回ばかりは治まるのを待つしかない」
「!そんな…私に出来る事はないんですか…?」
「…熱が下がると、魔力を欲しがると思う。その時は…お願い」
「…分かりました…」
陽羽は空の部屋を去り、幸雄の部屋へ向かった。ベッドに横たわっている幸雄の頬にそっと触れる。
「…長月君…」
「ん…陽羽…?」
うっすらと目を開け、幸雄は陽羽の手を力なく握った。
「起こしちゃった?ごめん…大丈夫?」
「いつもの、事だ……すまない、学校…」
「いいの。ゆっくり休んで?」
優しく髪を撫でる。気持ち良さそうに目を細めて軽く頷いた。
「…陽羽の手…冷たくて、気持ち良い…」
「そ、そう…?」
「あぁ…落ち着く…」
そう言うと幸雄は眠ってしまった。余程辛いのだろう。口から漏れる息は凄く熱い。
(今の内にお水と果物貰ってこよう…)
そっと部屋を出てダイニングへ向かった。




