第3話
「………ん…」
ぼやけた視界で辺りを見渡す。何度か瞬きを繰り返すと、だんだん意識と視界ががはっきりしてくる。
身体を起こすと、そこは知らない場所だった。
本棚、タンス、テレビ、机、ソファーと黒を基調とした家具。少女がいるベッドも彼女にとってはサイズが大きく、男性の部屋である事が見て取れた。
「ここは…」
ゆっくりベッドから下り、部屋の中を歩いてみる。
「あ…」
ベッドからは死角になって見えなかったソファーに、あの時の青年が横たわっていた。
黒い眼帯を付けたまま眠っており、外した方が楽かな、と手を伸ばしかけると、眠っていたはずの青年が少女の腕を掴んだ。
「わっ…!?」
「ん…目が覚めたのか」
少女だと分かると手を離し、ソファーに座った。青年に促されて少女も隣にそっと腰を下ろす。
「丸二日眠ってたんだぞ。そんなに寝てなかったのか?」
「えっ…言われてみれば…そんなに寝てなかったかもしれません…」
「おい…。…何故、あんな遅くに一人で?」
「…家を追い出されてしまって…」
「ご両親に?」
「いえ、叔母夫婦です。両親は先日交通事故で亡くなってしまって…。叔母夫婦は私の面倒を見てくれる、と私の家に越してきました。
でも…この際一人暮らしでもしたらどうだ…って言われて…気付いたら街を歩いてたって感じです」
あはは、と苦笑を漏らすが、青年は何の反応も示さなかった。ただただ無表情で少女に問う。
「…これからどうするんだ?」
「うーん…一度家に帰ります。叔母さん達も、その場のノリで言ったと思うし…」
「…そうか。送ろう」
「あ、ありがとう…ございます」