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君に愛を乞う  作者: 京町ミヤ
第1部
25/204

第25話

宵が竜の部屋に訪れていたのと同時刻。

陽羽は澪に呼ばれて、澪の部屋の前に訪れた。扉をノックし、中から澪の返事が来るのを待つ。


「中入っていいよ〜」


「し、失礼します…」


静かに扉を開けると、ソファーに澪と空が座っていた。


「あ、四季さんもいたんですね」


「神無月君と二人っきりじゃね〜」


「どういう意味かな〜それ」


苦笑いを浮かべつつ、内心ほっとして二人の向かい側の椅子に腰掛ける。


「お話とは何ですか…?」


「長月君の感情についてね」


ハッとして陽羽は背筋を伸ばす。神妙な面持ちで空は話し始める。


「前に言ったように、長月君はちょっと特殊でね…感情が無いんだ」


「………」


「けど、一概に無いとは言いきれないんだよ」


空の横から澪が言う。


「アイツ、ややこしい事に欲求はあるんだ。それに…元の性格ゆえか素直さもある」


澪曰く、幸雄には「食べたい」「寝たい」といった欲求はあるそう。しかし、それに伴う「嬉しい」「悲しい」といった感情を理解出来ないという。


「嬉しい」であるならば、自然と頬が緩んだりするものだ。しかし幸雄の場合、頬が緩むのは何故なのかが理解出来ないのだ。


「…難しいですね…」


陽羽はそう言うので精一杯だった。幸雄の気持ちを察してやれない事が、何よりも辛かった。


「でも、思った事すぐ口に出すし、教えてやれば理解もしてくれる」


「じゃあ、既に理解出来ている感情もあるんですか?」


「あぁ」


肯定されて、ほっと息をつく。


「今の所は…驚きと恐怖、嬉しいは確実かな」


「そうなんですね…」


「ちなみに、驚きは初めて魔物と対峙した日。恐怖は海で溺れた時ね」


(それ言っても大丈夫なの…?)


茶化すように言う澪に苦笑いを返していると、空が神妙な面持ちで陽羽を見つめる。


「そこでお願いがあるんだ」


「私に…ですか?」


「そう。添人として…長月君の友人として…彼に色んな感情を教えてあげて」


「…私に…出来るでしょうか…」


俯きがちに、呟くように言って目を伏せる。慌ててフォローするように空が立ち上がった。


「あ、えっと…勿論全部とは言わないよ?ただ…えっと…」


言い淀む空を後目に、澪が陽羽の顔を覗き込む。


「君が友達に接しているように…長月にも接してあげて?そして長月が感情について聞いてきたら…教えてあげて。変に気負わなくていいからさ」


「神無月さん…」


きゅっ、と拳を握りしめて、力強く頷いた。


「…はい…!」


ところで、と澪は陽羽に詰め寄った。


「長月とはどうな訳?なんか進展あった?」


「へっ!?」


「こらこら」


結局、最後は澪にからかわれてしまったが、陽羽は心の中で決意を固めたのだった。


それはきっと、陽羽に出来る恩返しの一つだと信じて。


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