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君に愛を乞う  作者: 京町ミヤ
第1部
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第23話

「それじゃあ行くぞ」


「うん」


学校を出て街を歩く。


変わらず人の並は多く、街を見渡しながらゆっくりと歩く。


陽羽にとって見回りはまだ二回目だが、異常なく終わろうとしていた。かに思えた。


「!陽羽、こっち」


急に異変を感じた幸雄が陽羽の手を引いて走り出した。


「!まさか…」


「気のせいだといいんだが…」


そう言いつつ、幸雄は顔を歪める。きっと近くにいるのだろう。陽羽は走りながら辺りを見渡した。


細い路地に入りしばらく走ると、開けた場所に出る。するとすっ、と紫色の髪をした男性が現れた。


肌は白く陶器のようで、やはり耳は尖っている。顔に巻かれている包帯が、初めに見た魔物の女性を連想させた。


「隻眼の長月…姉さんの仇だ!!」


魔物が手を幸雄に伸ばすと、掌から鎖が飛び出る。


「下がってろ!」


「気をつけて…!」


数歩後ろに下がり、ポケットからいくつかの魔石を取り出す。


「援護するね…!」


「あぁ!」


まだ複数の魔石を同時に、とはいかないが防御魔法なら重複して使えるようになった。幸雄の周りに投げた魔石が発動し、魔物の放った鎖が弾かれる。


「!」


魔物の男性は鎖を引き戻し、一度距離をとった。その隙に幸雄がズボンのポケットから魔石を取り出し、 刀に変形させる。


「くらえっ…!!」


懐に入った幸雄を捕縛せんと、鎖を幸雄の周りに放つ。陽羽は幸雄の周りに魔法を発動させ、鎖を防ぐ。


「邪魔だな…先にアンタから始末してやるよ!!」


男性の鎖が陽羽に向けられる。


「っ!」


陽羽がそれを防ぐ間に幸雄が男性目掛けて刀を振り下ろす。


「チッ!」


男性の付けていたマフラーが切られるが、ダメージはないようだった。続けざまに男性へ攻撃を入れるが、男性は鎖を巧妙に操り攻撃を防いでいた。


やがて、懇親の一撃が男性の腹部に突き刺さる。


「ぐっっ…!」


血を吐いた男性はよろけながら幸雄から距離をとる。男性は何を思ったのか幸雄の前から姿を消した。


「消えた…!?」


「………まだ気配が近くにある。追うぞ」


「うん!」


幸雄の後ろをついて、辺りを注意しながら走る。来た道を引き返し、路地の出口にその後ろ姿が見えた。


「あいつ…まさか一般人の魂を!」


「!」


魔物が力を得るためには他者の魂が必要不可欠。


男性は街にいる人間の魂を喰らい、傷を回復しようと図っているのだ。男性の手から出された鎖が、歩いていた少女に伸びる。


「!危ない!」


魔法を発動させようとするが、すこし遅かった。しかし、傷付いたのは少女ではなく男性の方だった。倒れた男性は姿をすぅ、と姿を消した。そこには薄い紫色の魔石が落ちている。


「駄目だよ、長月君。ちゃんとトドメを刺さないと」


クスクスと笑って美里は犬のぬいぐるみを握りしめた。隣を歩いていた侑と蓮も軽く会釈をする。


「見回り中か〜お疲れだね。面倒だからこのまま引き継ぎしよっか」


歩きながらもゲームをしていたらしい侑が、面倒臭そうに欠伸をして幸雄と引き継ぎを開始する。


その間に陽羽は魔石を拾い上げた美里に話しかける。


「助かりました、卯月先輩」


「いいのいいの。陽羽ちゃんも無事そうで良かったよん。あと…美里でいいよ」


「!は、はい…!」


「上手くいってるっスか?」


蓮の問いに陽羽は笑顔で頷いた。


「なんとかだけど…」


「謙遜する事ないっス」


「そーそー。もっと自信もって」


「…ありがとうございます…」


侑との引き継ぎを済ませた幸雄と共に帰路に着いた。(美里達はこれから見回り)


夕飯を済ませた後、ダイニングの隣の部屋に移動してテスト勉強をする。


今日の授業が集中出来なかったため、授業でやった内容の問題を解き直す。途中、横目で幸雄を見やる。真剣に目を細めて教科書を見つめていて、話しかけられる雰囲気ではなかった。


(……なんだか…可愛い)


心の中でなんとなくそう呟く。問題を解き進めては、幸雄の横顔を見て癒される、という事を繰り返していた。


集中出来たのかは分からないが、穏やかな時間を過ごせて安心している自分がいた。


(でも今日は昼ちゃんと友達になれたし…魔物と戦ったし…美里さんや侑さんともお話した)


「忙しい一日だったなぁ…」


「…ん」


声に出ていたらしい。幸雄は陽羽の方を見て頬を緩めた。


「楽しかったか?」


「…大変だったけど…うん」


「…そうか」


今日の出来事を思い返した後、陽羽は再び勉強に取り掛かるのだった。

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