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君に愛を乞う  作者: 京町ミヤ
第2部
202/204

最終話

扉が開かれ、幸雄が入ってきた。


「陽羽」


「あ、長月君」


スーツを着た幸雄を見るのは初めてで少し胸が締め付けられたような感覚に襲われた。


「変…だよな…」


「そんな事ないよ。すっごくかっこいい…」


言いながら少し照れてしまう。やはりまだ恥ずかしさは消えないのだ。

陽羽がそう言うと、幸雄は嬉しそうにはにかんだ。


「…良かった。さっき笑われた所だったから…。陽羽も凄く綺麗だ」


「!…ありがとう…」


(言って貰えた…)


嬉しくて顔が綻ぶ。陽羽の隣に腰掛けた幸雄は、手に持っていた手紙を陽羽に見せた。


「今日来れない奴等かららしい」


「わっ、手紙…!」


「読むか?」


「うーん…後のお楽しみという事でいいかな…?」


「分かった」


陽羽、と幸雄に呼ばれる。


もう何度名を呼ばれただろうか。それでも名を呼ばれる度に心臓が高鳴ってしまう。


「なに?」


「陽羽は…俺に沢山のものを与えてくれた。足りないものを…埋めてくれた」


そんな大層な事はしていない。そう言いかけたが、幸雄の次の言葉を待つ事にした。


忙しなく手を組んだりしていた幸雄は、やがて意を決したかのように、絞り出すようにして口を開いた。


「陽羽。俺は…結構欲しがりなのかもしれない」


「…どういう事?」


「陽羽に沢山のものを与えてもらったはずなのに…まだ足りないって…もっと陽羽が欲しいって思うんだ」


「!」


かっ、と顔が赤くなるのが分かる。

そっと絡まれた指先から、幸雄の熱が伝わる。


手袋越しでも分かるその体温が、やけに暖かく感じられた。




「陽羽が欲しい。俺は…誰からでもない。陽羽からの愛が欲しい」


はっきりと紡がれたその言葉が、陽羽の体温を上昇させていく。まっすぐに見つめられ、思わず視線を逸らしてしまった。


「…っ……」


「陽羽は?」


聞かれてしまっては答えない訳にはいかない。恥ずかしさを堪えて、震える唇を動かした。


「…わ、…私も…ゅ、幸雄君の…愛が欲しい……です」


「…同じだな」


ふっ、と細められる目がどこまでも優しくて、暖かくて。


幸雄に手を引かれ、ソファーから立ち上がる。


「行こう」



「…うん」









──貴方が私を望むなら、私はそれに応えよう。


───君が俺を望むなら、俺はそれに応えよう。









──けれど、私も貴方が欲しい。


───だが、俺も君が欲しい。









──だからこれからも…


───だからこれからも…









"貴方/君に愛を求めてもいいですか…"











「陽羽…愛してる」




「…私も…愛してるよ…!」









──貴方の事は私が守るから。


───君の事は俺が守るから。









"これからもずっと愛してる"








─第2部・完─

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