第2話
少女が遊具の影に身を潜めたと同時に、先程の女性がヒールの音を響かせやって来た。
「おやおや。逃げないのかしら?」
女性はどこからか大きな鎌を取り出し、空を斬った。
「まぁいいわ。貴方の魂を喰らえば、しばらくはここに留まる事が出来るでしょう…」
「お前、流れ者の魔物か」
「そうよ。魔界にも飽きちゃったわ…私を楽しませてくれるのかしら?」
「………」
「あぁでも…武器もない貴方に私が倒せるかしらね」
そう言うや否や女性は地を蹴って、青年目掛けて鎌を振り下ろした。
それを軽々と避けた青年は蹴りを、拳を、女性に繰り出す。数発当たったようだが、ダメージは受けていないように見えた。
(な、何…あの人…)
恐怖を紛らわそうとぎゅっとスカートを握りしめ、ふと違和感を感じた。
少女はスカートのポケットに入っていたそれを取り出した。少女の小さな手の平に収まる長方形の半透明の石。
少女が首を傾げていると、突如半透明の石が光り始めた。
「わっ…!?」
「!アレは…!」
「魔石持ち!?おのれ…先に小娘から始末してやるわ!」
光を見た瞬間、青年と女性の表情が変わった。標的が青年から少女に変わる。
(殺される…!?)
ぎゅっと目を固く瞑るが痛みはない。不思議に思って恐る恐る片目を開けると、目の前には青年の顔があった。
「それ、貸してくれないか?」
「え…?」
少女はそっと青年の手に石を乗せた。背後から女性が迫る。青年が何かを呟くと、いつの間にか握られていた刀で女性を斬りつける。
「がぁっ!!」
最後に鋭い目で青年を見つめた後、女性は黒い靄となって消え去った。コツン、と紫色の石が落ちた。
「(な、なんなの…一体…)」
青年に駆け寄ろうとしたが、ふらっ、と力が抜け、そのまま地面に付してしまった。
「!おい、大丈夫か!?」
青年が肩を揺らして問い掛けるが、返事はない。
「………」
青年は紫色の石を回収し、少女を背負って歩き始めた。