第19話
黒板に書かれた内容をノートに写していく。しかし、内容は全く頭に入ってこなかった。
それに何だか頭が痛い。少しくらくらする。
「………」
(駄目だ…集中しないと)
そう言い聞かせるものの、身体は気怠くなるばかりでやがて目の前がチカチカしてきた。
「………」
陽羽の様子がおかしい事に気付いた幸雄は、陽羽の机の脚を軽く蹴り、ノートの端に『具合が悪いのか?』と書いて陽羽に見せた。
「あ…」
『少し』と陽羽も同様にノートの端に書き込んだ。すると『無理はするな。保健室に行ってこい』と諭される。
(たしかに…迷惑かけるかもしれない)
陽羽は筆記用具だけ片付け、保健室へ向かった。道中結構ふらついたが、何とか保健室まで辿り着けた。
「失礼します…」
ノックして入ると、澪が顔を上げた。
(そっか…いるって言ってたっけ…)
「あ、陽羽ちゃん。どしたの?」
「ちょっと頭痛が…あと身体が怠くて」
体温計を陽羽に渡し、澪は陽羽の顔を覗き込んだ。
「顔色が悪いなぁ…寝不足?」
「あ…かもしれないです…」
計り終えた体温計を澪に返す。
「ん〜平熱か。一時間休んで様子見ようか。こっちおいで」
澪に連れられ、保健室の一番奥のベッドに案内される。
「ここ使って」
「ありがとうございます…」
靴を脱いでベッドに上がろうとした時だった。澪に後ろから抱きしめるかのようにして腕を回された。
「え…?」
「寝不足って…やっぱり考えてたの?長月の事」
「!」
振りほどこうとするが、身体が上手く動かない。
「暴れないで?安静にしてなくっちゃね」
耳元で囁くように言って、陽羽の制服の第一ボタンを外した。慌てて澪の手首を掴むが、力が入らない。
「やっ、何を…!?」
「長月にもこんな事された?まだ?教えてよ」
「何も…っ、何もしてませんって…!」
「えぇ〜?本当はエッチな事してたんじゃないの〜?」
つぅ、と指先で首筋をなぞられ、足の力が一気に抜ける。倒れる寸前で澪が身体を支えた。
「あ、…」
急いで身を離そうとするが、頭がぼんやりして動けなかった。おかしそうにぷっ、と吹き出して澪は陽羽を見た。
「何もしないよ。だから安心して」
陽羽をベッドに寝かせ、布団をかける。 陽羽は弱々しく澪を睨み、布団を握りしめた。
「本当だって。そんな可愛い顔で睨まないでよ。襲いたくなるでしょ」
「や、やめてください…!」
「ははっ、ほら。休んでなって」
カーテンを閉めて澪は去っていった。陽羽はゆっくりと目を閉じた。
(そうだよ…長月君の事考えてた…。あの時何を言おうとしてたのかな…)
回らない頭で考えるが、思考も働かなければ思い当たる節もない。はぁ、と重いため息をついて眠りに落ちた。
──彼の事をどう思っているのだろう。




