第13話
「師走さんって超美人だね!」
「彼氏いる!?」
「太聖高校ってお嬢様学校だよね?なんでこっちに転校してきたの!?」
「……………」
授業が終わるなり、クラスの女子達は陽羽の周りを取り囲んで質問を投げかける。隣の席にいた幸雄も巻き添えをくらい、立ち上がれずにいた。
「えっ、えっと…」
「おいお前等…困っているだろう…」
口篭る陽羽を見て、幸雄が牽制する。
「えぇ〜だって師走さんと仲良くなりたいんだもん!」
クラスメイトの女子がそう言ったのを聞いて、陽羽は嬉しくて顔を綻ばせた。
(なんとか…やっていけるかも…)
授業の間ごとに質問攻めにされる、という一日を過ごし、あっという間に下校時刻になった。
「陽羽ちゃーん!長月ー!帰ろー!」
終礼が終わり、帰ろうと鞄を持つと凛子が教室の前から手を振っていた。軽く手を振り返して凛子の元へ向かう。
「長月、緋月さんの所へ行こ。陽羽ちゃんも付き合ってくれる?」
「勿論、大丈夫」
「すまないな」
屋敷とは反対方向に進み、繁華街の中でも人が少ない通りを歩く。別段興味を引く店もなかったため、陽羽はただ幸雄と凛子の後ろを着いて行った。
通りの突き当たりにある『LICC-STONE』と看板がかけられた店の前で立ち止まった。
「ここよ!」
「リック…ストーン?石屋さん?」
石屋にしては少し違和感を感じる。窓が一つだけ、それも店の中が見えなくなっている。普通ならば商品や店の内装が見えるようになっているはずなのに、その店はまるで店の中を隠すように出来ていた。
「まぁ、入れば分かるよ。緋月さーん!」
カランカラン、とベルの音が鳴り店の奥から声が響く。
店は天井も壁も床も黒で統一されていて、壁にかけられている様々な色の明かりと、商品らしき石を照らし出すライトしか光はなかった。
飾られている石に目を向けながら、店の奥から人がやって来るのを待つ。
(不思議なお店…)
「はぁ〜い。あらぁりんりんにゆっきーじゃない!」
店の奥から出てきた女性は一言で言うと派手だった。ピンク色のロングヘアーを束ねており、所々メッシュが入れられている。明るい水色の瞳が映えるように、目尻にピンク色のアイシャドウ。真っ赤な口紅。
そしてネックレス、ブレスレットが目立つようにするためか、胸元があいたドレスのような薄着の服を着ていた。
ヒールの音を響かせて、女性は凛子に抱きついた。
「りんりーん!今日も可愛いわねぇ〜!」
「ありがとうございます〜!緋月さん今日もオシャレ〜!」
「ふふん、新作なの〜」
陽羽は幸雄の袖を軽く引き、女性を見つめた。
「あの方は…?」
「…緋月陸。俺達が使う魔石の管理や手入れをしてくれるんだ」
「魔石…?」
陸は陽羽に気付き、歩み寄る。
「あらぁ!可愛い子!初めまして〜」
「は、初めまして…師走陽羽です」
「師走陽羽……。ひわっちね」
(ひわっち…?)
「陽羽ちゃんはね、長月の添人なんだって!」
その言葉を聞いた瞬間、陸は口を開けて幸雄の方を見た。
「ゆっきー!アンタ、マジで!?」
「まぁ…」
「おめでと〜!にしても、こんな可愛い子捕まえるなんて〜」
「それより、出来てるんですか?」
凛子以上にテンションの高い陸には動じる様子も見せず、幸雄はさりげなく距離を取った。苦手意識はあるらしい。
「もっちろんよ〜!取ってくるわね〜」
鼻歌を歌いながら再び奥へと入っていく。陸の姿が見えなくなり、陽羽は店に飾られている石に視線を向けた。
「…色々な物があるのね…」
「入り口の辺りにあるやつは、一般の人に売るようの普通の石だって。こっちの棚が魔石だよ」
凛子に連れられ、魔石だという棚のところへ移動する。そこには以前、陽羽のスカートのポケットに入っていた半透明の石と似たような物がずらりと並んでいた。
「………綺麗…」
「でっしょ〜!」
呟いた言葉にすぐ後ろから返事が聞こえ、驚いて肩を揺らした。
「魔石は魔物の魂の結晶。色も様々だし形も色々よ。しかも、それに魔力を流し込んだら武器にもなるのよ。素敵な代物よね〜!」
「は、はぁ…」
陸の言う事は良く分からなかったが、興味深いのは事実だった。陸は赤色の魔石を幸雄に、黄緑の魔石を凛子にそれぞれ手渡した。
「修理しといたわ。滞りなく使えるはずよ」
「ありがとうございます!帰ったら試してみますね」
「助かりました。ありがとうございます」
「はぁ〜い」
ニコニコと笑顔で返事をする陸に、陽羽は一歩歩み寄った。




