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閑話:澄んだ水の様に (後)


入学式の時間が近づいてきたので、私はオルトと講堂へ来ました。少し早くついたため人はほとんどいませんでした。


「とりあえず座りましょうか」


「そうだね」


そうして待っているとだんだん生徒が入ってきて、それに比例するように視線が強くなってきたような気がします。


「気のせいでしょうか?すごく見られている気がします」


「それは……そうだろうね」


オルトは少し苦笑いしますが、理由は言いませんでした。なぜでしょうか?気になりますね。


「やはり六貴族だからでしょうか?」


それなら納得できます。

アルマトラス魔法学院へ行かずこの学校に来た変わり者と思われているのでしょうね。


「それだけじゃないとおもうけどな……」


「オルト、何か言いましたか?」


「いや、何も言ってないよ」


オルトと話していると入学式の開始時刻になったらしく、それからは静かにしていました。






「ようやく終わりました」


式典はかなり長かったです。初めの方は学校に入学してきた私たち新入生へ向けての歓迎の挨拶でしたが、途中から違う方向に行っていたような気がします。


「フィラ、君はこの後どうするんだい?」


入学式が終われば今日は解散であるということは先生に聞いています。


「後は特に用事もないので帰ろうと思います」


「これはこれは、水の六貴族のフィラ=アクタリム様ですね?」


オルトと話していると誰かの声が割り込んで来ました。声の方を向くと金髪の男の子が作ったような笑みを浮かべていました。


「おや、土の六貴族様もご一緒でしたか」


「貴方は?」


「お初にお目にかかります。私はバーバル家のダルクと申します」


バーバル家ですか。確か中流貴族の一つで魔法の才能を持つ人たちが多いことで有名なところだった気がします。


「それでバーパルさんは私たちにどんなご用ですか?」


「バーパルさんなんて呼び方ではなく、ダルクで構いませんよ。

用件に関しましてはたいした用ではございません。ただ同じクラスで、同じ貴族同士、良好な関係を築きたいと思い声をかけさせていただいたまでです」


笑みを浮かべ続けながらバーパルさんはそう言ってきました。

簡単に言えば六貴族に近づいて関係を結び甘い汁をすすりたいという事ですね。こういう事を考える方は基本的にしつこい方が多いのでどうしましょう。


「それにしてもフィラ様はとてもお美しいですね。噂でも聞いておりましたがーー」


バーバルさんの話を聞き流しながし、意味もなく講堂の出入り口へと向かう生徒の皆さんの方を見ます。

その中に、あるものが見えました。周りの生徒とは異なる、ツヤのある綺麗な黒い髪。あんなに綺麗な黒髪を持っているのは闇の六貴族くらいです。でもオルトはアルマトラス魔法学院へ行ったはずです。なら、あの生徒は?



……まさか…彼?



「それでどうですか?もしこれから予定がないのであれば、私とご一緒に食事でもとーーあの、フィラ様?どこへ!?」


バーバルさんが何か言っているようでしたが、そんなことは置いておきます。

急いで黒髪の生徒の元へ行きました。


「待ってください」


声をかけると黒髪の生徒はこちらを一瞥したあと、隣の生徒に話しかけました。勘違いをしているのでしょうか。


「違います。用があるのはあなたの方です」


そうはっきり述べると黒髪の生徒の隣にいた生徒が驚いています。


「お、おい!レイジ!お前この方と知り合いだったのか!?」


っ!やっぱりこの人はレイジなんですね!

やっぱり死んでなんかかなった!

私はレイジとの再会を挨拶をしようとしたその瞬間、レイジの言葉で動けなくなくなりました。


「知らねえよ。初対面だ」


初対面?そんなはずありません!

……もしかしたら忘れているのかもしれません。最後に会ってからもう数年が経っているのですから。

そんな事を考えているとレイジは私を連れて屋上へ向かいました。


「んで、水の六貴族様が俺に何の用だ?」


屋上についてすぐに聞かれました。

私は自信を持って言います。


「貴方はレイジですよね?」


「ああ、俺の名前はレイジだ」


「私が聞きたいのはそうじゃありません!」


何故はっきり言ってくれないんですか?貴方は何がしたいんですか?


「じゃあどういうことだよ」


「私が聞きたいのは貴方がレイジ=エルペンかということです!」


悲痛にも似た思いで私は彼に、レイジに尋ねました。きっと肯定してくれると思って。

しかし、帰ってきた言葉は全く違うものでした。


「誰だよそれ?」


「っ!違うんですか!?」


「俺はレイジ=クライスだ。あんたの言うレイジ=エルペンとかいう奴じゃねぇよ」


クライス?エルペンではない……。

それじゃあ本当に?


「……レイジじゃないんですか?」


「俺はレイジだ。ただ水の貴族様が言うレイジじゃねえ。知り合いならそいつがどこに居るのか周りの奴らに聞けばいいだろうが。大方あんたのいうレイジは貴族とか偉い家のやつだろ?」


聞くことができるなら最初から聞いてます!でも、それができないんです……。私の知っているレイジはもう数年前にいなくなっているんですから……。


「そうですか……。すみません、人違いだったようです」


私は泣きそうなのをこらえながら、走って屋上を後にしました。


レイジ=エルペン……。貴方は今どこにいるんですか……。


(前)の方も本日投稿しました。お気をつけください。

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