接触
入学式が終わり、今日はこれで解散らしい。疲れた。
「レイジ、お前って寮?」
「ああ」
「俺もなんだよ!一緒に帰ろうぜ!」
どうせ今日は特に予定もないし問題ないな。
「いいぜ」
そう言って俺とグランは講堂から出ようとした。
「待ってくれませんか?」
声がした方を向くとそこには女子生徒がいた。俺は女子生徒を見た後内心面倒だと思った。
「おいグラン。お前に用があるらしいぞ」
「あ、貴女は!水の六貴族様!」
声をかけてきたのは水の六貴族、フィラ=アクタリムだった。
「違います。用があるのはあなたの方です」
フィラは俺を見ながらそう言う。
こいつもしかして……俺がレイジだと分かってんのか?
「お、おい!レイジ!お前この方と知り合いだったのか!?」
「知らねえよ。初対面だ」
俺の言葉を聞いてフィラの顔が一瞬歪んだような気がした。気の所為か?
「とりあえずグラン、先に帰ってていいぞ。すぐ終わるかどうか分かんねえし」
「そ、そうか。じゃ俺は帰らしてもらうぜ!」
……明日学校で色々聞いてきそうだな。いや、ああ見えてあいつはいい奴っぽいから何も聞かないかもしれないな。
とりあえずそんなことはどうでもいいや。
グランが去った後、俺はフィラを連れて屋上に来ていた。
「んで、水の六貴族様が俺に何の用だ?」
改めてフィラに向き直る。
「貴方はレイジですよね?」
「ああ、俺の名前はレイジだ」
「私が聞きたいのはそうじゃありません!」
フィラが少し声を荒げる。まぁそうだろうな。
「じゃあどういうことだよ」
「私が聞きたいのはあなたがレイジ=エルペンかどうかです!」
……さて、どう答えるべきか。フィラには本当のことを教えてもいいのかもしれない。ただ、教えたことでエルペン家に目をつけられるのは正直言って面倒だ。
そう考えれば答えは決まってるか……。
「誰だよそれ?」
「っ!違うんですか!?」
「俺はレイジ=クライスだ。あんたの言うレイジ=エルペンとかいう奴じゃねぇよ」
「……レイジじゃないんですか?」
「俺はレイジだ。ただ水の貴族様が言うレイジじゃねえ。知り合いならそいつがどこに行ったか聞けばいいだろうが。大方あんたのいうレイジは貴族とか偉い家の奴だろ?」
そう言うとフィラは泣きそうな顔をしていた。
聞きたくてもその当人は家を追い出されてるしな。どう考えたって無理なんだけどな。
「そうですか……。すみません、人違いだったようです」
フィラはそう言って屋上から去っていった。
俺は誰もいなくなった屋上で大の字になって寝転んだ。
「悪りぃな、フィラ」
俺は目の前に広がる青空を見ながらそんな言葉を零した。