遠目からの再開
グランの嘆きがようやくひと段落して俺達は講堂に向かっている。入学式が行われるまで時間に余裕がありゆっくりと歩いている。
心なしかグレンは少し楽しそうだ。
「どうしたグレン?そんなに入学式が楽しみなのか?」
式という文字がつく出来事についてはいつだったかサーシャさんに聞いたことがあったな。
確か偉い奴が自分よりも高いところに立って、ふんぞりながら自慢話やどうでもいいことを長々と話すふざけたものだったか?
入学式出たくなくなってきたな……。
「違う!入学式なんてものはどうでもいい!俺は、俺は……!」
「俺は?」
「水の六貴族を見るために講堂へ行くんだ!」
堂々と言ってのけるグレンを目の前になんだがすごくいたたまれない気持ちになった。
今こいつの頭の中はピンク一色なんだろうな。
「やばい声に出して自覚してきたらもうこの思いが止まらない!ほらレイジ!とっとと行くぞ!」
グランはその場からいきなりトップスピードで駆けて行った。
「ああ……行くか」
聞こえてはないだろうが先ほどの言葉に答え、俺はグランの後に続くべく教室から来たのと同じようにゆっくりと歩き始めた。
講堂に着くと新入生たちがだいぶ揃っていた。ここまで来る途中結構な奴らが俺を抜かして行ったから当然って言えば当然だな。
とりあえずグラン探して一緒に待機するか。
「それであいつは……いたいた」
俺は少し駆け足で近づきグランへ話しかける。
「お目当てのものは見つかったのか?」
「……」
無視された、というより反応がない。
どうした?
「おい、グラン?」
「あ、あれが……いやあの方が……そうだ……」
そう言ってグランは指を指す。
その方向を見るとそこには一人の女子生徒がいた。
水の六貴族の証明である淡い水色の髪を肩までのばし、澄んだ碧い目をしている。胸は残念だが健康的でスレンダーな身体は男女問わず視線を引きつけるだろう。
「変わってないな、フィラ」
フィラ=アクタリム
それが彼女の名前である。俺がまだエルペンにいた頃、六貴族の関係で彼女とは遊ぶことが多かった。数少ない友人の一人だったけど、今はもう違うんだろうな。
「ん?なんか言ったかレイジ?」
いつの間にか元に戻っていたグランが俺のつぶやいた言葉に気付いたらしい。どうやら内容は聞こえなかったようだ。
「どうでもいいことだから気にすんな。それよりもうそろそろ入学式が始まる。とっとと席に着くぞ」
空いていた席に座り数分待っていると入学式が始まった。
ちなみに内容はサーシャさんが言っていたように自慢話気味で聞いているのがかなり辛かった……。