プロローグ
こんにちは( ´ ▽ ` )ノ
なんとなく「魔法いいな」と思いこの作品を書かせていただきました。
誤字脱字ちぐはぐなどなどあると思いますがよろしくお願いします。
「出ていけ。金輪際この家にたちいること、そしてエルペンの名を語ることは許さん。以上だ」
ある朝唐突に父に呼ばれ僕、レイジ=エルペンは急いで書斎へ行くと、家族全員が揃っていた。なんとなくではあるがこれからどうなるか分かってしまった。そして父からその言葉が発せられた。
父の一言が書斎に響く。声の大きさはそんなに無いのにはっきりと僕の耳に届いた。
「……なぜですか」
理由は分かっているが聞かずにはいられなかった。もしかしたら冗談かもしれないとわずかな希望を持ちながら尋ねる。しかし
「神魔と契約できない出来損ないなど我が家の恥さらしだ。とっとと出ていけ」
やっぱりそれが理由なのか。
僕は幼少期、才能があると周りからもてはやされていた。魔力の量自体は平均よりも高いというだけでどうということはなかった。
周りが注目していたのは僕の魔力の質だ。
通常、魔力はほとんど視認できず、まれに光る程度のものである。しかし僕が初めて魔力を放出した時、その魔力は仄かに輝いて、澄んでいた。つまり人々が視認できるほどに魔力の質は高かったのだ。
そのため「この子は偉大な魔法使いになる!」と親から過剰な期待を寄せられてきた。僕自身も努力することで褒められるのが嬉しかったし、常に高みを目指してきた。
しかし、そんな日常はある出来事で壊れてしまった。
僕は神魔と契約ができなかったのだ。
神魔とは神や悪魔、精霊といった特殊な力を持つ者たちの総称だ。
この世界で神魔と契約ができないということはどんな人であれ、「大いなるもの達に見捨てられた者」というレッテルを貼られ『異端者』とよばれる。
ただでさえ『異端者』は不遜な扱いを受けているのに、六貴族と呼ばれる魔法の名家であるエルペン家に『異端者』が存在するとなれば周囲からの信頼もガタ落ちだろう。
ましてやそれが今まで将来有望とまで言われていた少年であればなおのことだ。
だから僕以外の家族は話し合ったのだろう。
異端者は追い出すべきだと。
僕は父から目を逸らす。すると他の人たちの顔が映る。
母は、嫌悪の眼差しで僕を見つめる。
姉は、苦痛のような表情で僕を見つめる。
弟は、下卑た笑みを浮かべながら僕を見つめる。
あぁ、そうか。結局期待されていたのは僕自身ではなく、僕の能力だけだったのか。
僕という人間はどうでも良かったのか。
「……分かりました」
そういって父の書斎を出て、荷物もまとめず僕はエルペンの屋敷を後にした。
どこにも行くあてなんてなかったが、今心の中にあったのは『エルペンの領土に居たくない』だった。だからこそ僕は走り続けた。
空が赤みがかって、これからようやく夜が訪れるであろう頃に僕はエルペンの領土を出ることが出来き、とある森の中にいた。
エルペンの領土を出た今、どこに行くべきかと悩んだが、気づいてしまった。
「……そっか。あそこに居たくないからここまできたけど……どこにも行くところなんてないじゃないか!」
そして気づいてしまえばもう立ち直れない。その場にうずくまり、心の中に生まれてきた感情をぶちまける。
「なんで!なんでなんだよ!どうして神魔と契約できなかったんだ!神魔と契約できてさえいれば僕は追い出されることもなかったんだ!」
涙が頬をつたい落ちる。もう僕は感情を整理できなかった。今できるのは洗いざらい感情をぶちまけるだけ。
「父さんも母さんも、みんな、なんで追い出すんだよ!僕が異端者だから!?じゃあ、今までの期待はなんだったんだよ!」
その後も嘆き続けた。何も止められなかった。涙も言葉も感情も。
どのくらいがたったのだろうか。
涙も声も枯れ果て疲れた僕はただうずくまり、じっとしていた。
「ふむ。おかしなものを辿ってきたのだが、ずいぶんと面白いものが転がってるな」
突然頭上から声がきこえた。顔を上げてみるとそこには長い黒髪の女性が立っていた。
「少年よ、君は何者だ?」
いきなりの質問に少し戸惑ったが、答えないのも悪いと思い、自虐を込めて答えた。
「……レイジです。性は……ありません。
そして、『異端者』です」
その答えを聞くと女性は何を思ったのか、口元に笑みを浮かべながら、
「そうか、少年は『異端者』か。私と同じだな」
この人も異端者なのか。
僕と……同じ?
「ここであったのも何かの縁だ。少年は行くところもないんだろ?私のもとにこないか?」
……何故行くところがないなんてしっているんだろう?分からないけどこの申し出はありがたい。でも僕に何ができるんだろうか?
この先、生きていたとしても『神魔』がない。ただ惨めに這いつくばるだけではないのか。
そんな僕の考えを読み取ったのか、その女性はこう付け足した。
「もし少年が強くなりたいと思うのなら、力を手に入れる方法を教えてあげよう。それがーー 」
最後の方は聞こえなかった。けれどもその女性は言った。
異端者である僕が力を手に入れられると、
その方法があると。
「……本当に強くなれますか?」
知りたかった。そんな方法があるのか。あったとしてもなぜこの人が知っているか。
「私が教えられるのは力を手に入れる方法だけだ。強くなれるかどうかは少年次第だ」
そう言われて考える。
頑張ってもダメなのかもしれない。自分は弱いままなのかもしれないと。
でも、それでも、抗いたかった。自分を信じたかった。
だから、
「お願いします、僕を連れて行ってください」
僕の答えを聞くと女性は満足そうに微笑み、手をさしのばす。
「そういえば、私のことを話すを忘れていたな。私はサーシャ=クライス。
これからよろしくな、レイジ(・・・)=クライス(・・・・)」
その日、僕は新しい名前と家族を手に入れた。